山崎ウイスキー工場で山崎12年をテイスティング。空間と平日の人が少ない感じがいい味出してる
山崎ウイスキー工場のテイスティングルームに着くと、まずその空間の広さに、
みんなちょっとだけ気分が変わる。
ウイスキー工場の中やのに、ただの売店とか試飲コーナーみたいな雑な感じじゃなくて、
ちゃんと“ここで飲むための場所”として整えられてる。
天井が高くて、光の入り方も柔らかい。
金曜日の夕方ということもあって、人もそこまで多くない。
休日やったらもっとガヤガヤしてるんやろうけど、今日はかなり静かや。
だから余計に、六人とも少しだけ背筋が伸びる。
「うわ、なんかええな。」
税理士先生が、周りを見ながらそう言う。
弁護士先生も頷く。
「めちゃめちゃ開放感ありますね。」
「でしょ。」
博子も、その反応を見て少し嬉しそうに笑う。
この感じは、やっぱり写真だけでは伝わらん。
実際に来てみると、ウイスキーを飲む前からもうちょっと特別感がある。
で、いざメニューを見ると、色んな銘柄のウイスキーが並んでいて、今度はそれで悩み始める。
山崎、白州、年数の違い、他の限定っぽいやつもある。
普段そんなにウイスキーを飲み慣れてるわけでもない人間からすると、正直どれがどう違うのか、
パッと見ではようわからん。
「これ、何選んでいいか悩むな。」
保険会社の人が、素直にそう言う。
税理士先生もメニューを見ながら笑う。
「下手に選んで、順番ミスるのも嫌やしな。」
そこで博子が、ちょっとだけ案内役の顔になる。
「ここ、テイスティングで飲めるのは三杯までです。」
「三杯までなんや。」
「そうなんです。やから、もし飲むのであれば。」
「うん。」
「山崎の十二年を飲んでから、山崎の十八年、白州の十八年、という順番で飲んだ方がいいですよ。」
その言い方に、みんなちょっと納得した顔になる。
なんとなく、“年数が上の方がすごいんやろうな”というのはわかる。
でも、いきなりそこから行くより、一回十二年を踏んでからの方が違いもわかりやすい。
そう言われると、その順番がしっくりくる。
「なるほどな。」
税理士先生が頷く。
「いきなり十八年いったら、戻られへんもんな。」
「そうなんですよ。」
博子も笑う。
「最初に基準作っといた方が、感動しやすいんで。」
「その辺、ちゃんと導線組んでくるな。」
弁護士先生がそう言うと、さきちゃんがすぐに小さく笑う。
「また出た。導線。」
「導線です。」
「何でも導線にするやん。」
そんな軽口を叩きつつ、みんな結局その順番で頼むことにする。
グラスが並んで、まずは山崎十二年。
色を見て、香りを見て、それから口をつける。
すると、まず素直に「うまいな」という感想が出る。
わかりやすく強いとか甘いとかじゃない。
でも、ちゃんと“あ、これはええ酒や”と思わせるだけの丸さと余韻がある。
「うまいな。」
税理士先生が、ひと口目でそう言う。
弁護士先生も少し遅れて頷く。
「これは、たしかに飲む価値ありますね。」
保険会社の人も、グラスを見ながら笑う。
「十二年でこれか。」
博子は、みんなの反応を見てちょっと安心する。
山崎の十二年だけでも、十分ここまで来た意味がある。
普段なんとなく居酒屋でハイボールにされてるウイスキーと違って、
“ちゃんと一杯で向き合う”とこうなるんやな、というのが伝わる。
その感じがまず大事やった。
「これだけでも、十分価値あるな。」
税理士先生がしみじみ言う。
「でしょ。」
「でも、これから十八年を二つ味わうっていう中で、なんか高揚感があるな。」
その言葉に、アルカちゃんも頷く。
「わかる。まだ先がある、っていうのがええ。」
さきちゃんも、普段そんなにウイスキーを飲み慣れてるわけではないけど、
今日は今日で空気ごと楽しんでる感じやった。
「なんか、こういうテイスティングルームって。」
「うん。」
「めちゃめちゃ天井高いんで、開放感ありますよね。」
「ありますあります。」
「ここでお酒飲んで、ゆっくりできるっていいですね。」
たしかにそうやった。
高い天井。静かな空間。ウイスキーの香り。
平日の夕方で、人もそんなにおらん。
休日やったらたぶんもっと人が多くて、試飲もばたばたしてるんやろうけど、今日は違う。
だから、六人とも自然に声が少し落ち着く。
店で飲むのとも、観光地の酒蔵で飲むのともまた違う。
ここはここで、なんか“余白のある贅沢”がある。
「しかも。」
弁護士先生が、少し笑いながら言う。
「平日の夕方やから、人もそんなにおらんし。」
「そうですね。」
「なんか私たちだけの空間ですね。」
その言い方に、みんなちょっと笑う。
たしかに貸切ではない。
でも、それに近いぐらい、静かでゆるい。
特別扱いされてるわけやないのに、特別感が出る。
それが、今日の時間帯の正解さやった。
「これは、休日に来るんとはまた違うな。」
税理士先生がそう言うと、博子もすぐ返す。
「休日はもっと混んでると思います。」
「やろな。」
「だから今日、この時間にしたのは正解やったかもしれんね。」
「そう思います。」
そうやって、一杯目の山崎十二年をそれぞれ飲み終える頃には、場の空気も完全に温まっていた。
派手に盛り上がるわけやない。
でも、みんな同じものを味わって、同じようにちょっと気分が上がってる。
その感じが、税理士先生の座組にはとても合っていた。
「ほな、次いくか。」
誰かがそう言う。
目の前には、次の山崎十八年が待っている。
山崎十二年で十分うまい。
でも、そこからどう違うのか。
それをこれから知れるというだけで、またちょっと高揚感が広がる。
六人は、それぞれのグラスと、その先の二杯目に手をかけるのであった。




