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7月4週目土曜日、東京イキリ社長が一人で来る。京都で同伴を受けて立つ。準備済。博子と東京イキリ社長の視点

金曜日は、会計士先生との同伴があって、そこでちゃんと二時間話ができて、

さらにサキちゃんとアルカちゃんとも宅で必要な共有は済ませて、

そのあとはフリーを回す、という流れやった。

とはいえ、やっぱり同伴のあとにフリーの時間をきれいに埋めるのは難しいな、と博子は思う。

同伴、セットが終わり、そこからまたフリーをつなぐとなると、どうしても気持ちの切り替えが

いるし、お客様もこちらも、すぐに熱が乗るわけではない。

それでも、いろんなところにちょこちょこ顔を出して、少し会話をして、空気をつないで、

まあ今日はこのぐらいかな、というところで帰るに至った。

明日は明日で、また東京イキリ社長が来る。

そう思うと、無理にもう一山作るより、今日は早めに切り上げて整えた方がいいという判断やった。

で、土曜日。

東京のイキり社長を迎え撃つにあたって、ヒロコは前の晩のうちに、あの日本酒の

うまい店の予約だけは済ませておいた。

あの店は、もう今や完全に“刺し札”の一枚になっている。

十四代やら何やらが、あの価格帯で飲み比べできる、というだけでも東京の人間にはかなり効く。

しかも、単に酒が安いだけではなくて、「なんでこんな値段でこれが出るんや」という

気づきまで含めて渡せる。

だから、土曜はまずそこからやろうと決めていた。

メールも、前の晩のうちに社長へ入れておく。

同伴自体は京都でお迎えします、ということ。

新大阪ではなく京都。

そこから清水五条の方へ入って、日本酒の店へ行く流れ。

あくまで軽い感じで、でもちゃんと準備してますよ、というのが伝わるように送ると、

社長の返事は早かった。

「おっしゃ、わかった。」

それだけの短い返事やったけれども、むしろそれがよかった。

変に長々やり取りする感じやない。

向こうも、もうどこか気持ちが決まっている。

銀座でへこんで、こっちへ戻ってくる。

その流れの中で、「京都で迎えます」と言われたら、もうそのまま乗るしかない、

みたいなところもあるんやろうなと、博子は少し笑った。

一方で、その土曜を迎える東京イキリ社長の方はというと、水曜日に銀座でかなり気分を

悪くしたものの、それを打破するために博子に会いに行く、というモードにしっかり

切り替わっていた。三人で行った時に、自分たちの感覚が大阪で変わってしまったことを

思い知らされて、しかもその話をしたことで「面倒くさい客」みたいな扱いを受けた。

それが、想像以上に効いていた。だからこそ、今度は一人で行く。

他の社長二人には悪いかな、とは少し思う。

でもまあ、そこはおっさんし、勝手に動いてもええやろ、という気持ちもある。

というより、今は自分の感覚を整えたい方が勝っている。

銀座でへこんだまま、気持ち悪く週を終えるのも嫌や。

だったら、博子のところへ行って、もう一回ちゃんと“こっちやった”と思いたい。

そんな感じで、土曜の朝はコンビニでコーヒーを買って、移動に入ることになる。

博子の方は、そんな社長の気持ちなんてもちろん全部は知らへんけれども、

だいたいの流れは見えている。

ただ、今回せっかく一人で来るなら、ただ酒を飲ませて終わり、というのももったいないなと

思っていた。そこで、前に三人の社長と話した時に出した「奨学金を肩代わりする話」の案件を、

軽くもう一回整えておこうかなと考える。この前ちらっと投げて、実際に東京メイン社長の

会社で動いた。また同じように動いてもらえへんかな、という気持ちもある。

もちろん、露骨に売り込むつもりはない。

でも、酒と話の流れの中で自然に差し込めたら、それはかなり強い。

だから博子は、そういうところも含めて、どこまで刺さるか、どこまで社長がまた

食いついてくるかを、少しニヤニヤしながら準備していた。

酒の店もある。軽い京都の導線もある。

そして、話の種としての“もう一段深いコンサル”もある。

土曜日は、また一つ違う形の勝負になりそうやなと、博子はそんなことを思っていた。

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