表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/92

金曜日。同伴前の店調整に悩む博子

金曜日。今日は清掃会社の社長との同伴。夕方、時計を見ると17時半。

集合は18時過ぎを想定している。「……店、どうしよ」

 頭の中で候補をいくつか並べる。小籠包。中華。

 カジュアルで、軽くて、外しにくい。

「小籠包……ちゃうな」悪くはない。でも、今日は違う。

 社長は50代。派手なノリより、落ち着いた時間を好む人。

 この前の焼肉も、値段より“雰囲気”を喜んでくれた。

 じゃあ、何がいい。「……ふぐ?」一瞬、ふぐの文字が浮かぶ。

 季節は3月。まだ鍋が美味しい時期や。ふぐ鍋。白子。ひれ酒。

「……いや、ちゃう」悪くない。でも、これも少し重い。

 鍋は向かい合う時間が長い。会話が詰まると、逃げ場がない。

 それに、同伴の“入り”としては、少し気合が入りすぎる。

 今日は金曜日。この後、店にも行く。重すぎず、軽すぎず。

 酒の流れが自然で、食べるペースも会話に合わせられる店。「……和食やな」

 鍋じゃない。でも、騒がしくもない。カウンター。小鉢。季節の一品。

 社長は、こういうのが好きや。“うまいもんを、静かに食べる時間”。

 スマホを取り出して、店を探す。北新地の端。大通りから一本入ったところ。

 派手な看板はない。でも、料理の写真がちゃんとしてる。

「ここやな」電話をかける。「18時半、2名でお願いします」

 すんなり予約が取れる。金曜日にしては、ちょうどいい。

 社長にメッセージを送る。「18時半に新地で和食のお店、予約しました。

 落ち着いたところなので、ゆっくりできます☺️」

 少しして、返事が来る。「了解。そういう店の方がええわ。助かる」

 ……よし。服を選び直す。派手すぎない。でも、仕事着すぎない。

 今日は“営業”じゃない。でも、“ただのご飯”でもない。

 このバランスが、一番難しい。鏡を見ながら、深呼吸する。

 金曜日。同伴。店の前の時間。

 派手なことはしない。煽らない。流れを崩さない。

 ちゃんと、積み上げる夜にする。

 そう決めて、家を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ