博子が自虐ネタを混ぜながらカレンちゃんの緊張を解こうとする。別角度で麻雀の座組が決まりそうになるwww
場の空気をちょっと和ませようと思って、博子はあえて自分の話から入ることにした。
カレンちゃんがまだ固まってるのがわかるし、税理士先生たちも面白がってはいるけど、
ここで変に“見定める会”みたいな空気になったらしんどい。
だから、少し肩の力を抜くように、笑いを混ぜながら言う。
「いや、私さ、三月まで指名ゼロ、同伴ゼロの状態やったんやで。」
それを聞いて、カレンちゃんがまず目を丸くする。
税理士先生たちも「えっ」と小さく反応する。
「こんだけ今、座組回してるけれども、最初からこんなんちゃうからな。」
博子は、そこで少し笑う。
「だから、経験としてこうやって入ってもらって、あかんかったらあかんかったで経験になるし。」
「うん……。」
カレンちゃんは、まだ少し緊張してるけど、ちゃんと聞いている。
博子はそのまま続ける。
「で、その座組が崩れたら、それは私らの責任やし。」
「え。」
「私らも大事なお客様失うけども、それでも飯は食わなあかんから、なんらか次の手を打つわけやん。」
その言い方は、変に優しすぎへんけど、かなり実務的やった。
大丈夫大丈夫とふわっと励ますだけやなくて、失敗してもそこで終わりではない、
という現実的な話をしている。
だからこそ、カレンちゃんにも入りやすい。
「だから、あんまり、気負わんでもええで。」
博子がそう言うと、さきちゃんも横から軽く頷く。
アルカちゃんも「うんうん」という顔をする。
その“みんな分かってるで”の空気が、少しずつカレンちゃんの周りを柔らかくしていく。
「で、感覚としてはやね。」
博子は、さらに話を噛み砕く。
「なんか、おじさま方の話が持てる接点を作る、とか。」
「接点……。」
「そう。その意味で、簿記二級とかは、多分ちょっとビジネスシーンで引っかかるかな、って。」
税理士先生が、そこで「それは引っかかる」と真面目に言う。
弁護士先生も頷く。
「入口としては十分強いですよね。」
博子はそれを受けて続ける。
「でも、なんでもいいねん。引っかかるもんがあったら。」
「はい。」
「ゴルフができるんやったら、ゴルフできますで、ちょっとした話もできるし。」
「うん。」
「私やったら麻雀ができるから、男の人麻雀好きやし、女の子一人入れたら、
花が出るんじゃないか、とか考えるわけやん。」
そこで博子が、少し調子に乗る。
「Mリーグの岡田さんとかさ、役満ボディって。私、タンヤオボディやけど。」
「そんなこと言うてないやん。」
税理士先生たちが、すぐに突っ込む。
場が一気に笑いになる。カレンちゃんも思わず吹き出す。
固さが少し解ける。
「てか、博子ちゃん麻雀できたんや。」
税理士先生が、そこに食いつく。
「なんか俺も麻雀できるやついるからさ、そっちはそっちで回す?」
博子は、即座に手を振る。
「もちろん。けど話ずれるんでやめてください。」
「ええやん。」
「いや、今の時間のメインはカレンちゃんなんで。」
「そうやった。」
「麻雀は麻雀で言うてくれたら回しますけども、ちょっと待ってくださいね。
今、私の話の途中ですよ、笑。」
またみんな笑う。
こうやって一回笑いが入ると、カレンちゃんの顔つきもさっきよりだいぶ楽になる。
博子は、その流れを逃さずにまた戻す。
「だから、とっかかりを作るっていうことをやれば。」
「うん。」
「徐々にお客さんもついてくるかもしれへんし。」
「はい。」
「新しく入ってくる男性の方も、カレンちゃんのこと気に入ってくれたら、
個別で返ってくれるかもしれへんで。」
税理士先生も、そこは真面目に乗る。
「そうやね。最初から全部回せって話ではないし。」
「別に、カレンちゃんが失うもんなんか何もないねんから。」
博子がそう言うと、カレンちゃんはちょっとだけ目を伏せる。
その言葉はかなり効いていた。
何か大きい期待を背負わされてる感じやなくて、“一回入ってみる”だけでええと言われてるからや。
「とりあえず入ってもらって。」
「はい。」
「座組として、みんなでどっか行って。で、同伴は別々でして、最後お店で
反省会するみたいな感じやけど。」
「うん。」
「最初の何回かは、私と税理士先生と、その、二組のダブル同伴みたいな形にしてさ。」
「おお。」
「ちょっと入ったら空気柔らかくなるから、最初別にそれでもいいで。」
税理士先生も、そこで頷く。
「そんなん最初から全部できるなんて思ってないしな。」
「そうそう。」
「こんな空気出来上がってる中で、新しく投入されるとなったら、やっぱ大変やん。」
弁護士先生も笑いながら言う。
「俺でも緊張するわ。」
「ほんまですよ。」
「そしたらどうしよう、とかやっぱ思うし。」
博子は、そこでちょっと肩をすくめる。
「やけど、私はもともと売れてない組やから。」
「何その組。」
「そんなに気にせえへんし。」
また笑いが起こる。
博子は、そのまま続ける。
「で、あかんかったらあかんかったで、税理士先生も多分こそっと言ってくるわ。」
「それは言う。」
税理士先生がすぐ返す。
「やし、なんかまあ、あかんようになるまでちょっとやってみたら、って感じ。」
そこまで言われて、ようやくカレンちゃんが、少しだけしっかりした声で返す。
「いや、そこまで気遣ってもらってありがとうございます。」
「うん。」
「なんか、ヒロコさんはすごい気遣いの人やっていうのを、周りに聞くから。」
その言葉に、博子が一瞬きょとんとする。
「え。」
「その辺のところは、本当に嬉しいです。」
「私、そんなふうに言われてんねや。」
博子は思わず本音でそう漏らす。
さきちゃんがすぐに笑う。
「言われてるで。」
アルカちゃんも頷く。
「めっちゃ言われてる。」
「知らんかった。」
「自覚ないだけや。」
税理士先生たちも、そのやり取りを見てちょっと面白そうに笑っている。
カレンちゃんも、そこでようやくちゃんと笑えた。
空気は、もう最初の固まり方とは全然違う。
完璧に馴染んだわけじゃない。
でも、“一回入ってみる”には十分な柔らかさができていた。
ヒロコは、その空気を見て、まあ今日はこれでええかと思う。
最初の一歩としては、悪くない。
カレンちゃんが完全に埋もれたわけでもないし、無理に持ち上げられたわけでもない。
ちゃんと笑って、ちゃんと入口の話ができた。
それだけで、今日は十分な前進やった。




