金曜日。会計士先生との同伴。ホットトピックの朝のアフターとコンカフェについて語る
先生もまた空いている日があったら言ってください、という話を博子はするのだけれども、
会計士先生は苦笑いをしながら、なかなか難しいんですよね、と返す。
土日は多少お休みやけども、基本はどっか行ってるから、なかなかですね、と。
博子も、そこはまあそうやろなと思う。会計士先生も言うたら仕事人間やし、
休みの日にふらっと時間を作るというのは、できそうでなかなかできない。
博子は、そこで少しだけ提案するように言う。
「朝のアフターは空けれそうな日はどこかあるから。」
「なるほど。」
「そん時は、お願いします。」
会計士先生は、それを聞いて少し嬉しそうに笑う。
「また聞いてください。」
「はい。」
「朝ごはんとコーヒー、みたいなんでも全然いいです。」
「そうそうそう。」
ヒロコも頷く。
「二千円、三千円ぐらいのご飯で朝を食べて、お茶をして、昼に帰るっていうような形で
やらせてもらってます。」
「それ、めっちゃいいですね。」
「でしょ。」
「なんか、夜の同伴より、逆に贅沢な感じします。」
「そうなんですよ。」
そこまで話して、博子はふと思い出したように、今日のホットトピックの一つをまた引っ張ってくる。
「ていうか、コンカフェもまたおじいちゃんと一緒に行って。」
「はいはい。」
「前ご一緒したコンカフェをね、また使って。」
「うん。」
「そしたら、あれですよ。」
博子は、ちょっと笑いをこらえながら言う。
「ああいうおじいちゃん世代で、鍋してた人いますよ。」
会計士先生は、一瞬何を言われたのかわからん、という顔になる。
「マジっすか。」
「マジです。」
「どんだけ自由なんですか、あの店は。」
その反応が、博子的にはかなりおもしろい。
おじいちゃんとの時も衝撃やったけど、会計士先生に言ってもやっぱり刺さる。
あの鍋焼きうどんおじいちゃんは、それぐらい破壊力がある。
「だから、あれがやっぱりキャバクラにとっての脅威ですよ。」
博子がそう言うと、会計士先生は苦笑いする。
「脅威。」
「脅威というか。」
ヒロコは少し真面目な顔になって続ける。
「私はたまたまお客様ついてるけども。」
「うん。」
「お客さんもついてないキャバ嬢とか考えたら、そら、同伴込み込みで2万円ぐらいで
やってるところが。」
「うん。」
「ワンセットノンアルコールで千三百円でセットつけたら四千円ですけども。」
「はい。」
「四千円でそんな無茶苦茶ができるってなったら、すごいなと。」
会計士先生も、そこはかなり納得したように頷く。
「それはそうですね。」
「もちろん、アフター同伴もなかったり、連絡先交換なかったりとかですけども。」
「うん。」
「安く楽しくしようっていう気が自分であれば、それはできちゃうっていうところが、すごいなと。」
会計士先生は、少し考えるような顔をする。
単純に安い高いの話ではない。
値段感と、自由度と、主体性。
その辺がコンカフェの方に寄ってる部分は、やっぱりあるんやろうなというのが伝わってくる。
「でも。」
会計士先生がそこで返す。
「そこまで積極的に遊べる人がどんだけいるかって話ですよね。」
「それはそうですね。」
「結構、受け身の人とか、金払ったから何かやってくれ、みたいな人も多いから。」
「うん。」
「そこまで主体的に遊べるおじいちゃんっていうのは、なかなかいないのかもしれないですけどね。」
博子は、その言い方に頷く。
たしかに、あのおじいちゃんの“なんやそれ、面白そうやん”って入っていける感じは、
かなり特殊かもしれへん。普通はもっと構えたり、恥ずかしがったり、あるいは
“金払ったんやから何してくれるんや”みたいな姿勢になる人もおる。
だから、コンカフェの自由さが最大限生きるのは、ちゃんと遊べる人に限る。
その意味で、おじいちゃんはかなり適性が高かったのかもしれない。
「そうなんですよね。」
博子が言う。
「だから、全員が全員あれを楽しめるとは思わへんし。」
「うん。」
「でも、こっちがちゃんと店を選んで、流れを作って、楽しみ方をちょっと差し込めたら。」
「だいぶ変わるんでしょうね。」
「変わると思います。」
会計士先生は、そこを面白そうに聞いている。
この人は、自分ではそこまで積極的に飛び込まへんタイプやけど、博子が設計した
話を聞くのは好きなんやろう。だから、コンカフェの話も、単に若い子の遊び場の話ではなくて、
“どういう遊び方を設計してるか”というふうに聞いている感じがあった。
「やっぱり。」
先生がふと笑う。
「博子さん、ほんまに遊び方を作る人ですね。」
「いや、作らんと飽きるんですよ。」
「自分が、ですか。」
「自分もやし、お客さんもやし。」
「なるほど。」
そうやって、コンカフェの話、朝アフターの話、安く楽しくする人の
主体性の話をだらだら喋っているうちに、同伴の時間はもうかなりいい感じに過ぎていく。
店としても落ち着いてるし、天ぷらも美味いし、話も広がる。
会計士先生は、やっぱりこういう“分析っぽい雑談”にかなり相性がええ。
「じゃあ、そろそろ戻りますか。」
博子がそう言うと、会計士先生も素直に頷く。
「ですね。」
「まだまだ話せますけど。」
「それは店の中でもどうせ喋るやつですから。」
「まあそうですね。」
二人で少し笑って、席を立つ。
支払いを済ませて、外に出ると、夜の空気がもうだいぶできている。
さっきまで朝アフターとコンカフェの話をしてたのに、ここからまた店の中に戻る。
そのねじれた感じが、博子っぽいなと思う。
そうして、同伴が終わり、二人は店の中に入るのだった。




