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弁護士先生との店内での会話。弁護士先生が博子の良さを分析。東京の社長層にはぐさぐさ刺さってるなwww

お店の中に入ってからも、二人の話はだらだらと続いていった。

刺身の店での流れが良かったぶん、変に気張らず、そのまま自然に続きが始まる感じやった。

先生の方もだいぶほぐれていて、グラスを手にしながら、少し考えるような顔で博子を見る。

「でも、やっぱりこう言ったら。」

「はい。」

「博子さんの魅力って、その、ロジカルロジカルでいってる人を、横っ面をパンって

叩くところなんやと思うんですよ。」

博子は、その言い方に思わず笑った。

「横っ面をパンって。」

「そう。しかも、向こうも多分、新しい発想とかを求めてるところがあると思うんです。」

「うん。」

「結局、銀座からこっちに来たってことは、その札束ヒエラルキーに飽きたというか。

大阪で一回遊んだことで、ちょっと洗脳が解けたんでしょうね。」

博子は、その表現に「洗脳はひどいな」と思いながらも、でも半分はそうかもしれへんな、とも思う。

先生は、そのまま静かに続けた。

「大阪京都の、その“おもろい”とか“インタレスティング”のところに多分刺さって。

で、いかにお金をかけずに面白いことをするかとか、価値のあることをするとか。

そういう博子さんの価値観に、染まったというか。」

博子は、そこで少し肩をすくめる。

「ま、札束だけ積むのがダサいで、みたいなところには気づいたんかもしれませんね。」

「そうそう。」

先生は頷く。

「だから多分、来たっていうのは、そもそもメンタリティの問題なんですよね。」

「それはめっちゃ思います。」

博子も、そこで少し熱を帯びる。

「東京の人たちって、なんか効率化、効率化でスマートに行って。しかも、そのスマートの

ヒエラルキーがあって、それが全て、みたいなところがあるじゃないですか。」

「ありますね。」

「でも、大阪民からしたら、そこって、まあ、永遠に面白くないし、

永遠に分かり合えないところじゃないですか。」

先生は、そこを聞いて少し笑う。

「そこまで言う。」

「言いますよ。」

博子は、もう少し前のめりになる。

「で、もう、一回こう上までたどり着いた人って、そっから先が多分空洞なんだと思うんですよね。

そんな中で遊ぶぶんにはいいけども、多分、なんて言うんですかね。階級社会というか。

もう退屈なんだと思うんです。」

先生は、その言葉にかなり納得したように頷いた。

「うん。それはあるでしょうね。」

「で、その退屈に対して揺さぶりをかけてるから、今ちょっとハマってくれてるんかなと

思うんですけど。別にそれ、私じゃなくても、なんかいると思うんですけどね。」

その謙遜とも本音ともつかん言い方に、先生はすぐ首を振った。

「いやいや。いたとしても、少ないんですよ。」

「そうですか。」

「やっぱり東京の、そういう流れの方が盛り上げやすいし。店の売り上げも立ちやすいですから。」

博子は、そこに小さく「まあそれはそうですね」と頷く。

先生は続ける。

「で、博子さんみたいに、裏でなんかガチャガチャやってたら怒らはる人だっているじゃないですか。」

「いますいます。」

「飛躍しすぎとか。余計なことするなとか。」

博子は、そこで少し笑う。

「それは絶対あります。」

「でも、そこを多分、博子さん、チームで回してるっていうところで、ちょっと中和されてる

ところはなくはないんちゃいますか。」

その指摘に、博子はすぐ頷いた。

「確かにそれは、絶対そうだと思います。」

「やっぱり。」

「一人でこんなん抱え込んでやってたら、なんか最終的に札束だけ積み上がって、

こっちもなんかやばい、みたいな感じになるんで。」

先生が吹き出す。

「札束だけ積み上がるって。」

「いや、そうでしょう。」

「そうかもしれませんけど。」

「だから、そこをうまい具合にやらせてもらってるかなとは思ってます。結果的にね。」

少し間があいて、博子はまた静かに続けた。

「でも、かといって、その人たちを毎日相手してたら、私の引き出しがごっそり減ってくんで。」

「うん。」

「その辺は、なんかまあまあええ塩梅でやらなあかんなとは思ってるし。

普段も、言うたら、お客さんとのやり取りだけで終わってるから。」

先生は、そこで博子の言葉を待つ。

博子は、グラスを指で少し回しながら言う。

「それだけじゃなくて、なんか新しい引き出しとか作らなあかんなっていう意識は、

めっちゃあります。」

先生が、そこでしみじみと言う。

「博子さん、なんやかんやふざけてるようで、意識めっちゃ高いですもんね。」

博子は、その言葉にちょっとだけ苦笑いした。

「いや、意識高くいないと、新しいネタが湧かないんですよね。」

「なるほど。」

「別に、意識が高いかどうかは分かんないですけど。新しいネタを探すとか、

そういうところには、めっちゃアンテナ張ってます。」

「うん。」

「キャバ嬢なんてやっぱり、プレイヤーは二十代でしかできないと思ってるんで。」

先生は、その言葉を静かに聞く。

「なので、そういう危機意識とか。売れてなかった時期が長いんで、その辺のアンテナ

めちゃ立ってるんです。」

そこで、博子は少しだけ笑って付け加えた。

「だから、先生にも飽きられないように頑張ろうと思ってるんです。」

先生は、その返しにすぐ笑う。

「いや、この話を毎回聞くだけで、めちゃめちゃ面白いですからね。」

「ほんまですか。」

「だからそういう意味で、土日に仕込んで、月曜日に新鮮なものをもらえる僕は、結構幸せ者ですよ。」

博子が吹き出す。

「そんな言い方します?」

「しますよ。ワクワクしますもん。」

「何にですか。」

「ゴシップもらってるみたいで。」

博子は、その言い方にちょっとだけ首を振る。

「いや、だから、キャバ嬢同士のゴシップとかじゃなくて。」

「うん。」

「社長さんたちが、なんかトラブル持ってきて、私がそれをほぐしてるから面白いんですよ。」

先生は、そこに強く頷く。

「そこなんですよね。」

「だから、今のところはこれでいいですけども。」

博子は、少しだけ真面目な顔に戻った。

「じゃあこれがなくなった時、どうなんか。別で差し込めるネタないかなっていうのは、

考えないとダメじゃないですか。」

その言葉に、先生は少し呆れたように笑う。

「もうそこまで。」

「いや、だって。」

「そんなあれですよ。長期目線でみんなやってませんよ。」

「そうなんですか。」

「日々でいっぱいいっぱいやから。」

博子は、その返しに少しだけ肩の力を抜いた。

そうかもしれへん。

でも、自分は多分、そうやって先のネタを探してないと落ち着かへんのやろうなとも思う。

三セット目が終わる頃には、先生はいつも通り笑っていて、博子の方もいつも通り、

次の手をぼんやり考えていた。

そんな月曜の三セット目やった。

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