オフの木曜日。淡々と積み上げる。4月の売り上げから給与推計13.9万。コツコツや。
木曜日。特にこれといった予定はない。
だからこそ、朝から少しだけ食事を控えめにする。
朝はヨーグルトとコーヒー。昼は軽くスープ。
夜も無理に何かを食べない。金曜日は同伴がある。
その時のご飯がちゃんと美味しく感じられるように、
体も、気持ちも、余白を作っておく。
こういう調整ができるようになったのは、
多分、最近の自分が「場当たり」じゃなくなってきたからやと思う。
昼前、YouTubeを一本上げる。特別な編集もない。淡々とした語り。
ニュースと資格の話、少しの雑談。再生数は爆発しないけれど、
じわじわとコメントがつく。「20歳でこの話してるの珍しい」
「キャバ嬢でFPとか外務員って初めて見た」「派手じゃないのが逆に落ち着く」
狙ったわけじゃない。でも、どうやら“ズレてる感じ”が、刺さっている。
午後、手帳を開いて、4月の振り返りをする。1週目、2週目。
出勤日、同行、ドリンク、ボトル。ざっくり売り上げと稼働時間から集計して——
13万9,000円。「……まあ、こんなもんか」
2週間弱でこの数字。単純に倍にしたら、月で約27万円。
もちろん、そのまま手元に残るわけじゃない。食事代、交通費、身だしなみ。
諸々引いたら、実質は20万円前後。焼け石に水、かもしれない。
借金の額を思えば、誤差みたいな数字や。それでも——前よりは、確実にマシ。
何より、数字が「読める」ようになってきたのが大きい。どこで増えて、どこで減るのか。
同伴の締め方。被った時の立ち回り。まだ課題は山ほどある。店外でどう時間を作るか。
被りをどう分散させるか。でも、今は答えを急がなくていい。まずは積み上げるだけ。
夕方、YouTubeをもう一本上げる。通知を見たら、登録者数が180人になっていた。
「……増えてるな」派手に伸びているわけではない。でも、確実に広がっている。
同年代の女性。時々、少し年上のおじさん。20歳の女の子が、政治のニュースを見て、
資格の話をして、借金と向き合いながら積み上げている。それが、ちょっと珍しいらしい。
「まあ、このまま行けば、数百人はいくやろな」期待しすぎない。でも、やめる理由もない。
夜、FP3級の教材ページを開く。講座を取るかどうか、少し悩む。
正直、お金はかかる。今すぐ決断するほどの余裕はない。
「……次の給料入ってからでええか」そう決めて、過去問をパラパラとめくる。
見覚えのある言葉。知らない言葉。全部を完璧に理解しなくてもいい。今は“触れておく”だけ。
気分転換に、外へ出る。散歩がてら、いつもと違う道を歩く。
新しい店。知らない路地。少しだけ違う空気。「なんか刺激ないかな」
そう思いながら歩くけれど、今日は特別な発見はない。
それでもいい。今日は“仕込みの日”や。
帰り道、ショーウィンドウに並ぶバッグや服を見る。一瞬、目が止まる。
「……これは、あかん」昔の博子なら、勢いで買っていたかもしれない。
“自分へのご褒美”とか言い訳して。でも今は、違う。
派手なものを持つより、静かに積み上げる方を選ぶ。
もし20歳の広子やったら、こんな時間の使い方はしなかったやろう。
でも今は、遠回りの価値を知っている。
だから今日も、派手なことはせず、淡々と一日を終える。
積み上げるしかない。それだけは、もう迷っていなかった。




