北新地の店で六人合流。今日の大まかな流れはよかったことを共有。同伴の店について話しながら次の座組を模索する
夜八時前、店前で六人が集合する。
男女六人、なんとなくもう顔なじみみたいな空気で店の中に入っていく。
今日の山崎のウイスキー工場から、それぞれの同伴に散って、またこうして戻ってくる。
博子としては、座組と同伴はおおむね成功やったかな、という感触があった。
もちろん満点ではない。
でも、前半の流れがかなり良くて、全体の温度も高い。
それだけでも十分やろうと思いながら、とりあえず着替えに行く。
戻ってきて、「どうやった?」という話になると、さきちゃんはかなり機嫌がよさそうやったけど、
アルカちゃんだけが少しへこんでいる。そこはすぐに気づく。
博子が「どうしたん」と聞くと、アルカちゃんが、ちょっと苦笑いしながら事情を話す。
「ネギ焼きのとこ、混む前に入るまでは良かったんやけど。」
「うん。」
「注文した時に店員さんに、なんかぶっきらぼうに言われて、テンション下がっちゃって。」
「うわ。」
「それ引っ張ってもうた。」
さきちゃんと博子は顔を見合わせる。
ああ、そういうやつか、という感じである。
味が悪いとか、店が汚いとかではない。
でも、空気が悪くなると、それだけでしんどい。
特に今日みたいに、前半がうまくいきすぎてる日は、なおさら落差が出る。
「いやでも、まあそんな日もあるって。」
博子がすぐにそう言う。
さきちゃんも頷く。
「大きな流れで言ったら、ウイスキー工場で結構満足されてたから。」
「そうそう。」
「私ら、その後のトークもだいたい、そこが良かったねっていう話で繋いでたし。」
「うん。」
「いい感じに回ったし。」
「ここは、全体を見たら良かったんじゃない?」
アルカちゃんは、そう言われて少しだけ気が楽になる。
たしかに、ネギ焼きのところだけ切り取ったら、ちょっともったいなかった。
でも、今日一日を大きく見たら、かなり良かった。
山崎十二年、山崎十八年、白州十八年。
お土産コーナーでの山崎十八年。
そこまでは間違いなく強かった。
だから、そこをちゃんと見た方がええ。
「そういう時もあるよ。」
博子が、少しやわらかく言う。
「ご飯美味しかったのに、店員の対応ひとつで台無しっぽくなったん、もったいないわ。」
「ほんまそれ。」
さきちゃんも乗る。
「人気店って、やっぱ難しいな。」
そこでアルカちゃんも、少し自分を取り戻したように言う。
「でも、人気店を提案することで、お客さん喜んだりするところもあるからさ。」
「うん。」
「そう難しいところやね。」
「そうやな。」
博子もその言葉には頷く。
人気店って、当たれば強い。
でも、回転とオペレーションで荒れてる日もある。
そこをどう読むかは、やっぱり難しい。
結局、店の評価と、その日の空気は別や。
それが同伴のややこしいところでもある。
「まあまあ。」
博子が、最後に軽く締める。
「あんま引きずらんと。こっから挽回、空気よく終われば、“最後はええやん”ってなるから。」
「うん。」
「そうやな。」
そんな感じで、女の子たちは一回その話を落ち着けて、それぞれ持ち場に向かう。
一方で、男性陣の方でも、やっぱり今日のウイスキー工場はかなり強かった、という話になっていた。
税理士先生も弁護士先生も、保険会社の人も、“今日はええ日やったな”という顔をしている。
その中で、保険会社の人が、さっきのアルカちゃんのことを少しだけ共有する。
「いや、ちょっとアルカちゃんね、へこんでるんですよ。」
「どうしたん。」
税理士先生が聞く。
「ネギ焼きの店、入るとこまでは良かったんですけど。」
「うん。」
「店員さんの態度悪くて。それでガーッて言われたから、アルカちゃん、へこんでもうて。
ちょっと微妙な空気になりました。」
弁護士先生が、そこで少し眉を上げる。
「そらちょっともったいないな。」
「そうなんですよ。」
「仕事の延長線上で遊んでるっていうスタンスで、めちゃめちゃ立て付け作ってるんですけどね。」
保険会社の人がそう言うと、税理士先生が少し笑う。
「別にここは自由恋愛やから行ってええんやで(笑)。」
「そうそう。」
その“仕事の延長線上”という言い方が妙にしっくりくる。
みんな遊んではいる。でも、ただ雑に遊んでるんやなくて、ちゃんと段取りがあって、
ちゃんと関係性を作りにきてる。
やから、ちょっとした接客の荒さが余計に刺さるのだ。
「まあまあでも。」
弁護士先生が、そこで少し柔らかく言う。
「大きい流れで言ったら、今日も楽しかった、でええからさ。」
「うん。」
「そこだけで全部決まるわけちゃうし。」
そういう話をしてるところに、女の子たちが来て、自然とその話題を中心にワンセット回すことになる。
アルカちゃんもさっきよりだいぶ表情が戻っている。
男側がちゃんと「そんな日もあるやろ」と受け止めてくれるだけで、かなり違う。
だから場の空気も、思ったより早く整った。
で、そこからまた自然に、次の話になる。結局ウイスキー工場がすごい良くて、
今日もすごい楽しい空気で来れてるから、また今度どっか行きたいな、
という話をみんなでしたくなるのである。
「でもね。」
博子が、そこでちょっと困ったように笑う。
「結構、種不足なんですよ。」
「出た。」
「いや、ほんまに。」
税理士先生が、少し面白そうに聞く。
「じゃあ、九月、次もう一か月後にやるんやったら、なんかええとこないですかね。」
博子は、そこで今頭の中にある案を少しだけ出す。
「バーベキューとかもね、ありかもなとは思ってるんですけど。」
「ほう。」
「季節外れになるかもしれんけど、紅葉、一緒に行くとか。ありかもなとは思ってるんですけどね。」
弁護士先生が、そこで少し考えるような顔をする。
「でも、ウイスキー工場越えるとなると、なかなか難しいな。」
「そうなんですよ。」
「今日、だいぶ良かったから。」
「そう。」
「だから次、普通の飯だけだとちょっと弱いし。」
「そうなんです。」
「でも、無理して変なん入れるのも違うやろし。」
「そう。」
そんなふうに、みんなでベラベラ喋りながら、次の可能性を探る。
今すぐ決まるわけではない。
でも、こうやって話してる時間そのものが、もう次の座組の一部みたいになっている。
今日の反省も、今日の当たりも、全部踏まえて、次をどうするかをゆるく話す。
それがこのメンツにはかなり合っていた。
一時間ぐらい、そんな感じで空気よく進んでいく。
アルカちゃんのへこみもだいぶ薄れて、最後の方にはまたちゃんと笑えている。
今日の流れとしては、それで十分やった。
ウイスキー工場があって、お土産の当たりがあって、それぞれの同伴があって、
ちょっとした外れもあって、でも最後はまたみんなで喋って整える。
そういう一日として、金曜日の座組はかなりよく回っていた。




