木曜日。博子はオフだがネタの消耗が気になるから常連さんにニーズの掘り起こしをしてみる
木曜日。金曜日は、博子的にはオフだったけれども、頭の中では、むしろいろんなことが動いていた。
最近ちょっとネタがどんどんどんどん消耗している感じがしていたからだ。
東京の社長たちを回すにしても、地場のメンツを丁寧に扱うにしても、何かしら
“気づき”とか“新しい球”みたいなものがないと、だんだん同じことの繰り返しになる。
もちろん、それでも回る人は回る。
でも博子の中では、それだけやとちょっと違う。
もう一段、何かないかな。そういうことを、木曜の朝からぼんやり考えていた。
で、なんの気なしに、おじいちゃんと弁護士先生と会計士先生に、それぞれ似たような
メールを送ってみることにした。内容としては、かなり軽い。
「もし外遊びとか考えてる時に、寺社仏閣とか、芸術関係。博物館とか美術館とか、
そういうところに行ってプラスご飯ってプラン興味ありませんか?」
そんな感じである。
別に“絶対こうしましょう”という押し方やない。
「コンカフェでもいいんですけど」ぐらいの逃げ道も一応置いてある。
でも、博子としては、そのメール自体がちょっとしたニーズの掘り起こしやった。
すると、弁護士先生と会計士先生からは、だいたい似たような温度感で返ってくる。
「この前コンカフェ行ったから、あんな感じでイメージできます」
「でも、なんかそういうどっか行ってちょっとご飯食べるっていうのはありですね」
「多分、火曜木曜休みの想定ですよね」
「刺さるものがあればって感じですかね」
そんな返事や。
要するに、完全に拒否ではない。
むしろ興味はある。
でも、何に刺さるかはまだ見えてない、ということやった。
博子は、その返事を見ながら、やっぱりそうよなと思う。
単純に「お茶だけでもいいんですけど」と相手は言ってくれる。
それはありがたい。
でも、こっちの感覚としては、それだけやとやっぱりちょっとパンチが弱い。
なんか“気づき”みたいなものを提供するという建前上、ただご飯だけ、ただお茶だけやと、
ちょっと弱いかなという気持ちがある。
もちろん、相手との関係性次第ではそれでも十分や。
でも、博子が今自分の色として持ってるものを考えると、やっぱり「どっか+ご飯」の方が
しっくりくる。
だから、返事としても「ご飯だけでも全然いいんですけども、なんかパンチが弱いというか、
気づきみたいなものを提供するという建前上、なんかそういうものがあった方がいいかな
みたいな感じで考えてます」と返していくのである。
で、おじいちゃんだけはまた少し違う。
ヒロコがその話を少し振ると、すぐに「じゃあ次はコンカフェやな」みたいな話になる。
そこは、妙に話が早い。
おじいちゃんは、結局のところ、難しい理屈よりも「お前がええと思うんなら行こか」
という温度感で来てくれることが多い。
だからその辺が、博子としてはありがたいし、楽でもあった。
メールのやり取りも、弁護士先生や会計士先生が少し探り探りなのに対して、
おじいちゃんとは「ええやん」「行こか」「ほな次それな」ぐらいの速度で進む。
そういう意味では、おじいちゃんと私でちょっと盛り上がる。
博子の頭の中では、候補自体はいくつかあった。
なんとなくモネ展とか。若冲とか雪舟とか、その辺の和の展示。
京都が多いかなという感じで、美術館や寺社仏閣の候補がぽつぽつ頭に浮かぶ。
京都の美術館とか、寺社仏閣なら、それプラスご飯っていうのが組みやすい。
だから、多分そっち方面になるかなと思っている。
ただ、そうなるとちょっと半日プランになる。
それはそれで楽しい。でも、相手のカロリーと時間も取る。
だから、その辺の兼ね合いが難しい。
大阪であるとしたら、たぶん中之島美術館とか、大阪市立美術館とか。
要するに中之島周りとか、南の方でちょっと何かあれば、そこで
“見て、食べる”が作りやすいかな、という感じや。
中之島は街並みも綺麗やし、カフェやご飯屋も繋げやすい。
大阪市立美術館の方やと、天王寺の流れも使える。
ただ、どっちにしても“展示が何をやってるか”と“相手に刺さるか”が大きい。
だから博子は、その辺もぼんやり考えながら、メールのやり取りをちょこちょこ続ける。
「なんとなくモネ展とか、若冲、雪舟展とか、京都が多いんですけどね」
「京都の美術館とか、寺社仏閣なら、それプラスご飯っていうのが組みやすいから、
多分そっち方面になるかなと」
「ちょっと半日プランになるかもです」
「大阪であるのは多分、中之島美術館と、大阪市立美術館とか、要は中之島周りか南のところで、
ちょっとなんかそういうのがあればなみたいな感じで考えてますよ」
そんなふうに、ちょっとずつアナウンスしていく。押しつけでもなく、単なる雑談でもなく。
この“ちょっと置いてみる”感じが、博子としてはかなり大事やった。
そうやって一日かけて、博子はニーズの掘り起こしみたいなものをしていた。
目の前の予定をこなすのも大事。
でも、それとは別に、次の遊び方、次の切り口、次の“博子らしい動線”みたいなものを、
今のうちに探っておく。木曜日は表向きオフやけど、実際はそういう日やった。
誰がどこまで付き合えるのか。寺社仏閣まで入ると重いのか。
美術館や博物館なら乗るのか。カフェだけで満足するのか。
そういうことを、軽いメールのやり取りの中で見ていく。
博子は、そういう“見えへん準備”こそ、最近一番大事やなと思いながら、
木曜の夜までちょこちょことスマホをいじっていた。




