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東京イキリ社長達。帰りの新幹線で土日を振り返りながら大阪京都堪能できて気持ち良く帰路につく

新大阪の新幹線のホームに着いたところで、三人ともなんとなく立ち止まってしまう。

まだ帰る前やのに、もう「今日は良かったぞ」という空気が全員から出ていた。

昨日の京都からの流れ、今日の梅田地下迷宮の探検、その両方が思った以上にちゃんと

ハマっていて、単なる飲み遊びの一泊二日とは、少し違う手応えが残っていたのである。

イキリ社長が、荷物を持ち直しながらまず言うた。

「いやいや、今日は良かったぞ。」

「良かったな。」

「ほんまやな。」

で、そこでまたすぐに話が博子の方に向かう。

「いやいや、博子ちゃんに感謝やな。」

それに対して、別の社長がちょっと笑いながら返す。

「まあ、博子ちゃんにも感謝やけど。」

「うん。」

「あれちゃうか。遊び心を持った俺らも自分で自分ら褒めなあかんのちゃうか。」

その言い方に、三人とも笑う。でも、確かにその通りでもある。

大阪まで来て、しかも日曜日に、わざわざ第一ビルから第四ビルの地下迷宮を探検しようなんて

発想になるのは、だいぶ普通ではない。しかもそれを、面白がって実際にやってしまってる。

その意味では、博子にアテられてるのもあるけど、同時に自分らもちゃんと動いたんや、

という感覚があった。

「確かにそうや。」

「まあ、あれやな。」

「大阪まで来て、あんな地下の魔境に行こうって考える俺らも、なかなかあれやな。」

「博子ちゃんに毒されてるよな。」

そう言いながらも、顔はみんな笑っている。

毒されてる、という言い方をしてるけど、内心ではそれをかなり気に入っているのがわかる。

土曜日は土曜日で、かなり洗練された時間やった。

京都でええ酒を飲み、動線も綺麗で、最後にオーパスワンまで開けて、店でも気持ちよく締まった。

それに対して日曜日は、あのごっちゃりした地下の感じ。

安い。雑多。でも、ちゃんと美味くて、ちゃんと面白い。

その両方を、この土日で一気に味わえたのが大きかった。

「土曜日は土曜日で洗練された時間やったしな。」

「うん。」

「日曜日は日曜日で、このごっちゃりした感じのお得な感じ。」

「そうそう。」

「もうちょっと東京で飲むの、やめようかなって思うぐらいやわ、ほんまに。」

そこまで言うと、横の社長が吹き出す。

「言い過ぎやろ。」

「いや、でもほんまにそれぐらい思ったわ。」

「場所変えたら、それだけ価値観変わるな。」

「特に東京と東京以外は。」

その言葉に、三人とも妙に納得する。

東京の中で完結してると、どうしても価値観が閉じてくる。

高い店。話題の店。ヒエラルキー。

誰が上で、誰が人気で、どこが正解で。

でも大阪京都に来たら、その正解が少し揺れる。

しかも揺れるだけじゃなくて、ちゃんと面白い方に崩れる。

それが、今回かなり気持ちよかったのである。

「このノリでいったらさ。」

イキリ社長が、ふと思いついたように言う。

「博多も北海道も、行ったら多分楽しいぞ。」

「それはあるな。」

「来週はだから、博子ちゃんとこ行かずに、なんか北海道か、九州まで新幹線……いや飛行機で

行ってまおうか。」

「どんどんアグレッシブになってくるな。」

「いや、でもありやろ。」

こんな感じで、話はどんどん大きくなっていく。

博子がきっかけで、大阪京都の遊び方に芽が開いた。

そしたら今度は、その発想で他の土地も見たくなる。

その広がり方が、まさに今の三人のテンションを表していた。

「気持ちが高く入れられるから、俺らもテンション高く入れるからな。」

「そうやねん。」

「多分あれやで。きっかけは博子ちゃんやけども、いろんなもの見せてもらって、楽しかったな。」

「うん。」

「こういうの、ええよな。」

そんなことを言いながら、新幹線に乗り込む。

席について、荷物を上げて、やっと一息つく。ホームでわちゃわちゃ喋ってた熱が、

今度は少し静かな満足感に変わる。で、そこからようやく現実的な話も出てくる。

「で、そうやな。」

イキリ社長が、シートに深く座りながら言う。

「この土日で、土曜日の分ぐらいは包んだらなあかんな。」

「それはそうやな。」

「あと、あれやな。早めに言うたら、まあまあ早帰りさせてもたから、

その分の埋め合わせぐらいはちょっと考えたらなあかんなと思って。」

「うん。」

「評価を知らせるというところと、またメールちょっと考えようか。」

「そうやな。」

昨日は昨日でオーパスワンも入れてる。でもそれはそれ。

土曜一日の流れに対する評価として、ちゃんともう一声返したい気持ちもある。

しかも今日は日曜を放してもらって、自分ら三人で遊んだ。

そこまで含めて、この座組が気持ちよく回ってるんやから、返すところは返したい。

そんな話をしながら、新幹線の中でだらだら過ごす。

缶コーヒーを開けるやつもいれば、まだ少し酒が残ってるやつもいる。

窓の外の景色は流れていくけど、三人とも、もうあまり景色を見ていない。

頭の中で反芻してるのは、この土日の流れそのものや。

京都の九百八十円。サンダーバード。オーパスワン。

第一ビルから第四ビル。ハイボール五十円。夢ゴリラ。

そして、その全部をつなげた博子の妙な感覚。

「いやー。」

幹事社長が、最後に小さく笑う。

「おもろかったな、ほんま。」

「おもろかった。」

「またなんか、変わったな。」

そう言いながら、東京イキり社長の三人組は、少し眠たそうな、でもかなり満たされた顔で、

新幹線の時間を過ごしていく。

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