東京イキリ社長達の電話が終わり、アルカちゃん、さきちゃんに土曜日3人来ること、同伴の店について連携する博子。
博子は卓に戻ると、ちょうどさきちゃんとアルカちゃんがいて、軽く手を上げながら
「ちょっと今、東京イキリ社長から電話かかってきたわ」と切り出した。
二人ともその瞬間に顔を上げる。
「え、もう?」
「何やったん?」
そんな空気である。
博子は、さっきの電話の内容をそのままざっくり伝える。
「今、他の大阪に来た社長二人と一緒に飲んでて、大阪また来たいって言うてる。
で、ちょっと調整しますって返したんやけど、どうする?って。」
すると、アルカちゃんが即答する。
「いやいや、二人とも全然オッケーやで。」
さきちゃんもすぐ頷く。
「先週の今週で返してきてくれるって、すごいな。」
博子も苦笑いする。
「やろ。しかも社長、アルカちゃん、さきちゃん二人連れてきてくれるやろ、みたいな
テンションやった。」
そこに、ちょっとだけ現実的な話を差し込む。
「やけどな、ごめんやけど。日曜日はアフターせずに、第一ビルから第四ビルで三人で
飲むって言ってるから、アフターのお手当はちょっと期待できへんと思う。
それは申し訳ないっていう感じ。」
さきちゃんが、そこで笑う。
「いや、それはええやろ。前回結構もらったし。」
アルカちゃんも続ける。
「今回、卓でちゃんと落としてもらったらええんちゃう?」
「やんな。」
博子も、そこは素直に頷く。
自分が変な球を投げた結果、三人で魔境探検に行こうみたいな話になってる。
そこはちょっと責任も感じるけど、でもそれも含めて“遊びの深さ”やと思ってる。
全部をこっちが抱え込むより、その方が次に繋がる。
「で、同伴の店なんやけど。」
博子が話を先に進める。
「京都の、九百八十円で日本酒飲み比べできる店。前、あれが刺さったから、
“それを一回みんなで行かせろ”みたいな感じで言ってるから、そこになりそうなんやけど。」
「うん。」
「もしあかんかったら、また別の店も探す。一旦それ、ちょっと予約調整してみていい?」
「全然いいよ。」
「で、あかんかったら、古民家風の店あるから、そっちちょっと聞こうと思ってんねん。」
そこまで聞いて、アルカちゃんが呆れたように笑う。
「博子ちゃん、どんだけ引き出しあんの?」
博子も笑いながら返す。
「いや、もうこういう時のために貯めとかなあかんねん。」
さきちゃんが手をひらひらさせる。
「もう全部任せるわ。」
「私らは土曜日、そしたらその流れで三人で大阪から京都出ていくか。もしくは、
大阪の方で店があるんやったら、そっち流れる感じにしようってことやな。」
「そうそう。」
そういう形で、ざっくり話はまとまる。博子はそのまま幹事社長の方に連絡を返す。
「一旦、待っといてください。調整します。」
向こうからはすぐに、半分酔ったような勢いのある返事が来る。
「オッシャ了解。ほんま待ってるよん。」
博子はそれを見て、うまく落とせたなと少しほっとする。
横でさきちゃんとアルカちゃんも画面を覗き込んで、「うわ、ほんまに待ってるやん」と笑う。
そのあと、アルカちゃんが少し真面目な声で言う。
「でも、博子ちゃん、さきちゃんと私にありがとうな。そうやってわざわざパスまで
投げてもろてるわけやろ。」
「いや、そこはもうチームやし。」
「第一から第四ビルの遊びも、結局三人で遊べるようにってことで、こっちにも
流してくれてるんやろって。」
博子は、そこでちょっと考えてから言う。
「まあ、それも半分ある。」
「半分?」
「もう半分は、私一人に来られても、結局のところ捌ききれへんかったりさ。熱上がりすぎたりさ。
そういうところもあるやん。」
二人とも、それには素直に頷く。
「社長は社長で、多分気まずいと思うねん。やっぱり帰りの電車の時間、
あれを三人でわちゃわちゃやるのが、多分楽しいんちゃうかなっていうパズルのピースがあるから。」
さきちゃんが「そうなんよな」と言う。
「一人で来て一人で帰ると、盛り上がってても、最後ちょっと冷静になったりするし。」
「そうそう。」
「三人で来て、三人で帰って、車内で“あれ良かったな、これ良かったな”って言うのが、
結局次に繋がるんやと思う。」
アルカちゃんが、そこでしみじみと言う。
「なるほどなあ。博子ちゃん、やっぱりセンスすごいわ。」
博子は、少しだけ照れくさそうに笑う。
「いや、そこまで大したもんでもないけど。」
「いやいや、そこまで見てるのがすごいねん。」
「でもそうは言っても。」
博子は、ちょっと現実の方を見る。
「分かってるやろ?東京三人社長も、なんやかんや言うてそろそろ来そうやから。」
「それはある。」
「今週来るかは分からんけども。適当に私たちが出した宿題をこなしながら、
待っといてください、みたいな形で返さなあかんかもね。」
さきちゃんが、そこにすぐ反応する。
「あ、それもそうやな。」
アルカちゃんも笑う。
「バランスいいよね、ほんま。」
「一個のグループに寄りすぎたら、また変な温度差出るし。」
「そうやねん。」
「こっちはこっちで火を残しながら、向こうも向こうでちょっと焦らしながら、って感じか。」
博子は、そこで少しだけ肩の力を抜いた。
「まあ、そんな感じ。全部ちゃんと回るかは分からんけど、とりあえず今は火を消さんことの
方が大事かなって。」
二人も、その言い方には納得していた。
結局、今起きてることは派手やけど、全部が確定してるわけではない。
東京イキリ社長たちも、若手三人組も、それぞれ別の熱量で動いてる。
その中で、誰か一人だけ突出しすぎず、でも火は消さずに保つ。それが今の博子たちのやり方やった。
「ほな、また土曜楽しみにしてくね。」
「うん。」
「でも、来るグループが増えたら、また引き出し勝負やな。」
「それはそう。」
そんなことを言いながら、三人は軽く笑って、それぞれまたフリーの卓に散っていく。
今夜もまだ完全には終わってへん。
でも、ちゃんと次の話を握った上で散れるのは、やっぱり大きかった。
博子は歩きながら、また一個引き出しを使うことになるなと思い、さきちゃんと
アルカちゃんは、自分たちももうちょっと何か仕込みを増やさなあかんなと思いながら、
それぞれの持ち場に戻っていった。




