店内での二セット目。弁護士先生がこのお座組の良さを言語化してくれる。そのうえで主宰の税理士先生の構想と博子にかける期待も言語化される
弁護士先生が口火を切ったのは、二セット目に入って少し空気が落ち着いたあたりやった。
一セット目でウイスキー工場の話や、それぞれの同伴の話を一通りして、
全体として今日はええ流れやったなという認識が共有されたあとやからこそ、
ちょっと本音っぽい話がしやすかった。
弁護士先生がグラスを軽く置きながら言う。
「ゴルフは回るんですけど、結局、何十人とかのコンペになるから、
こんなに楽しく回れないんですよね。」
税理士先生がすぐに「そうやろ」と頷く。
弁護士先生は、そのまま続ける。
「基本的に気使うし、金かかるし。で、同じ金かかるんやったら、こうやってちっちゃく回って、
ゆったりした気持ちで一日過ごした方が、仲良くなった感っていうのはやっぱりあるんですよ。」
保険会社の人も、そこにはかなり強く同意していた。
「それはありますよね。」
「どうしても大きい会になると、ワンシーズンに一回みたいな感じで顔なじみぐらいにはなるけども。」
弁護士先生が少し笑う。
「細かい話するには、なかなか難しいですよね。」
税理士先生が、そこで少し得意げな顔をする。
「そうやろ。」「だって俺ら、これ二回目やけど、だいぶ連絡してるよな。」
「してますしてます。」
弁護士先生も笑う。
「結局ポカするとか、ちょっとしたリカバリーとかの時って、いかに楽に連絡できるかが必要で。」
「うん。」
「それが、月一でこんなんやってたら、例えば座組どうするっていう話で連絡取ったりとかするから。」
保険会社の人が、その先を引き取るように言う。
「ついでになんか、ちょっとしたゴシップとか情報共有できるんですよね。」
「そうそう。」
「この流れ、いいっすよね。」
弁護士先生が、かなりはっきりそう言ってくれる。
その言い方は、博子としてもかなりありがたかった。
ただ「楽しかった」で終わるんやなくて、ちゃんとこの座組の意味を言葉にしてくれる。
それを税理士先生も待ってたみたいに頷く。
「それが狙いで、博子ちゃんに全部任してんねん。」
「おお。」
弁護士先生も保険会社の人も、そこで少し身を乗り出す。
税理士先生は、そのまま自分の構想を喋り始める。
「一緒にゴルフ回ってくれるバディに、小遣い渡してやるよりか。」
「うん。」
「こうやって回してくれる方が、楽しいっしょ。」
「それはそうですね。」
「経営者集まりの方は、あれも形式的なもんやからしゃあないとして。」
税理士先生は、ボトルの焼酎をひと口飲んでから続ける。
「俺は俺で、仲良くしたい。仲良くしたいもそうやし、仕事上、ちょっとでもなんかやりたいなって
いう人たちとは、こうやって集めて一緒に遊びたいと思ってんねん。」
その言い方は、今日の流れを一番端的に言っていた。
大きい会ではなく、小さい会。
顔を売るだけじゃなく、ちゃんと関係を作る場。
気ぃ使って終わりやなくて、連絡が楽になるぐらいの距離まで持っていく。
それを、女の子をただ添えるんじゃなくて、“座組”として組んでもらう。
その構想を、税理士先生はかなり素直に言葉にした。
弁護士先生も保険会社の人も、そこにはかなり納得していた。
「そうですよね。」
弁護士先生がまず言う。
「本当にこれはありがたいです。」
保険会社の人も続ける。
「でも、結局のところは、回してくれてる女性陣がやっぱりメンツ強いからですよね。」
博子は、その言葉に少しだけ背筋が伸びる。
税理士先生も「そこや」と頷く。
保険会社の人は、そのまま続けた。
「可愛いもそうやけど、話がちゃんと続くし。」
「うん。」
「そういう趣向みたいなのを一生懸命考えてくれてるし、その辺めっちゃありがたいですよね。」
さきちゃんもアルカちゃんも、その言い方にはちょっと照れたように笑っている。
でも、ほんまにそこは大事やった。
ただ横におるだけでは、この座組は回らん。
どこで笑うか、どこで拾うか、どこで話を広げるか。
そういうのを、それぞれがちゃんと考えてるから、今日みたいな日が“楽しい”で終わる。
「ゴルフについてくる女の子なんか、本当に回ることだけ考えてるから。」
弁護士先生がそこに乗る。
「こっちも気回さなあかんし。」
「そうなんですよ。」
「お金かけてても、気回さなあかんっていうのがあるから、結構辛いっすよね。」
税理士先生が笑いながら頷く。
「せやろ。」「金払ってまで、こっちが回さなあかんのかってなる。」
「なるなる。」
「だから、こうやって女の子側である程度考えてくれてるっていうのが、めちゃくちゃ楽なんよ。」
そこまで言われると、博子もさすがにちょっと照れる。
「いやいや、でも。」
「いやいやちゃうねん。」
弁護士先生が、少し笑いながら言う。
「なかなかいい座組を、いつもありがとうやで、博子ちゃん。」
その言い方に、博子は少し目を伏せて笑うしかない。
「やめてくださいよ、急に。」
「急じゃないやん。」
「でも、そう言うてもらえるとありがたいです。」
税理士先生も、そこでまた少しだけ現実的な話に戻す。
「で、もう一人呼びたい奴がいるから。」
「お。」
「その辺のところは、ちょっと話さなあかんな。」
博子が頷く。
「そうなんですよね。」
そこはまだ、具体の詰めが必要な部分やった。
三人の女の子でようやく回り始めたところに、もう一人増やす。
それは魅力でもあるし、リスクでもある。
でも、税理士先生の狙いが“この小さい座組を増やして、仲良くしたい人を
じわじわ混ぜること”やとしたら、たしかに避けては通れへん話でもある。
「まあ、その辺はまた。」
博子が少しまとめるように言う。
「ちゃんと見ながらですね。」
「そうやな。」
「焦って変なん入れてもあかんし。」
「うん。」
「でも、もう一段上げるなら、そこやしな。」
そんなふうに、二セット目は終わっていく。
ただ楽しく飲んだだけやなくて、この座組の意味と、次の構想と、
今の手応えがちゃんと共有された時間やった。
博子は、こういう話が自然にできるようになってきたこと自体が、だいぶ大きいなと思う。
税理士先生の狙いも、弁護士先生や保険会社の人の感触も、女の子側の価値も、
全部が少しずつ言語化されていく。
そういう意味で、この二セット目はかなり濃かった。




