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7月2週目金曜日、税理士先生達との座組。大阪で集合してサンダーバードで京都伏見方面に向かう

金曜日、昼からでございます。博子は朝のうちに、アルカちゃんとさきちゃんに

先に連絡を入れておいた。

《一応、今日の流れ共有しとくね》

《大阪から京都回ります》

《最初、蒼空の酒蔵行って軽く飲んで、その後、鳥せいに6人で行きます》

《で、帰ってきて、フグにしようかと思ったけど、今日は天ぷらと魚のかま焼きが美味しいところ、

6人で予約してるからそこで食べようと思ってる》

《さきちゃんは、目の前の弁護士先生が満足してくれるように動いてくれたら嬉しいかな》

《アルカちゃんも保険会社の人と仲良くしてもらってええけど、たぶん税理士先生の目的は

弁護士先生と仲良くなることやと思うから、そのへん3人で共有しとこう》

《私も一応気は配るけど、税理士先生は多少のことは許してくれそうやから、コンダクターとして

ちょっと頑張るわ。よろしくです》

ほどなくして、二人から返事が来る。

《了解です》

《わかったー》

《いつも回してくれてありがとうね》

その一言に、博子は少しだけ笑った。

いやいや、回してるというより、最近はもう事故らへんように配線してるだけや、

という気持ちもあったけど、それでもこうやって乗ってくれるのはありがたい。

で、昼の十一時ぐらい。

大阪駅、いつもの待ち合わせ場所。

人の流れの中に立ちながら、博子は今日は“東京の社長たちを殴る日”とはまた違うな、

とぼんやり思っていた。今日はもっとゆるくて、でも失敗はできへん座組や。

税理士先生と保険会社の人、それから顧問先の弁護士先生。

目的は遊びそのものというより、“仲良くなる場”を女の子側が設計すること。

それが面白いし、逆に言うと変に盛りすぎる必要もない。

「来たでー。」

先に声をかけてきたのは税理士先生やった。

相変わらず機嫌がいい。

その後ろに、少しきっちりした雰囲気の弁護士先生がいて、保険会社の人も軽く会釈してくる。

「今日はもう、座組にしてもらえると思って、ちょっと楽しみやってん。」

税理士先生がそう言って笑う。

博子も笑って返した。

「ありがとうございます。今日、言うたらそんな大層なもんじゃないですけど、

ちゃんと回しますんで。」

税理士先生はそこで、横の弁護士先生を軽く手で示す。

「で、こっち、弁護士先生です。今日、言うたらこういう感じで、ゴルフ接待じゃなくて、

ちょっと違う形で回って、仲良くできたらなと思ってるんで、よろしくお願いします。」

弁護士先生は、少しだけ照れたように会釈をした。

「どうも、初めまして。こんな感じで遊ぶのは、あんまり慣れてないんですけど……。」

博子はすぐに、その空気を軽くするように笑った。

「大丈夫です。今日は私、言うたら座組のコンダクターやってるんで。博子です。

とりあえず、サンダーバード行きましょうか。」

その一言に、弁護士先生がぱちっと目を瞬いた。

「え、そんな……女の子が全部、一から十までやってくれるんですか?」

その言い方があまりにも素直で、税理士先生と保険会社の人が思わず笑う。

博子も肩をすくめた。

「そういう日です。」

「いやいや、すごいな。」

弁護士先生は、まだ半信半疑みたいな顔で博子を見る。

その横で、税理士先生が楽しそうに口を挟んだ。

「いや、でもね、彼女はいつもこんな感じで、結構しっかりしてくれるんですよ。」

博子は、そこで少しだけ苦笑いした。

「しっかりしてるっていうか、ほっといたら皆さん好き勝手動くじゃないですか。」

「そらそうや。」

「だから、なんとなく一本線引いといた方が、あとで楽なんです。」

保険会社の人が、そこで小さく笑った。

「なんかもう、旅行会社みたいですね。」

「近いです。」

博子は即答した。

「しかも、ただ回るんじゃなくて、ちゃんと今日の目的あるんで。

税理士先生と弁護士先生が、ちょっとちゃんと喋れるようにするとか。

保険会社の人が、変に置いてけぼりにならへんようにするとか。

女の子側も、誰がどこを見るか軽く決めてるんで。」

弁護士先生が、そこでまた少し驚いたように言う。

「そこまでやるんですね……。」

「やります。」

サンダーバードのホームに向かいながら、博子はもう自然に全体の歩幅と空気を見ていた。

税理士先生はウキウキしてる。

弁護士先生は少し緊張してる。

保険会社の人は様子見。

この三人を、重くしすぎず、でも雑にせず回す。

そのための最初の一手は、やっぱり移動や。

「今日はまず、京都行って。最初に蒼空の酒蔵の方寄って、軽く一杯。

そこから鳥せいで昼をやって、戻ってきて夜は天ぷらとかま焼きです。

だから、変に身構えず、だらっとついてきてもらったら大丈夫です。」

税理士先生が「うんうん」と頷く横で、弁護士先生がぽつりと呟く。

「いや、でも本当に、ここまで段取りしてくれるもんなんですね。」

博子は、その反応がちょっと面白くて笑った。

「逆に、誰もやってくれへん遊びって、疲れません?」

弁護士先生は、一瞬考えてから、苦笑いした。

「たしかに……。男側が全部店選んで、全部気を使って、なんとなく終わるより、

こっちの方がだいぶ楽かもしれないです。」

「でしょ。」

税理士先生がそこで得意そうに言う。

「だから今日、ちょっと楽しみやってん。俺らがゴルフ接待でやってることを、

別の形で見せてもらえるんかなと思って。」

博子は、その一言に少しだけ目を細めた。

「そういう感じで見てもらえたら、私もだいぶ楽です。」

ホームに着いて、サンダーバードが入ってくる。平日の昼前やから、そこまで混んでへん。

六人でまとまって乗り込めるのも、今日の流れとしてはちょうどよかった。

席に落ち着いたところで、税理士先生がもう一回、楽しそうに言う。

「いやあ、これもう始まってるな。」

博子は、窓の外を見ながら少し笑う。

「始まってますよ。ここからがスタートです。」

そう言うと、弁護士先生が少し背筋を伸ばして、保険会社の人もなんとなく笑った。

今日の座組は、まだ何も起きてへん。

でも、その“起きる前の空気”を作るところまでは、もうちゃんと動き出していた。

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