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金曜日、会計士先生との同伴。店内での会話もスムーズ。今安定しているメンバーとは外遊び含め丁寧にやりたい

お店に来ていただいて、会計士先生には二セットほど、ゆっくり飲んでもらう流れになった。

同伴の店である程度しゃべってきているから、もう店に入ってからは、

変に気負わずに続きの話ができる。

この感じが、博子としては結構ありがたいなと思っていた。

外で一度ほぐしてから店に入ると、店の二時間も“仕事”っぽくなりすぎずに回せる。

そこが、同伴のええところやなと、最近は改めて思っている。

「だから大阪ではね。」

博子が、グラスを持ちながら少し整理するように言う。

「月曜日が弁護士先生、水曜日がおじいちゃん。ここはもう固定なんですと。」

会計士先生が、「なるほど」と頷く。

「で、金曜日が会計士先生。」

「はい。」

「あと、座組を大阪で回したいっていう税理士先生がいらっしゃって、

その方は月一で座組を回すのと、その前の打ち合わせみたいな形で、

同伴ではないにしてもちょっと来られる、みたいな感じで回ってるので。」

「おお。」

「金曜日はちょっと入れ違いになったりするんですけども。」

会計士先生は、そこを聞いて少し嬉しそうに笑った。

「ちゃんと枠の中に入れてもらってるんですね。」

博子も笑う。

「そうですね。でも大阪は大阪で丁寧にやりたい中で、私の中では、このあたりの大阪の人たちと、

お店の中だけでは話し足りないことってあるじゃないですか。」

「ありますね。」

「それを、言うたら外遊びって言ったらあれですけど。」

博子はそこで少し苦笑いした。

「私、それでちょっとごちゃごちゃ揉めましたけども。」

会計士先生が「ああ」と察したような顔をする。

博子は、そのまま続ける。

「でも今、こう固定で来てくれてる人たちとは、多分揉めないなと思ってて。だから、

ちょっとお茶したりとか、なんかそういうのは、ちょこちょこ入れさせてもらいたいなと思って。」

その一言を聞いた瞬間、会計士先生の顔がぱっと明るくなった。

「それ、めっちゃ嬉しいっす。」

「ほんまですか。」

「いや、別に外遊びがメインではないです。同伴してこうやって来てるだけでも、

ゆっくり喋れるからいいけども。それは、あるとないとでは、やっぱあった方が僕も嬉しいですし。」

博子は、その返しにちょっとほっとしたように笑う。

やっぱり、こういう“無理はせえへんけど、機会があったら嬉しい”という温度感が、

自分にはちょうどいい。押しつけでもなく、受け身すぎでもなく。

会計士先生のそういうところは、ほんまにありがたいなと思う。

「どんなところで。」

会計士先生が、少し興味深そうに聞いてくる。

「言うたら、大中小じゃないですけども。どっか酒蔵の見学とか、ウイスキー……ウイスキーは

一緒に行きましたね。やけど、なんかそういう中で、ちょっとだけできるのと、

半日ぐらい使うのと、みたいなのあって。」

博子は、それを聞きながら頷く。

「そうですね。予定を組みながら、ちょこちょこできたらなと思って。」

「めっちゃ嬉しいっす。」

先生は、ほんまに素直にそう言う。

博子は、こういうところで何度も「嬉しい」と言ってくれるのが、妙にありがたかった。

別に大げさに盛り上げてるわけやない。ちゃんと、言葉にして返してくれる。

そこが、この人のええところやなと思う。

「まあ、あとは東京の人のさばきをどうするかかな。」

博子が少し苦笑い混じりに言う。

「日曜日に関してはねと。やけど、火曜木曜やからね、というところで。」

会計士先生は、その言い方にちょっと笑う。

「そこは難しいでしょうね。」

「難しいです。」

「でも、全然僕も無理しないんで。ダラダラ来てるんで、また言うてください。」

その一言に、博子は思わず少し大きめに笑った。

「先生、めっちゃいい人。」

「何ですか急に。」

「いや、別にあれですよ、都合のいい人というわけではなくて。」

「はい。」

「その心持ちが、すごいこっちとしてはありがたいです。」

会計士先生は、そこで少しだけ照れくさそうに笑う。

「まあ、僕は本当に無理させたくないんで。」

「ありがたいですわ。」

博子は、少し本音を混ぜる。

「あれこれしてこいっていう人は、もうだいぶ減りましたけども。東京の人だけは、

やっぱりいろいろ言ってくるんでね。」

会計士先生は、すぐに頷いた。

「そうでしょうね。」

「でしょう。」

「あの人ら、わざわざ新幹線乗って泊まりに来てるから。なんか遊び気分で、いろいろ

言ってくるでしょうしね。」

「まさに。」

博子は、その言い方にちょっと笑いながらも深く頷く。

「なんか、そこまで回すんかい、みたいなこともありますし。」

「そりゃそうや。」

「こっちとしては、もうちょっと余白残したいのに、全部見せろみたいな熱量で来る時もあるんで。」

「うん。」

「まあ、それはそれでありがたいんですけどね。」

「でも、しんどいはしんどいでしょう。」

「しんどいです。」

二人で、そこで少し笑う。

多少の悪口というか、多少の愚痴というか。

でも、そういうのをちょっと混ぜながら喋れるのも、会計士先生との時間のええところやった。

相手を下げるためやなく、温度感の違いを一緒に面白がれる。

それが、博子にとっては結構気楽やった。

「でも、そういう意味では。」

会計士先生が、最後にしみじみと言う。

「大阪の枠をちゃんと大事にしてくれてるっていうのは、僕は普通に嬉しいですよ。」

博子は、その言葉に少しだけやわらかい顔になる。

「ありがとうございます。そこは、ほんまに最近思い直してるところなんで。」

「なら良かったです。」

そうやって、二時間ほど、ぐだぐだと、でも気持ちよく盛り上がる。

料理も酒もええ感じに進んで、会話も変に途切れず、ちょうどいいテンポで流れていく。

最後に会計士先生が帰られる頃には、博子の方も「今日はちゃんと大阪の人と向き合えたな」

という感覚があった。東京の派手な流れとはまた違う、地に足のついた二時間。

それが、今の博子には、ちゃんと必要なものだった。

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