税理士先生がメンツを増やしたいと話したことについて博子がいろいろ聞き出す。磁場の経営者仲間のゴルフと別枠で仲良くなりたい集まりが作りたい
博子は少し身を乗り出して聞いた。
「で、税理士先生は、どの方と次仲良くなりたいんですか?」
税理士先生は、ちょっと笑いながら首を振る。
「まさか二、三人増やすとかではないですよね、って顔してるな。」
「してます。」
「いや、そんなことはないよ。一人増やすだけやで。」
博子は、その返事に少しだけ安心した顔になる。
一気に二人三人増やされると、こっちの座組みも店の中の空気も、一気に難しくなる。
一人追加、ぐらいならまだ組み替えの余地はある。
「弁護士先生とは仲良くできそうな感じがするし。」
「うん。」
「この遊びもまあまあ楽しくしてくれてるから。」
「そうですね。」
「で、保険会社のやつは、あるかちゃんやろ。」
博子はそこで小さく頷く。
「はい。」
「で、弁護士先生はさきちゃんやろ。」
「それもそう。」
「博子ちゃんが三人でよく回してるっていうのは知ってるけども。
まあ、もう一人ぐらい、別にあれやで、嫌やったら嫌でいいねんけども。」
税理士先生は、そこで少しだけ声を落として言う。
「お試しで、社労士の先生かなと。」
博子は、その名前を聞いて、頭の中で一回ざっと座組みを並べる。
弁護士先生。
税理士先生。
保険会社の人。
さきちゃん、アルカちゃん、博子。
そこに社労士の先生。
なるほど、意図はわかるなと思う。
「まあ、だからトータルでうちも、地場でやってる関係で。」
税理士先生は、少し真面目な顔になる。
「経営者会とかでも時々顔合わせたりすんねんけど。
なんかその辺のところも、ちょっとマイルドにやっていきたいので。」
「はいはい。」
「ゴルフはまあまあ、だいたいやるけども、人数でやるし。なんかこういうちっちゃい箱
みたいな感じで、座組持ってたら、こっちはこっちで接待したいやつが出て、
いい感じに遊べる、みたいな感じになるやん。」
博子は、その言い方に「わかる」と思いながら聞いている。
大きい場ではなく、小さい場。
ちゃんと顔が見える人数で、仕事にも遊びにも少し効く関係を作っていく。
その発想は、まさに税理士先生っぽかった。
「どんどん増やしていけたらいいけども、それは博子ちゃんの負担になるから。」
「はい。」
「メンツはそらやっぱり、十人二十人って話ではないけども。」
「はい。」
「グループで十人ぐらいにして。今回、俺が仲良くしたい奴を何人か連れてく、
みたいな感じにしたいなと。」
そこで博子は、少し考えながら言う。
「まあ、四がマックスかなって。」
「四。」
「うん。サンダーバード見てもらったらわかるけども、四人席二つぐらいが
やっぱりちょうどちゃいますと。」
税理士先生が「なるほどな」と頷く。
博子はそのまま続ける。
「ゴルフだって、結局四人で回るじゃないですか。」
「まあ、確かにな。」
「それやったら、ここで楽しんだメンツで、また四人ゴルフで行ったら、
ゴルフの中でもこの話できるしな。」
税理士先生が、少し嬉しそうに笑う。
「それぐらいがええんちゃいます?」
「ええと思います。」
博子は、ちょっといたずらっぽく付け加える。
「ドラクエだって、パーティー四人ですよ。」
瑞美先生はそこで声を出して笑った。
「ああ、納得納得。」
「でしょう。」
「そりゃ堀井先生も、そらそう考えてるよな、みたいな。」
「堀井先生関係ないですけどね。」
二人で笑う。
でも、その“パーティー四人”という感覚は、わりと本質やった。
多すぎると回らない。少なすぎると広がらない。
四人ぐらいが、一番役割が立ちやすくて、会話も散らばりすぎない。
そんな話をしているうちに、もう一時間ぐらい経ってきていた。
店の中の時間としては、十分濃い。でも、税理士先生はまだ少し先の話をしたそうやった。
「で、言うたら。」
「うん。」
「もう一人は、ちょっと見繕おうというか。」
博子は、その空気を受けて、少し現実的な方に戻す。
「だから、この座組で回せるほどの候補じゃないにしても。愛嬌のある子がいいですかね。」
「愛嬌。」
「うん。要は、しゃべりを円滑にするのが目的やから、やっぱある程度しゃべれる子がええ、と。」
税理士先生は、そこにすぐ頷く。
「それはそうや。」
「で、まあ、強いて言うなら。」
博子は、少し考えながら続ける。
「ボケができるとか。ちょっとビジネスライクなことができる大学生とかがいたら、
それは嬉しいけども。」
税理士先生が、すぐに苦笑いする。
「なかなか贅沢言うてるわ俺。」
博子も笑う。
「それはちょっとね。」「贅沢言い過ぎですよ、とは思うんですけどね。」
「まあ、そうやな。」
「でも、ちょっとできそうな子を、別の女の子たちにも声かけて、見てみます。」
税理士先生は、その返事に安心したように頷いた。
「で、今回はちょっと無理ですけども。」
博子が、最後に整理する。
「ゆくゆくは四人パーティーで、四・四で回せたらええな、っていうところなんですね。」
「そうそう。」
「了解です。」
そこまで聞いて、博子は自分の中でまた一個、頭をカスタマイズせなあかんなと思った。
今までの三人座組に、一人足した時の回し方。
誰をどこに置くか。誰を緩衝材にするか。
誰を主役にしすぎないか。
それを考えるだけで、やることは増える。
でも、増えるからこそ、次の段階に行く感じもあった。
「また仕事増えてしまいますね。」
博子が、半分冗談みたいに言うと、瑞美先生が笑う。
「そこを考えるの、お前好きやろ。」
「まあ、嫌いではないです。」
「やろな。」
そんな感じで、その一時間は終わっていった。
大きな事件があったわけではない。
でも、次の座組の形が少し見えて、博子の中でもまた新しい引き出しを増やさなあかんな、
という感覚が残った。
そういう意味で、ちゃんと実りのある合計二時間だった。




