火曜の晩。youtubeを撮影。水曜朝、不動産会社社長に直接的に同伴頼むも断られる
火曜日の晩。博子は、少し間を置いてからスマホを手に取った。
今日の昼は、おじいちゃんとご飯に行った。あれはあれで、いい時間やった。
穏やかで、昔話が多くて、少し切なくて。
だから今日は、夜に同じ流れで誰かとご飯、というわけにはいかない。
それでも――水曜日は出勤や。「一応、声だけはかけとこか」
そう思って、不動産会社の社長にメッセージを打つ。
「明日出勤してるんですけど、もしお時間あれば
ご飯でもどうかなと思って。同伴で来ていただけたら、私はすごく嬉しいです。」
いつもより、少しだけ直接的。でも、「今日ご飯行きませんか?」とは書かなかった。
今日はもう昼で一枠使っている。火曜の夜にご飯、水曜同伴、
という流れは物理的に無理や。自分の中のルールとしても、無理に詰めたくない。
「誘い方としては、ちょっと違うな…」
そう思いながらも、今の状況では、これが精一杯やった。
送信。既読は、まだ付かない。スマホを伏せて、深呼吸する。
焦ってもしゃあない。毎週同伴できるほど、まだ土台は固まってない。
それは、自分が一番わかってる。夜はYouTubeを撮ることにした。
今日は、ひとつ区切りがある。証券外務員二種、合格。
それをそのまま、淡々と話す動画を2本、3本。大げさな演出も、踊りもない。
「受かりました」「勉強方法はこんな感じでした」
「仕事しながらでも、意外といけました」それだけ。
最後に、少しだけ本音も混ぜる。「仕事は、ちょこちょこ順調です。
でも、正直まだ不安はあります。」言い切らない。泣き言にもならない。
カメラを止めて、アップロード。
通知を見ると、登録者数が150人になっていた。
少し前まで100人そこそこやったのに。じわじわ、増えている。
「……女の子のVlogって、やっぱ一定の需要あるんやな」
尖ったことは言ってない。派手なこともしてない。
それでも、“積み上げてる途中の人間”という空気は、
ちゃんと届いている気がした。それが、少し救いやった。
水曜日の朝。目が覚めて、まずスマホを見る。
不動産会社の社長から、返信が来ていた。
「ごめん、同伴は毎週は厳しいわ。またタイミング合う時に。」
短い文面。丁寧ではあるけど、はっきり断り。一瞬、胸がきゅっとなる。
「そっか……」今日は同伴なし。久しぶりかもしれない。正直、がっかりした。
最近は、誰かしらと“次の約束”が見えている日が多かった。同伴、食事、次の曜日。
それが今日は、何もない。「まあ、そういう日もあるよな」
自分に言い聞かせる。毎週、毎回、同伴がある方がおかしい。
相手にも生活がある。仕事もある。それに、無理に詰めて来なくなったら、意味がない。
今日は、店で勝負する日や。フリーを丁寧に回る。無理に数字を追わない。
借金も、不安も、一気には減らない。でも――昨日より、少しだけ前に進んでいる。
博子は、身支度をしながらそう思った。同伴がなくても、指名がなくても、
静かな日でも。積み上げるしかない。今日は、そんな水曜日や。




