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火曜日。新福島で弁護士先生と贅沢朝ごはんアフター。新鮮でいいですね。食後のコーヒーで大阪のホテルグランヴィアへ

月曜日は早めに帰宅して火曜日。

朝起きて、さっとシャワーを浴びて整えて、新福島の方に向かう。

さすがに朝一の約束となると、夜の同伴とはまた違う緊張感がある。

店の空気どうやろうとか、先生ちゃんと起きてくるかなとか、私も多少は顔を

作らなあかんなとか、そういう細かいことを思いながら、博子は朝の街を移動していく。

夜中のうちにリサーチした店は、新福島からほんまに歩いて五分前後のところで、かなり

動線が良かった。店の前まで来てみると、平日ということもあって、なんとか予約せずに入れた。

朝九時。この時間帯がちょうど良かったのかな、と博子は思う。

通勤前の慌ただしい時間はもう少し過ぎていて、でもお昼の流れにはまだ早い。

だから、全然お客さんがいないというわけではないけれども、べらぼうに混んでるという感じでもない。

その“ちょうどええ朝の隙間”に滑り込めた感じが、なんとも気持ちよかった。

弁護士先生も、店に入れたところでまずほっとしたように言う。

「博子さん、良かったですね。」

「ほんまラッキーでしたわ。」

博子も素直にそう返す。

「もう私も、混み具合までは知らないんですけど。食べログでも結構な点数やし、

朝も混んでるかもなと思ったんですよ。」

「うん。」

「でも全然、お客さんいないというわけじゃないですけど、むちゃくちゃ混んでる

わけでもなかったから。」

「こういう時にゆっくりご飯食べれるっていいですよね。」

先生がそう言うと、博子もそれにはかなり頷く。

夜に酒を飲みながら喋るのと、朝にご飯を食べながら喋るのでは、同じ相手でも空気が全然違う。

声のトーンも違うし、街の見え方も違う。

それが新鮮やった。

で、いざ一品のみのメニューの料理が来ると、二人とも少し目が丸くなる。

想像していた以上に、朝からちゃんとしている。

小鉢がきれいに並んで、魚がついて、ご飯と味噌汁がついて。

一つ一つはそんなに重たそうじゃない。

でも、こうやってちょこちょこちょこっと揃うと、かなり“整った朝ごはん”になる。

「朝からボリューミーやし、食べ応えありますね。」

弁護士先生がそう言うと、博子も笑う。

「でしょ。」

「一つ一つは、全然重たそうじゃないのに。」

「そうなんですよ。」

「こうやって小鉢でちょこちょこ来て、しかも魚とご飯と味噌汁があったら、

贅沢な朝ごはんですよね。」

「そうそうそうそう。」

二人とも、わりとちゃんと箸が進む。

朝はあんまり入らへんかなと思っていても、こういうのは別や。

ご飯も味噌汁もやさしいし、魚がちゃんとしてると、なんか“朝を食べてる”感じがする。

夜のごちそうとは違う満足感があった。

「なんか、こうやって朝ごはん一緒に食べるって新鮮です。」

弁護士先生が、少し照れたように言う。

博子は、その言い方にちょっと笑う。

「そうですか。」

「エロいとかではないですけども。」

「けども、の時点で怪しいんですよ。」

「いや、なんかこう。」

先生は、少し言葉を探しながら続ける。

「夫婦になった感がちょっとあって、いいです。」

博子は、思わず吹き出す。

「先生、ちょっとエロいです。」

「いやいや、違うんですって。」

「違わないです。」

「違わないですけど、違うんです。」

そんなよくわからん言い訳をしながら、二人で笑う。

でも、その感じもまた朝ならではやった。

夜の店の中で言われたら、ちょっと違う。

朝のご飯屋さんで、小鉢つつきながら言うから、妙に生活感があって、ちょっとおかしい。

その“ちょっと夫婦感”みたいなものを、博子もまんざら嫌ではなかった。

一時間ぐらい、そうやって和気あいあいとご飯を食べる。

別に大きな話をするわけでもない。

金曜日の座組の余韻とか、今週の流れとか、仕事行けそうですかとか、

そんな雑談をしながら、静かに朝を過ごす。

でも、それがかなり良かった。

夜に会う時とは違って、変にテンションを上げなくていい。

その代わり、ちゃんと時間を使ってる感じがある。

博子は、これたしかにええなと思う。

また使えるかもしれへんな、という手応えがあった。

で、せっかくやしコーヒーするんやったら、という話になる。

「ホテルグランヴィアか、ヒルトンあたりでお茶でもします?」

博子がそう言うと、弁護士先生はかなり素直に乗ってくる。

「いいですね。」

「せっかくやし。」

「朝ごはんだけで解散するの、ちょっともったいないですしね。」

「ですよね。」

「じゃあ、ホテルグランヴィア行きましょうか。」

そんな流れで、二人は店を出て、福島からタクシーに乗る。

朝のタクシーというのもまた、夜とは違う。

酔ってるわけでもないし、疲れてるわけでもない。

ちゃんとご飯を食べて、その延長でホテルのラウンジに向かう。

それはなんか、妙にちゃんとしていて、妙に贅沢やった。

タクシーの中でも、先生はまだ少し嬉しそうである。

「朝ごはんアフター、いいですね。」

「でしょ。」

「これはちょっと、癖になりますね。」

「それ言うたら、また次も組みますよ。」

「組んでください。」

そんなふうに笑いながら、ホテルグランヴィアへ向かうのだった。

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