おじいちゃんをお見送りして落ち着いていたら東京イキリ社長から電話。社長三人で週末遊びに行ってええか?
博子は弁護士先生を見送りしてから、宅に戻って少しゆっくりしていた。
今日は同伴もきれいに終わったし、店の中でもそれなりに喋れたし、あとは流れで
回すだけかなというところで、ちょっと肩の力を抜いていたのである。
そんな時に、スマホが震える。
見ると、東京イキリ社長から電話がかかってきていた。
「お、どうしたかな。」
そう思いながら出ると、向こうからちょっと賑やかな空気が伝わってくる。
博子はすぐに笑って言った。
「昨日も電話いただきましたけど、どうしました?」
すると、イキリ社長が、なんかちょっと浮ついた声で言う。
「今な、ちょっとあれやねん。大阪に一緒に行った社長さんらと飲んでてな。」
「はいはい。」
「で、今スピーカーになってて。」
博子はその瞬間に吹き出した。
「え、何してるんですか。」
向こうでは、もう一人の社長が「博子ちゃんや!」とか言いながら笑ってる声がする。
さらにもう一人が、半分酔っ払った感じで割って入ってきた。
「土曜日めっちゃあれやな、社長に接待したらしいな。」
博子は、スマホ越しにちょっと肩をすくめるみたいな顔になる。
「接待って言わんでくださいよ。」
「いや、なんか面白い話も聞いたで。」
「どこまで何が広がってるんですか。」
するとイキリ社長が、ちょっと得意げに言う。
「いや、話聞いたらな。今度行ったら梅田の魔境に探検ツアーのヒントもくれるらしいやん、
って話になって。」
そこで博子は、もう完全に笑ってしまう。
「どんだけ盛り上がってるんですか。」
向こうの社長たちも笑っている。
完全に酔っ払いのおっさん三人組が、大阪遠征の相談を始めている空気やった。
博子は、少しだけ冷静に戻して言う。
「全然あれですよ。日曜日、アフターなしやったら、アルカちゃんもさきちゃんも、
近くにいるんで、調整できるかもですよ。」
すると、スピーカーの向こうで「調整して調整して!」と二人がすぐ乗ってくる。
イキリ社長も、もう話がそのまま進んでいくのを楽しんでる感じやった。
「日曜日はな。」
社長が言う。
「ちょっと相手してもらわんで、勝手に遊びに行くから、その分のお手当ては回されへんけどさ。」
「いいですよいいですよ。」
「で、また、なんか組んでもろってもええけども、その辺の話もゆっくり聞きたいから、
とりあえず九百八十円で飲める店、ちょっと予約して、六人で行こうや。」
「六人?」
博子は、そこで少し現実的な計算を始める。
「同伴で行こうや、みたいな話になってるんや。」
「えー、六人いけるかな。」
向こうの二人の社長が「そこも含めて博子ちゃんに任せる!」「なんとかなるやろ!」とか
好き放題言ってる。博子は笑いながらも、ちゃんと仕事の顔になる。
「そこも含めてちょっと調整しますわ。」
「頼むわ。」
「で、そこあかんかったらあかんかったで、またちょっと見繕いますし。
ちょっと、待っといてもらえます?」
「待つ待つ。」
「とりあえず、また返事します。」
「頼むわ。」
そんな感じで電話を切る。
向こうのイキリ社長としては、かなり満足そうやった。
ヒロコも、スピーカー越しに三人のおっさんがきゃっきゃ言うてるのを聞いて、
ちょっと面白くなってしまっていた。
一方その頃、電話を切ったあとのイキリ社長たちは、かなりご機嫌である。
「どや。」
イキリ社長がちょっと得意げに言うと、他の二人がすぐ笑う。
「お前、完全に流れ作ったな。」
「やろ。」
「この流れで、また週末遊びに行こうと思ったら、もうちょっと木金頑張れるんちゃうか。」
「頑張れる頑張れる。」
そんな話になって、三人とも笑う。その笑い方が、なんかちょっと若い。
自分たちでも、それがちょっとおかしかったのか、一人が言う。
「いやいや、俺らまだ若いなあ。」
「ほんまやな。」
「いや、でもさ。」
別の社長がグラスを持ちながら言う。
「東京の遊び方に比べて、全然新鮮やし。日曜日、そのお手当て包まずにさ、普通に遊べるって、
なんか若くなったみたいで楽しいやんけ。」
その一言に、三人とも妙に納得する。
金を使うだけの遊びじゃない。女の子に全部組んでもらって終わるだけでもない。
自分たちで探検して、ちょっと迷って、変な店見つけて、笑って帰る。
それを大阪でやる。しかも、土曜はちゃんと接待されて、日曜はちょっと自分たちで遊ぶ。
その配分が、いまのこの三人には、妙にハマっていた。
「ま、それ含めてあれやな。」
イキリ社長が、最後にしみじみと言う。
「大阪、頑張らなあかんな。」
「何を頑張るねん。」
「通うのをや。」
「そこかい。」
また三人で笑う。
でも、その笑いの奥には、かなり本気で「また行く」が入っていた。
銀座でへこんで、大阪で立て直されて、今度は三人で探検に行く。
なんやそれ、と思いながらも、その“なんやそれ”が楽しい。そんな夜やった。




