弁護士先生お見送り後、フリーの卓でアルカちゃん、さきちゃんと近況報告と金曜日の座組の相談
二セットで弁護士先生は帰られて、帰りしなに「またまた近況を楽しみにしてますよ」と
言ってくれた。「金曜、座組があるみたいなその辺も、またネタ用意しといてくれたら、
来週も楽しめますね」というようなことを、あの人らしい穏やかな言い方で残して帰らはる。
博子としては、ああ、やっぱり月曜日のこの時間は整うなあと改めて思う。
なんか、東京の社長たちの大きい流れも、税理士先生の地場の座組も、全部一回この人に
話して言語化すると、頭の中でちゃんと整理される。
それがありがたいなと思いながら、店の中に戻っていく。
フリーの卓に戻ると、アルカちゃんとさきちゃんがいて、「お疲れさん」と軽く手を振ってくれる。
二人とも、さっきまで別の卓についてたのに、戻ってきた博子の顔を見るなり、すぐに
弁護士先生の話になる。
「いや、弁護士先生、いい人そうやね。」
博子は、その言い方にすぐ頷く。
「いや、めちゃめちゃ助かってる。」
「そんな感じするわ。」
「東京の座組の話とかも、めっちゃさせてもらってるし。私も復習ができるっていうのもあるし、
先生にそれを面白おかしく伝えることで、自分のやってることは間違ってるんじゃないなって
いうのもわかるし。」
アルカちゃんが、そこで「なるほどな」と言う。
博子はそのまま続ける。
「で、それを先生もちゃんと受け入れてくれてる感じがあるから、すごい助かってるし。
月曜日、めっちゃ整うねん。」
さきちゃんが、しみじみした感じで返す。
「それはお客さんに恵まれてるな。」
「ほんまにな。」
博子もそこは素直にそう思う。
東京の社長たちみたいに大きく動く人たちがいて、地場の税理士先生みたいに組み替えを
考える人がいて、弁護士先生みたいに観覧席で受け止めてくれる人がいる。
それぞれ役割が違う。
それがたまたま今、うまく噛み合ってる感じがあった。
で、そこで自然と話は金曜日のことになる。
「で、結局金曜日どうするって話になるやけど。」
博子がそう切り出すと、二人ともすぐに仕事モードになる。
「一応、山崎のウイスキー工場に行くで、というところやから。」
「うん。」
「大阪待ち合わせで、山崎まで下道で行くしかないよね。」
「そうやな。」
「で、帰りに同伴するけど、私、西中島でやるよ。」
それを聞いて、アルカちゃんが少し興味ありそうな顔になる。
「西中島?」
「うん。西中島で、夜の七時までやってる昼飲みの料理屋さんがあるから、そこ考えてる。」
「へえ。」
「で、二人どうする?」
そう聞かれると、博子ちゃんは少し考えながら、「私はまだちゃんと考えてなくて」と返す。
アルカちゃんも似たような感じやった。
だから博子が、すぐにいくつか球を投げる。
「ほな、一つはあの、ねぎ焼きのやまもとの本店、十三行ったら?」
「おお。」
「もう一つは、西中島、結構焼肉有名やから。一笑っていう、北新地にもあんねんけど、
そこの西中島店って、立地の問題もあるけど、新地に比べたら焼肉安いから。そことかどう?」
二人とも、その瞬間に食いつく。こういう具体案が出ると、やっぱり動きやすい。
「いや、もう私はそれに全乗りよ。」
先にそう言ったのはサキちゃんやった。
博子は笑う。
「どっちに?」
「焼肉。一笑、なんか響きだけで勝ちやん。」
「まあ、確かに。」
そこでアルカちゃんが言う。
「じゃあ私は、ねぎ焼きのやまもと行こうかな。」
「ただね。」
博子はそこはすぐ釘を刺す。
「めっちゃ混んでると思うで。」
「やっぱり?」
「あと十三のキャバ嬢界隈も、あの辺、同伴ですぐ使いよるから。その辺
ちゃんと押さえとかんとやばいで。」
「うわ。」
「だから、予約とか並び時間とか、その辺の読みちゃんと入れとかなあかん。」
アルカちゃんは、すぐに真面目な返しをする。
「そこはちゃんとしとくわ。」
「一笑も同じくやで。」
博子は今度サキちゃんの方を見る。
「あの、早い時間、多分お客さん来たら埋まるから。カウンターは多分空いてると思うんだけどね。」
さきちゃんはそれを聞いて、逆にちょっと安心したように笑う。
「まあ、そうやな。カウンター得意やしな、私。」
「それやったらええやん。」
「うん。」
そんなふうに、それぞれ自分の担当を埋めにいく感じになる。
山崎のウイスキー工場という共通の軸があって、そのあと三者三様で別れて、
また店前同伴に戻す。流れとしてはかなりきれいやけど、その分だけ個別の店選びは
ちゃんとせなあかん。そこをこうやって情報共有しながら詰めていけるのは、
三人ともやっぱり楽やった。
「最悪、お互い店のシェアし合いながらでええしな。」
博子がそう言うと、二人も頷く。
「うん。」
「うまい具合に回してこうや。」
「ほんまそれ。」
で、そこまで話がまとまったら、あとはまたそれぞれの持ち場に戻るしかない。
フリーの卓もあるし、まだ月曜の夜は終わってへん。
三人とも、それぞれ軽く「了解」と目で合図し合って、またばらけていく。
博子は、ああ、こうやって個別の店まで相談できるようになってきたの、だいぶええなと思う。
前なら、全部自分で持って、全部自分で探して、全部自分で調整してた。
今は、ちゃんとそれぞれが自分の持ち場を持ってる。
その感じが、月曜日の終わりとしてはかなりよかった。
そういうわけで、三人はそれぞれまたフリーの卓へ散っていく。
金曜日に向けて、少しずつ、でも確実に座組が形になっていく。
そんな月曜の夜やった。




