土曜日の終わりアルカちゃんと税理士先生の麻雀同伴プランのすり合わせ。さきちゃんも乗り気www構想を練りこむ
フリーの宅をぐるぐる回って、なんだかんだ閉店時間になって。
ようやく一息つけるというところで、博子たちはまた女の子同士で固まって、
だらだら喋りながら帰り支度をする。
今日も長かった。
会計士先生との同伴があって、その後フリーを回して、次の座組の話までして。
でも、こういう閉店間際のだらっとした時間が、一番本音が出る。
で、博子がふと思い出したようにアルカちゃんに言う。
「ていうか、アルカちゃんも麻雀できるんやな。」
アルカちゃんは、メイクを落とす準備をしながら、ちょっと笑う。
「うん、まあ、なんとか打つぐらいはできるよ。」
その返事を聞いて、博子はすぐに反応する。
「じゃあ、税理士先生とちょっと話して、麻雀の会を作るというか、
同伴代わりに麻雀するっていう建てつけで、一回やってみるのもありかもね。」
「おお。」
アルカちゃんも、そのアイデアには素直に食いつく。
「ああ、それいいな。」
するとさきちゃんが、ちょっと乗り遅れたくないみたいな顔で口を挟む。
「いやいやいや、私もなんか……。」
「うん。」
「できひんけど、頑張って覚えたら、なんかそんなん入れてもらえへんかな。」
その言い方に、博子とアルカちゃんが笑う。
「いや、できるっちゃできるし。」
「最初はみんなそんなもんやって。」
博子は、そこから少し話を膨らませる。
「言うたら、リーグ戦みたいな形にしたらいいやん。」
「リーグ戦?」
「そう。ただ、もっといいのは、カレンちゃんも麻雀ができて、社労士の先生、
まだ会ったことないけど、もしできて、リーグ戦にしたら卓二つ借りたらいいかなと。」
「おおー。」
アルカちゃんがちょっと目を輝かせる。
「そしたら全員で麻雀同伴みたいな形でできて、リーグ戦にもできるから、
いいやんっていうのはある。」
さきちゃんも、それを聞きながらだんだんその気になってくる。
「なんか、イベントっぽくてええな。」
「そうやろ。」
でも、博子はそこですぐにブレーキもかける。
「それは追い追いの話かな。」
「まあ、そうやな。」
「とりあえずやってみて、その麻雀同伴が成立するかとか、その後の空気感とか。」
「うん。」
「あと、麻雀同伴とその座組を全部回したら、むちゃくちゃ忙しくなるから、それはそれで問題よね。」
その言い方に、二人とも「あー」と納得する。
たしかに、面白い。でも、面白いことと回ることは別や。
そこをちゃんと分けて考えてるのが、やっぱり博子らしい。
「私も会計士の先生が、金曜日の枠欲しいって言ってるから。」
「うん。」
「全部税理士の先生に入れるわけにはいかんしな。」
「そうやんな。」
「しかも、あと東京の座組もあるやん。」
「それよ。」
さきちゃんがそこで強く頷く。
「だから、なんかその辺は調整ねって話になる。」
アルカちゃんが、少し笑いながら言う。
「そうやね。」
「まあ、麻雀は追い追いね。」
サキちゃんも、その辺はだいぶ前向きになっている。
「そしたら、まあ、その辺の調整しながらやから。」
博子が少し考えながら言葉を続ける。
「そういう意味では、イベントの座組を、もうちょっと後ろに倒すってこともできるかな?」
「どういうこと?」
「麻雀会みたいな形にしてさ、サンドウィッチにしたら、ネタ不足も、
ちょっとは後ろに倒せるんちゃうかな。」
「まず成立するかどうかっていうのを見ながらやんね。」
「たしかに。」
「いきなり全部麻雀に寄せるのも怖いしな。」
「そうそう。」
で、少し間を置いてから、博子がまた現実的な話に戻す。
「ま、でもとりあえずビアガーデンは、八月末に行かんとビアガーデンなくなっちゃうから。」
「それはそう。」
「そこは行っときたいよな。」
「うん。」
「しかも社労士の先生とも顔合わせもあるから。」
アルカちゃんが、そこで少し呆れたように笑う。
「博子ちゃん、めちゃくちゃ考えてるやん。」
博子は、すぐに首を振る。
「考えてるというか。」
「うん。」
「向こうが言ってきたことに対して、さっと返しとかんとさ。」
「うん。」
「なんかボールこっちに持ってくままって、ちょっと気持ち悪ない?」
さきちゃんが「あー」と声を出す。
それは、博子のかなり本質的な感覚やった。
向こうが“何かやりたい”って投げてきた時に、保留のまま持ってるのが気持ち悪い。
すぐ完璧な答えは出せなくても、とりあえず返球はしたい。
それが博子のやり方なんやろうなと、二人もなんとなくわかっている。
「しかも、まあ、向こうお客さんやし。」
「そうやんな。」
「で、やることによって、またなんか来たい来たいって言ってくれるから。」
「うん。」
「そこのところはもう、言うたら売れなかったとき病よ。」
その言い方に、二人とも笑う。
でも、その中にはかなり本音がある。
売れへん時期が長かった人間ほど、来てくれる人、投げてくれる話、
そういうものを簡単には手放されへん。本来は、断らなあかんもんもあるんやろう。
休まなあかん時もあるんやろう。でも、来たいと言われたら返したくなるし、
何かやりたいと言われたら形にしたくなる。その癖みたいなもんが、博子にはまだ強く残っている。
「ほんとは、断らなあかんもん、断らなあかんのやろうけどね。」
博子がそう言うと、アルカちゃんがすぐ返す。
「でも言うて、私らにもさ、仕事がホイホイってこぼれてくるわけやんか。」
「そうなんよ。」
さきちゃんも頷く。
「で、それはありがたいよ。」
「ほんまに。」
博子もそこは素直に認める。
しんどい。忙しい。
でも、ゼロから仕事を作る大変さを知ってるからこそ、こぼれてくる仕事が
あるというのは、やっぱりありがたい。
自分一人だけやなくて、アルカちゃんやさきちゃんにも、その流れが波及してるならなおさらや。
そんなことを言いながら、三人は帰り支度を終えて、それぞれ自宅へ向かうのでした。
麻雀同伴。ビアガーデン。コンカフェ貸切。
社労士先生。カレンちゃん。会計士先生。東京の座組。
頭の中にはまだまだ整理しきれてない話がいっぱいある。
でも、それを抱えながら帰る感じも、今の博子達らしい。
今日も一日終わった。
でも、次の球はもう、いくつか投げ始めている。
そんな帰り道やった。




