表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

660/777

山崎ウイスキー工場のお土産コーナーで山崎十八年を見つけてテンション上がる。新大阪まで出て三者三様で同伴に行く

山崎ウイスキー工場のお土産もんコーナーに行く。

三杯テイスティングで軽く飲んで、ちょっと酔いが入るぐらいの、

あの一番楽しい温度で棚を見て回るから、みんな妙にテンションが高い。

「響あるんちゃうか」とか、「いや山崎の十二年でもあったら十分ちゃう」とか、

そんな話をしながら、わちゃわちゃ歩く。で、まさかのところで、それはあった。

「あります、ありますよ。」

最初に気づいたのは博子やった。ちょっと声が一段上がる。

その声につられてみんなが寄ってくる。

棚のところに、一本だけ、山崎十八年が置いてあったのである。

「まじか。」

税理士先生がまず止まる。

弁護士先生も、ほんまに?という顔で近づく。

保険会社の人まで、思わず笑ってしまう。

「いや、あるんや。」

「ありますやん。」

「一本だけやん。」

その一本だけ、というのがまた効く。

しかも値段を見ると、六万五千円。

定価でございます、という顔をして、そこに静かに置かれている。

「いやでも、高いなあ。」

税理士先生が、ちょっと本音で言う。

すると博子が、すぐに現実的な話を挟む。

「でも、こんなん転売とか、キャバクラとかで飲んだら二十五万から三十万しますからね。」

「それはそうやな。」

弁護士先生も、そこで一気に顔つきが変わる。

高い。でも高いだけではない。“見つけてしまった”時の高揚感がある。

しかも今日は、山崎十二年、十八年、白州十八年と流れで飲んできてる。

その上で、現物の山崎十八年が一本だけある。

これは、かなり揺れる。

博子が少し煽るように言う。

「先生、これ買っといた方がええんちゃいます?」

税理士先生が、半分本気、半分冗談で言う。

「一本やからな。じゃんけんするしかないかな。」

すると保険会社の人が、そこで即座に引く。

「いや、これ普通に定価高すぎるんで、僕じゃとてもじゃないけど無理です。

先生方二人でじゃんけんしてください。」

その言い方に、みんな笑う。

でも、笑いながらも本気でどうするかという空気になる。

税理士先生と弁護士先生、どっちが行くか。

そこで博子は、少しだけ空気を見てから言う。

「やけどまあ、せっかく今日ゲストあれですからね。」

「うん?」

「私と税理士先生がおもてなし側なんで。弁護士先生、良かったら買ってください。

これ、お譲りしますから。」

税理士先生も、それに乗るように頷く。

「そうやな。」

「ええ、いいんかなあ、ほんまに。」

弁護士先生は、ちょっと本気で遠慮してるような顔をする。

でも、その顔の奥ではだいぶ欲しいのが見える。

博子もそれを見て、ちょっと面白くなる。

「いいんですよ。今日のお土産にちょうどええじゃないですか。」

「いやあ……。」

「先生、ここで逃したらたぶん後悔しますよ。」

弁護士先生は、そこでようやく観念したみたいに笑う。

「ほな、買います。」

その瞬間、なんか六人の中でちょっとした達成感みたいなものが走る。

自分のもんでもないのに、見つけたことがうれしい。

しかもそれを、ちゃんと買う人がいて、ちゃんと喜んでる。

この流れもまた、座組の妙やなあとヒロコは思う。

そうこうしてるうちに、そろそろ同伴のご飯屋さん行きましょうか、という話になる。

タクシーを呼んでもらって、帰りも行きと同じような感じで戻る。ウイスキー工場から駅へ。

その間も、弁護士先生はだいぶホクホクしている。

「弁護士先生、良かったですね。」

博子がそう言うと、先生は素直に笑う。

「いやもう、これだけでも今日帰ってもいいかなぐらいの感じなんですけど。」

「いやいや、ちゃんと回ってくださいよ。」

「そらそうか。」

「まだ前半戦やって言うたでしょ。」

そんなことを言いながらも、山崎十八年を買って帰るという高揚感で、

弁護士先生はかなりご機嫌やった。

税理士先生も、それを見てどこか満足そうや。

保険会社の人は保険会社の人で、「いやあ、ええもん見ましたわ」みたいな感じで笑ってる。

さきちゃんもアルカちゃんも、ちょっとしたボーナスステージみたいに感じてる。

こういうお土産コーナーの当たりまで含めて、今日はだいぶええ流れやった。

で、新大阪に戻る。ここで全員降りる。

ここから先は三者三様で同伴に散る流れや。

博子は西中島。

歩いてすぐのところで、自分の店を押さえている。

さきちゃんは焼肉屋。

一笑の西中島店。

ただ、駅近すぎてタクシーはたぶん乗せてくれへん。

だからちょっと歩いてもらうしかない。

アルカちゃんは十三方面。

ねぎ焼きのやまもと本店の流れやから、そこはもう絶対タクシーに乗せなあかん。

「さきちゃんは、たぶんタクシー乗せてくれへんで。」「駅近すぎる。」

「ほな歩くわ。」

「一笑やったら歩けるし大丈夫や。」

「うん。」

「アルカちゃんは、もう絶対タクシー乗らなあかんから、十三本町までタクシー乗せてもらい。」

「了解。」

「で、それぞれ別れて、また店前で、ということで。」

「おっけー。」

そうやって、最後はパキッと分かれる。

さっきまで六人でウイスキー飲んで、お土産コーナーで山崎十八年に湧いてた空気から、

一気に“仕事の後半戦”に切り替わる。

でも、その切り替わり方が変にしんどくない。

みんな少しずつ気分が上がってるからや。

弁護士先生は山崎十八年で。

税理士先生は座組が綺麗に回ってることで。

女の子たちは、それぞれの同伴にちゃんとネタを持ち帰れてることで。

そういう意味では、かなり強い前半戦やった。

そして六人は、新大阪で三つに割れて、それぞれの同伴先へ向かっていく。

またあとで店前で合流する流れを頭に入れながら、金曜の夜は、ここから後半へ入っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ