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テンポに乗り切れてない弁護士先生を丁寧に拾い次につなげる

フリー卓は賑やかやった。

笑い声も大きいし、テンポも速い。

でも、弁護士の先生はどこか一歩引いた位置で、

グラスを口に運ぶ回数も、周りより少ない。

博子は気づいていた。この人は「楽しくない」わけじゃない。

ただ、合っていないだけや。

少し間が空いたところで、博子がぽつりと言う。

「なんか今日、和食食べに来たつもりやったのに、

いきなり中華の食べ放題に連れてこられた感じしません?」

先生は一瞬驚いた顔をして、それから、思わず吹き出した。

「……それ、めちゃくちゃ的確やわ」

周りは笑ってる。でも先生の笑い方は、少し違った。

“わかってもらえた”人の笑いや。

「嫌いちゃうねん。でもな、今日は出汁のきいたもんを

ゆっくり食べたかったんや」

ヒロコはうなずく。

「ありますよね。料理自体は悪くないのに、

タイミングとか、量とか、今ちゃうって日」

先生はグラスを置いて、少しだけ姿勢を緩めた。

「ここ来るの、久しぶりやねん。賑やかなのも嫌いやないけど、

正直、今日はちょっとしんどかった」

そのまま、自然に時間が流れる。誰も大きな話題を振らない。

でも会話は途切れない。

そして、気づけば——延長指名が入っていた。「お、指名やん」

「先生、決めたな」周りが軽くいじる。先生は照れたように笑って言う。

「近所やしな。落ち着いて飲めるとこ、一個くらいあってもええやろ」

延長の確認も、言葉はいらなかった。黒服の目線に、先生が小さく頷く。

「まだええ時間やし」それだけや。

盛り上がりの中心にはいない。でも、ちゃんと楽しんでくれている。

ヒロコはそれが、何より嬉しかった。

派手じゃなくていい。大声で笑わなくてもいい。

「ここに居たい」と思ってもらえたなら、それで勝ちや。

やがて終電の時間。「また来るわ」先生はそう言って立ち上がる。

ヒロコは深追いしない。「次は、出汁の日で」

先生は小さく笑って帰っていった。

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