東京イキリ社長。博子の座組とコンサルに関するお手当を新幹線の中で思い返しながら作る。銀座で雑に遊ぶより良かった
新幹線の座席に深くもたれて、東京イキり社長はスマホのメモを開いた。
さっきまでぼんやり外を眺めて、コーヒー飲みながら「楽しかったな」「また来るな」みたいな
感覚に浸ってたけど、ここから先はちょっと現実的な話や。
博子ちゃんにメールするにあたっても、箇条書きで整理した方がええよな、と。
感覚だけで「楽しかったです、また来ます」では済まん。
今回はちゃんと、自分の中で何が良かったのか、何に対して金を払いたいと思ったのかを、
一回言語化しておきたい。そう思って、ポチポチとメモを打ち始める。
「まず、水曜日。」
銀座でへこんで、夜中に電話して、土曜日急に行くって言った。
それを、博子ちゃんが「さすがに三人では無理ですけど、私一人なら受けますよ」と
了解してくれた。ここはまず一点目やなと。
急な差し込みを受けてくれたことに対して、まず10。
これは単純に大きい。予定空いてたから、ではなく、へこんでる流れも汲んで拾ってくれた。
その判断込みで10やなと。
次。京都駅の出迎え。
駅で待っててくれて、荷物預けて、清水五条までの動線を作ってくれて、時間配分も綺麗やった。
あの辺、雑にやろうと思ったらいくらでも雑にできるのに、ちゃんと「来た」「移動した」
「これから始まる」っていう流れにしてくれた。これは5かな、と。
でかすぎもせんけど、確実に気分を作ってくれてた。
その次は、日本酒の店。
ここはでかい。
十四代、而今、新政。しかも値段。
値段だけやなくて、どれを入れて、どれを最後に回すか、つまみをどう差し込むかまで、
全部立ち回り込みで良かった。ここは10。
というか、正味もっとあってもええけど、まあまず10で置いとく。
銀座で削られてたメンタルを、あそこでかなり立て直してもろた感覚がある。
そのあと、店の中。
店の中では、ただ二人でべったりやるんやなくて、最後にさきちゃん、アルカちゃんを混ぜて、
明日の話まで綺麗に整えた。あれが良かった。
あれがなかったら、多分また他の二人との温度差が出る。
しかも、そのへんの気遣いを俺に見せながらやってる。
「チームで受けてるから」っていう視点も含めて、店の中のやり取りと、
他の子たちや他の社長への気遣い込みで10。
ここは博子ちゃんの座組運営の上手さに払う金やなと。
日曜日。小籠包。
あれも良かった。
味そのものがうまかったのもそうやけど、時間をちゃんと作ってくれたこと。
駅近で、あの値段で、あの満足感。そこに案内してくれたこと自体に10。
で、そもそも日曜日のアフターに来てくれたこと。
これも別で10。ここは切り分ける。
小籠包がうまいのと、日曜に時間を空けてくれたのは別の価値や。
で、グラングリーン。
あの芝生見ながら、セブンのアイスコーヒー飲んで、ぼーっとしたの。
あれも良かった。
派手ではない。
でも、あれがあったから今回の二日間が“遊び切った”感じで締まった。
これは5。小さいけど、記憶には残るやつやなと。
ここまでで、えーと。
10、5、10、10、10、10、5。合計60。
「お手当て」としては、とりあえずこの60がベースかな、と思う。
ただし。それとは別で、コンサルティングフィーの話がある。
奨学金返済のところ。あの具体的なプラン。
費用対効果の数字を出して、資料にして、しかも実際会社の中で動くきっかけになってる。
これはもう、同伴のお手当てとは別の話やな、と。ここは20。
もちろん、今後実際に制度が回って、さらに効果が見えたら上積みは考える。
でも、今回このタイミングで払う分としては、まず20。
それぐらいは切ってええやろと。
ということは、今回まるっと合計80。
うん、そんなところやろうな、と社長は頷く。
高いか安いかで言うたら、東京で雑に使ってる金と比べたら全然納得感ある。
むしろ安いぐらいや。しかも、宿題でもらった奨学金の件は、後日ちゃんと話す。
会社で回してみた結果とか、若手の反応とか、そういう後日談も博子ちゃんへの
“報酬”の一部として返せる。それはそれで、あの子喜びそうやしなと思う。
「よし。」
社長は、メモを見返しながら小さく呟く。
メールとして送る時は、もう少し柔らかくする。
でも、自分の中ではこれで決まりや。
今回の一泊二日、遊びとしても良かったし、金の払い先としても納得感がある。
それが一番大きかった。新幹線はもう東京に近づいてきている。
社長はコーヒーをひと口飲んで、博子ちゃんに送る文面を、頭の中でゆっくり組み始めていた。




