表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

677/758

弁護士先生と店内で会話。朝ごはんアフターの候補ってどんなんがあるんですか?

一通り盛り上がって店内に戻ったけれども、朝ごはんの話がまだ続いている。

弁護士先生は、さっき一回「行きたいです」と言ったことで、逆に興味がちゃんと

出てきたみたいで、店の中に戻ってグラスをもう一杯頼んでも、まだその話を引っ張ってくる。

「そもそも朝ごはんで、そんな高級な朝ごはんって、最近ニーズあるんですか?」

その問いかけに、博子は少し考えるような顔をする。

これは正直、めちゃくちゃある、とも言い切れへん。

でも、全然ないかというと、そうでもない。

だから、ちょっと現実的なトーンで返す。

「ちょっと難しいですね。」

「ですよね。」

「ただ、京都はやっぱり外国人観光客が多いし、ホテルで朝食抜きのところもあるんで。」

「うん。」

「1000円ぐらいで食べれる店とか、ちょこちょこは見ます。」

弁護士先生は、それを聞いて少し身を乗り出す。

「へえ。」

「まあ、コンビニあるから、コンビニで済ませる人もいるんでしょうけども。」

「うん。」

「私が知ってるのは、おばんざい四つとご飯がついて850円の店とか。」

「え、そんな店あります?」

「あります。」

博子は、そこをちょっと得意げに言う。

「野村っていうんですけど、京都の烏丸にありますと。」

「へええ。」

弁護士先生は、その具体性がもうおもしろい。

単に“朝ごはん屋ありますよ”じゃなくて、値段と内容と場所までぽんと出てくる。

その時点で、ちょっと旅行話みたいな楽しさがある。

「あと、モーニングがやっぱり結構充実してる感じしますね。」

「京都の方が?」

「そう。大阪に比べて。」

「なるほど。」

「1000円ぐらいで、前田コーヒーとか、イノダコーヒとか、その辺結構ありますし。」

「はいはい。」

「路地うさぎっていうところもあったりとか。」

「もう名前がええですね。」

「で、1000円前後で。」

博子は少し笑う。

「今ちょっと上がってると思うんですけども、そういうのがありますと。」

弁護士先生は、そこでしみじみ頷く。

「なんか、朝ごはんってだけで、ちょっと街の見え方変わりますね。」

「変わるんですよ。」「夜と違って、言い訳きかん感じするし。」

「どういう意味ですか。」

「いや、ちゃんと起きて、ちゃんと行かなあかんから。」

二人で少し笑う。

でも、朝ごはんにはたしかに独特の贅沢がある。

夜の贅沢はわかりやすい。高い酒、高い飯、長い時間。

でも朝の贅沢は、ちょっと違う。早い時間に起きて、静かな街で、ちゃんと整えられたものを食べる。

それが弁護士先生にも少しずつ伝わっていってる感じがあった。

「で、私個人的におすすめなのは、北山のブリアンです。」

「ブリアン。」

「はい。」

「植物園前で、秋口と春やったら、紅葉とか桜とかも見れるし。」

「うん。」

「植物園400円で入れて、ゆっくりできるんで。」

「めっちゃええやん。」

弁護士先生は、そこにかなり食いつく。

「で、先生とお茶しながら、食後散歩するのもありかな、とか思いながら。」

「え、めっちゃそれもいいじゃないですか。」

反応がわかりやすい。

博子もちょっと笑ってしまう。

「今まで隠してたんですか?」

「いや、一回ね、行ったことはあるんですよ。」

「誰とですか。」

「東京の人とね。」

「うわ。」

「めちゃめちゃ感動して帰られましたけども。」

弁護士先生は、少し笑いながら、でもちょっと悔しそうに言う。

「でしょうね。」

「でしょ。」

「それ、刺さるに決まってる。」

博子は、その言い方にちょっとだけ嬉しくなる。

朝ごはんって、別に派手じゃない。

でも、植物園とか、静かな散歩とかを足すと、急に“ちゃんとした体験”になる。

そこが自分の中でも面白いところやった。

「で、あとは。」

ヒロコが、また球を足す。

「中華で20品目ぐらい出してきて、お粥食べるみたいな。」

弁護士先生がすぐに笑う。

「朝から20品目。」

「そう。」

「そんなコースが、京都駅から15分ぐらいのところにあって。」

「え、それもなんか。」

弁護士先生は、少し考えながら言う。

「それはそれで面白そうというか、医食同源って感じっすね。」

「そうなんですよ。」

博子も、その表現がしっくりきて頷く。

「夜に食べる中華とは全然違って。」

「うん。」

「“整えるために食べる”みたいな感じがあるんで。」

「いいですね。」

「で、お粥やから、重たくないし。」

「朝の贅沢って、そういう方向なんやな。」

弁護士先生は、だいぶその世界に引き込まれていた。

夜の同伴やアフターとは違う。

朝ごはんって、値段だけ見たら高いかもしれん。

でも、空気も、時間も、街も込みで考えたら、かなりおもしろい。

その感覚を、先生も今ちょっとずつ掴んでる感じがあった。

「なんか。」

弁護士先生が、少ししみじみ言う。

「朝ごはんアフターって、いいですね。」

「いいでしょ。」

「夜の延長じゃなくて、別の贅沢って感じがする。」

「そうそうそうそう。」

「しかも、変に酒で誤魔化せない分、ちゃんと選ばんとあかんっていうのも、なんか博子さんっぽい。」

「なんですか、それ。」

「いや、結局博子さんって、気づきとか文脈とか、そういうの好きじゃないですか。」

「好きですね。」

「朝ごはんって、たぶんそれに合うんやと思います。」

その言葉に、博子は少しだけ黙る。

たしかに、そうかもしれへんなと思う。

夜の豪華さではなくて、朝の整い方。派手ではないけど、印象に残る。

そういうものを最近、自分は探してるのかもしれない。

「しみじみとした良さがあるんですよね。」

博子がそう言うと、弁護士先生も静かに頷く。

「うん。」

「朝ごはんアフターの良さって、なんかありますね。」

「ありますよね。」

「今度はぜひ、そっちでお願いします。」

「了解です。」

そんなふうに、朝ごはんの話はまだまだ続く。

店の中に戻ってからの方が、むしろ盛り上がってるぐらいやった。

夜に天ぷらをつまみながら、次は朝ごはんの贅沢を語ってる。

このねじれた感じも、博子と弁護士先生らしい。

しみじみと、朝ごはんアフターの良さについて感じ入る先生を見ながら、

博子も、これはちゃんと形にしたいなと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ