同伴で店に向かう中の京都大阪間のサンダーバードの中でダラダラ話す六人。同伴までの道のりが男性陣にとっては苦痛なんよ
京都から大阪に帰るサンダーバードの道中、ガラガラの車内に六人が乗り込んで、
酔いごなしにバラバラ喋りだす。
京都駅のホームから乗り込んで、座席を適当に固めると、やっぱりこの
「移動まで込みで遊び」になってる感じが、東京の社長たちにはかなり新鮮らしかった。
新幹線やと早いけど味気ない。下道で行くと時間がかかりすぎる。
そこでサンダーバードという発想が、妙に効いている。
「なんか、あれやな。」
イキリ社長が、少し酔いの回った声で言う。
「京都大阪をこう動くにしたって、新幹線で十分やから大して何とも思わへんし。
下道で行ったらめっちゃ混んでるやん。」
「そうですね。」
「やけど、このサンダーバードに乗るっていう発想が、もうすでに博子ちゃんに当てられてるわ。」
博子は、すぐに笑って返す。
「なんでなんですか。たまたまですよ。」
「いやいや、たまたまでそこ選ばんて。」
「選びますよ。」
「選ばん。」
そんな軽口が飛びながらも、社長たちはほんまにこの流れを面白がっていた。
京都で酒を飲んで、外気を吸って、ホームを歩いて、電車に乗る。
その過程が全部「まだ続いてる」感じやからや。
ただの移動やなくて、まだ今日の一部みたいになってる。
「普通な。」
別の社長が、少し真面目な顔で言う。
「同伴で店前同伴に行くとなると、俺ら男陣からしたら、刑務所に連れてかれるような感じに
なるわけよ。」
博子がすぐに吹き出す。
「何その例え。」
「いや、ほんまやって。同伴の店行くまでは楽しいねん。けどその後は、もう金も払わなあかん、
シャンパンも下ろさなあかんし、なんかその女性のテリトリーに入っていく感じ。」
「吸い尽くされるイメージやねん。」
「ひどい言い方。」
「でも、わかるやろ?」
博子は、ちょっと笑いながら首を振る。
「まあ、言いたいことはわかります。」
イキリ社長が、そこにさらに雑な例えを足す。
「なんか、注射針入れるまでのところの、子どもあやすみたいな感じやな。」
「どんな例えしてるんですか。」
博子があきれた顔をすると、後ろで社長たちが笑う。
博子もすかさず返す。
「でも最近の注射針、めちゃめちゃ細いですよ。」
「いや、そこちゃうねん!」
そこでまたどっと笑いが起こる。
こういう変な例えで遊べるぐらい、空気がだいぶ柔らかくなってるのがわかる。
社長達としては、「店に連れていかれる」という受け身の感覚が、今日はかなり薄い。
むしろ、自分たちで移動して、自分たちで笑って、その流れで店へ戻っていく。
そこが、かなり気持ちいいらしかった。
一方で、女の子たちは、店の中に入ってからいったん着替えに戻ってきて三人で固まる。
さきちゃんが、ちょっと嬉しそうに言う。
「今日ちょっと感じいいな。」
アルカちゃんもすぐ頷く。
「空気いいね。」
博子も、そこは素直に頷く。
「やっぱり日本酒の九百八十円、効いたな。」
「効いたよな。」
「博子ちゃん、あれまた私、別の人で使っていい?」
アルカちゃんがそう言うと、ヒロコが笑う。
「全然使ってええよ。」
「この流れ、いいよね。」
「いい。」
三人とも、ちょっとテンションが上がっている。
自分たちも同じ卓で体験したからこそ、あの店の“強さ”がようやく手触りでわかった感じがある。
ただ安いだけじゃない。
酒の入り口としてえぐいし、当てもちゃんとしてるし、何より社長たちのテンションの
上がり方がわかりやすい。それが大きかった。
一方で、男性陣は男性陣で盛り上がっていた。
「いやいやいや。」
「ほんま、あの店はやられたな。」
「何回でも行きたいぞ、あれ。」
「今度なんかまた接待する時に、俺も使おうかな。」
「わかる。」
「そんな、札束で殴るような、なんかどこぞの店での接待よりも、ああいうところで
ええ酒飲んでキャッキャやってる方が楽しかったりするやんな。」
その話で、また三人とも盛り上がる。
東京の遊び方を知ってるからこそ、あの“ズレ”が面白い。
高ければいい、派手ならいい、ではない。
その感覚が、いまこの三人の中で少しずつ変わってきてる。
それが、自分たちでもおかしくてしょうがないのだ。
そんなふうに男性陣が盛り上がってるところに、女の子たち三人が戻ってくる。
さきちゃんが、ちょっといたずらっぽく聞く。
「なんか悪口でも言ってたんですか?」
するとイキリ社長が、すぐに首を振る。
「いやいや。」
「悪口ちゃうで。」
「あの店良かったな、って。」
「博子ちゃんの座組いいな、って話やで。」
その一言に、アルカちゃんがすぐ反応する。
「また博子ちゃんですか。」
「いやいやいや、違う違う違う。」
社長たちも慌てて笑う。
「ちゃうねん。」
「みんなで楽しく喋ろうや、って話や。」
博子も、そこで少しだけ流れを整えるように言う。
「でも価値観が、大阪のこの店でガラッと変わったのは確かやで、って話はしてはったんですよ。」
「それはそうやな。」
「うん。」
そこから先は、もう一段マイルドに話が進んでいく。
男側だけが熱くなる感じでもなく、女側だけが引く感じでもなく、みんなで「そうやな」「たしかに」「あれ良かったな」と共有できる温度に落ち着く。
サンダーバードのガラガラの車内が、まるで二次会の延長みたいになる。
京都で飲んで、大阪へ戻る電車の中で、六人がまだ笑ってる。
この“帰り道まで楽しい”というのが、やっぱり博子の座組の強さなんやろなと、
みんなうっすら感じていた。




