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店内三セット目、博子が空気を見てカレンちゃんを投入する。温まっている六人の中に入れられて緊張するカレンちゃん

三セット目に入る頃に、博子が税理士先生にちょっと差し込む。

今やったら空気もあったまってるし、ここで入れるなら入れた方がええかな、

というタイミングやった。

「税理士先生。」

「うん?」

「ここでカレンちゃんを投入できるようなら、投入しようと思ってるんですけど、どうですか。」

その一言で、男側の空気が少しだけ変わる。

税理士先生も、弁護士先生も、保険会社の人も、ちょっと「おっ」という顔になる。

博子はそこで、雑に流さずちゃんと説明する。

「簿記二級持ってる、商業高校卒の女の子です。」

すると税理士先生が、すぐに反応する。

「おお。」

弁護士先生も、少し面白そうに頷く。

「それは、入り口としては強いですね。」

税理士先生は、そこで少し言葉を選びながら言う。

「まあ、あれやな。ビジネスシーンにこうやるにあたって、簿記二級持ってると。」

「高卒でも、とりあえず勉強の素地があるんやなっていうところと。」

「将来性やね。」

保険会社の人も、そこに乗る。

「なんか、少なくとも俺は、税理士事務所で働いてもらえそう、とか思うし。」

「勝手にスカウト始まってるやん。」

博子がすぐに笑って突っ込むと、税理士先生も笑う。

「いやいや、そういう意味やなくて。」

「でも、トークも、その子の種類にもよるけど。」

弁護士先生が続ける。

「ちょっと入ってこれそうな匂いがするよね。」

「そうなんですよ。」

博子もそこは頷く。

「で、俺はありやなと思ってんねん。」

税理士先生がそこで決めるように言う。

「今日一回回してもらって、あかんだらあかんのでええけど。」

「とりあえず、今日最後のスパイスとして入れてもらおうかな。」

そういう話になって、カレンちゃんを呼ぶ流れになる。

ただ、いざ来てみると、六人でかなり盛り上がってるところに投入される形になるから、そら固まる。

カレンちゃんは、入ってきた瞬間にちょっと足が止まる。

空気が出来上がってるところに後から入るのは、それだけで緊張する。

博子は、そこをすぐに拾う。

「気にせんでええねんで。」

そう言いながら、席の流れを少し動かして、カレンちゃんが浮かへんようにする。

博子はそのまま、本人にもちゃんと説明を入れる。

「ちょっとね、座組いろいろ回してる中で。」

「もう一人、税理士先生が仲間に入れたい男の人がいるから。」

「その人とのマッチングで、カレンちゃんどうかなと思って。」

カレンちゃんは、まだ少し緊張したままやけど、話自体はちゃんと聞いている。

「女の子同士でも、ちょっと話したけども、どうかなっていうので入ってもらうんや、って感じ。」

「……あ、そうなんですね。」

その返し方が、いかにもまだひよっこっぽい。

でも、素直さはある。

税理士先生も、その感じを見てあんまり圧を出さへん。

そこがよかった。

ただ、カレンちゃんとしてはやっぱり気後れがある。

だからすぐに、自分からちょっと引いた言い方をする。

「でも、お三方、めっちゃ売れっ子で、ね。」

「いやいや。」

「すごいじゃないですか。私なんかまだまだひよっこで。」

「うん。」

「言うたら、一回一回同伴するのも苦労するような状態やし、お客さんもそんな続いてないですよ。」

そこは博子が、あんまり大げさに励ますでもなく、でもちゃんと切る。

「まあ、そこはあんま関係ないし。」

「え。」

「どちらかというと、私のお客さんが税理士先生やから。」

「はい。」

「簿記二級持ってるっていうのと、商業高校っていうところをとりあえず入口で話したらええやん。」

それは、カレンちゃんにもわかりやすい言い方やった。

全部をできるようになれ、ではない。まず入口を持ってる。

それだけで、この座組に一回入る理由にはなる。

そこを博子はちゃんと小さくして渡す。

「まずは入ってみてもろて。」

「はい。」

「で、向いてないなって言うんやったら、ちょっと言うてくれたら、

またメンツこっちも考えるからさ。」

カレンちゃんは、その言い方でようやく少しだけ肩の力が抜ける。

“絶対やれ”ではない。“試しに入ってみ”である。

その温度感なら、まだ入れる。

で、税理士先生もそこにやわらかく乗る。

「別に、こんだけ空気あったまってるし。」

「はい……。」

「取って食おうってわけじゃないから。」

弁護士先生も笑いながら言う。

「そうそう。あんま気にせんでええですよ。」

「気にせんでええでって言われても、気にするんですけども……。」

カレンちゃんが、正直にそう言ってしまう。

それで逆に場が少し和む。みんなも「そらそうやな」と笑う。

その笑い方が、意地悪じゃない。そこもかなり大事やった。

「まあ、ちょっとみんなでしゃべろうか。」

博子が、最後はふわっと空気を持っていく。

税理士先生の座組は、こういう時に“正解を言い当てる”より、“とりあえず混ぜてみる”方が強い。

カレンちゃんがすぐに大活躍する必要はない。

まずはこの空気に触れて、どういう会話が回ってるかを見て、少しだけでも入れたらそれで十分や。

そういう意味では、今日の最後のスパイスとしては、ちょうどよかった。

カレンちゃんは、まだ完全には固まったままやったけど、博子とさきちゃん、

アルカちゃんがちょこちょこ目配せして拾う。

男側も男側で、変に試すようなことは言わへん。

簿記二級とか商業高校の話を入口にしながら、仕事の話をちょっとだけ、

でも重くなりすぎんように回す。

そうやって、六人で温まってた空気の中に、七人目として少しずつカレンちゃんを馴染ませていく。

博子は、ああ、とりあえずこの一歩が大事やなと思いながら、その場をゆっくり整えていく。

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