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おじいちゃんとの同伴後半戦。東京イキリ社長達が大阪来そうな雰囲気だが、あえてアフターはせず魔境梅田第一ビルから第四ビルに放り込むと考えている博子。

おじいちゃんは、魚のかまをつつきながら、しみじみと博子の方を見て言うた。

「博子は、キャバ嬢の枠にとどまらずに、なんかいろいろやってるのがまた面白いわ。」

博子は、その言い方に少しだけ笑って肩をすくめる。

「別にそんなつもりはないけども。」

「うん。」

「キャバ嬢オンリーでは、なんかやってけへんかったから、そうやって無駄なことばっか

考えてるみたいな感じですよ。」

おじいちゃんは、その返しを聞いて、すぐに首を振る。

「いやいや、でもな。」

「何ですか。」

「それが、今、高所得者層にめちゃ刺さってるんやと思う。」

博子は、そこで少しだけ目を細めた。

おじいちゃんのこういう言い方は、雑なようでいて、意外と本質を突いてくることがある。

「多分な。」

おじいちゃんは、箸を置いて続ける。

「博子のやり方は、大阪のおっちゃん連中には刺さんかもしれん。

けど、もう遊ぶのに飽きた金持ち連中には刺さるんやと思う。面白いから。」

博子は、小さく頷く。

「それは、あるかもしれんね。」

「だから、刺し口がいいんや。結局、高単価の案件を取れてるっていうのは、

そういう話やと思うし。もうそこからぶれへん方がええ。」

「ぶれへん方がええですか。」

「変に下に降りたところで、多分安く買い叩かれるだけやから。」

その一言は、博子にも少し響いた。下に広げようと思えば広げられる。

でも、今の自分のやり方は、誰にでも刺さるものではない。

その代わり、刺さるところには深く刺さる。その感覚は、自分でもわかっていた。

「そこのところだけは気ぃつけや。」

「はいはい。」

「いや、ほんまやで。」

博子は、そこでちょっと笑う。

「なんか一通りおじ様社長達で今回の話ししたら、また大阪くるんちゃうかって。」

おじいちゃんは、満足そうに頷いた。

「そんな気がするやろ。」

「うん。他の女の子も話をしてて、その社長さんが一人で遊びに来てるのを、

ちょっと刺していって、ぐらぐら揺らしてるから、ひょっとしたら来るかもしれん。」

「それは来るやろな。」

「で、その時に。」

博子は、ちょっといたずらっぽい顔になる。

「次来た時は、アフターを大阪市内で、梅田の第一ビルから第四ビルを

探検してくださいっていうふうに私、投げてんのよ。」

おじいちゃんが、そこで思わず笑った。

「お前、なんかあれやな。」

「何ですか。」

「全然欲がないな。」

「どこがですか。」

「いや、そういうところ案内してやったら、またお手当て積んでくるんちゃうの?」

博子は、すぐに首を振った。

「いやいや、もらいすぎたらな、あれやねん。」

「何がや。」

「もらいすぎもそうやし、接待しすぎも私らしんどいやん。」

おじいちゃんが「なるほどな」と笑う。

博子は、そのまま続けた。

「で、多分もうそんなに言わんうちに、若手の三人の社長、来そうやから。」

「おお。」

「そこのところとの調整がな、私は。」

おじいちゃんは、そこで少し感心したように見る。

「そこまで見てんのか。」

「見てるよ。」

博子は、少し真面目な顔で言う。

「おじ様社長にも言ったんやけども。ジグソーパズルを一から十まで全部私が作ったら、

それ完成品買ってんのと一緒やから。どこかで飽きんねん。」

「ほう。」

「あれは、自分でピースを集めて、完成させるから楽しいっていうのがあるから。」

おじいちゃんが、そこで箸を止めたまま「なるほどな」と言う。

博子は、その反応を見てちょっと嬉しそうに話を続ける。

「だから、ちょろっと種まいて、半分ぐらいなんか出来上がってないものを、

揃える作業っていうのをした方が、遊びの深さが増すの。」

「深さ、な。」

「で、梅田の第一ビルから第四ビルで、ごっちゃりしてるけど。

サーチするのも大変やけど、その辺の美味しい店ぐらいは私も投げようと思ってて。」

「うん。」

「で、そこら辺は、はしごするだけで、男三人ではしごする方が楽しいっていうとこもあるやんか。」

おじいちゃんは、そこで声を出して笑った。

「それはそうや。」

「東京で、おしゃれなところで飲んでるのに、大阪ではそういうごっちゃりしたところで、

美味しいものがちょっと見つかって。帰り、新幹線でご機嫌さんで帰るっていう絵も、

悪くないかなと思って。」

おじいちゃんは、そこでとうとうあきれたように言う。

「お前、どこまで俯瞰して見てんねん。」

博子が笑う。

「毎日フレンチばっか食ってたら面白くないやろ。」

「うん。」

「お好み焼きも食わなあかんやろ。」

その一言に、おじいちゃんはもう大笑いした。

「そういうことやで、ってか。」

「そういうことやで。」

「お前は仙人か。」

「仙人ではない。」

「でも、その達観してる感じがええわ。」

その言葉に、博子は少しだけやわらかい顔になった。

何でも全部抱え込んで管理しようとすると、しんどくなる。

でも、ちょっと余白を残して、相手に探させる。

その方が、遊びも続くし、関係も続く。

そこを“達観してる感じ”と言われるのは、ちょっと嬉しかった。

「まあでも。」

博子が立ち上がりながら言う。

「そうやって、混ぜるねん、ネタを。」

「混ぜるねえ。」

「そう。同じことばっかりやってたら飽きるやろ。」

「なるほどな。」

「今日は魚食って、次はまた別のもん食って。で、東京では銀座でやられて、

大阪で魔境行って。そういう混ぜ方よ。」

おじいちゃんは、そこでしみじみと頷いた。

「お前、ほんま面白いな。」

「ありがとうございます。」

そんなことを言いながら、二人はまた店に向かう。

おじいちゃんは相変わらずご機嫌で、博子は相変わらず次の引き出しを考えている。

魚のかまも天ぷらもよかったけど、結局この人との時間は、こうやってだらだら喋ってる時が

一番よう回るなと、博子は少しだけ思っていた。

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