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日曜日の軽いアフター。梅田グランフロントの小籠包を食べに行く東京イキリ社長と博子

日曜日。博子は、前の日に早めに帰ったぶん、少しだけ身体が軽かった。

もちろん、疲れが全部抜けたわけではない。でも、泥のように眠るほどではなく、

朝にだらだらゴロゴロできるぐらいの余裕はあった。

そういう日曜日は貴重やなと思いながら、身支度をして、梅田へ向かう。

一方そのころ、東京イキリ社長の方も、前の日はオープンラストみたいな無茶な遊び方ではなく、

そこそこいいところで切り上げていたから、わりと休めた感じがあった。

ガラっと切り替わったわけではないけれども、土曜の京都から大阪の流れでだいぶ気持ちは整っている。

今日はその続きみたいなもんや。

しかも、朝イチでどこか遠出する感じではなく、梅田で待ち合わせて、小籠包を食って、

ちょっと散歩して、ぼんやりして帰る。

この“力を入れすぎない感じ”が、今の二人にはちょうどよかった。

梅田で待ち合わせると、社長は博子の顔を見るなり少し笑った。

「今日はなんか、ゆるい感じやな。」

博子も笑って返す。

「日曜ですしね。」

「それもそうか。」

「今日はもう、ゆるくいきましょう。」

そう言って、二人でグランフロントの方へ向かう。

日曜の梅田は人が多い。

でも、京都の観光地の“ど真ん中の混雑”とはまた違って、流れが読める。

駅から近い店にするというのも、こういう日においては正義やった。

社長が歩きながら言う。

「駅から近いから、その辺楽やな。」

「でしょう。」

「でも、梅田駅でそんな言ってた店とかってあるんか。大都会の真ん中やで。」

博子は、そこにちょっと得意げな顔で返す。

「いや、意外とランチは二千円ぐらい出せば、いいところあるんですよ。」

「へえ。」

「さすがに千円は無理ですよ。」

「まあ、そうやろな。」

「いや、千円でも、一箇所、一千円前後ではある店あったんですけど。」

「お。」

「人気すぎて、もうそもそも開店一時間前から並ばなあかんっていう感じになるんです。」

社長が思わず笑う。

「それはしんどいな。」

「やっぱ、いい店は、安くていい店ほど、ちょっと苦労しないといけないって感じですかね。」

「なるほどな。」

博子は、そのまま人混みをするっと抜けるように歩きながら言う。

「逆に、今日みたいに“駅近で、そこそこちゃんとしてて、変に高すぎない”っていうラインを

取るなら、ここが結構いいと思うんですよ。」

「ほう。」

「私の中では、関西界隈で食った小籠包の中で、ここが一番うまいんです。」

社長が、そこで少し眉を上げる。

「そんなにか。」

「そんなに。」

博子は即答する。

「だから、自分のお客さんにも、結構おすすめするんですよ。」

「へえ。」

「めっちゃ高いわけでもないし、ちゃんと満足感あるし。そういう意味で、使いやすいんです。」

そんなことを話しながら、グランフロントの小籠包の店に着く。

受付ごしに中を見ながら、社長が「へえ、ちゃんとしてるな」と呟く。

店の雰囲気も、カジュアルすぎず、かといって肩肘張るほどではない。

日曜のランチとしてはかなりちょうどいい。

博子は、店に入る前にざっと説明するみたいに言う。

「ここは、ランチ帯はですね。二千二百円のセットがあって。」

「うん。」

「カニと肉の小籠包がついて、天心3種ついて、ハーフサイズのメインがちょっと付くんですよ。」

「ほう。」

「で、ここのね、汁そば食べてくれたらいいと思うんです。」

社長が、少し嬉しそうに笑う。

「そこまで決めてくれてんのか。」

「決めますよ。」

「やっぱ流れがあるな。」

「流れ作るのが仕事ですから。」

社長が吹き出す。

「何の仕事やねん。」

「なんでしょうね。」

博子も笑いながら続ける。

「でも、それで二千二百円で、デザートまで付いてきますから。」

「ええやん。」

「でしょう。駅前でそんなリーズナブルに食えるって、いいなって感じやと思うんですよ。」

社長は、そこで少ししみじみした顔になった。

「ほんまやな。」

銀座だ、京都だと、この数日かなり濃い流れをしてきたあとやからこそ、日曜の昼に、

梅田駅の近くで、二千二百円でちゃんとした小籠包ランチを食う、というのが妙に沁みる。

高い安いだけの話やない。

ちゃんと考えられていて、ちゃんと美味しくて、しかも駅から近い。

そういう“程よさ”が、今日はありがたかった。

「ほな、入りますか。」

博子がそう言うと、社長も素直に頷く。

「うん。今日もええ感じやな。」

「まだ食べてないですよ。」

「いや、でももうこの時点でええ感じや。」

そう言って、二人は店の中へ入っていった。

日曜日の梅田の真ん中で、駅近で、ちょっとしゃれてて、ちゃんと美味い小籠包を食べる。

そのぐらいの贅沢が、今の二人にはちょうどよかった。

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