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東京イキリ社長、博子にお礼メールする。効果が出た部分は一部還元するわ。と。ただ博子は淡々と返し媚びてこない。こいつすごいぞ

火曜の晩。東京イキリ社長は、昼間に部下から持ってこさせたメモをもう一回見返してから、

博子にメールを打った。数字が出たことが、なんだか妙に嬉しかった。

ただ楽しかったで終わらず、ちゃんと会社の中の話にまでつながった。

そこに、あの土日の重みがあった気がしたからや。

――今日、部下に相談して話聞いた。

奨学金の返済の肩代わりと、就労不能の件、ざっくり見積もってみたら、

細かいところはまだやけど、年間700万から3000万ぐらい、費用対効果があることがわかった。

真ん中で見て2000万ぐらいやと。それが10年でだいたい2億円。

さすがに2億円博子に渡すわけにはいかんけれども、この数字を出してくれて、

うちら実際にこれをするかどうかって言ったら、たぶんするよりや。

他の社長とも話し合って、どれぐらい効果が出るか見積もるわ。

その上で、遊びは遊びで積むけども、博子にはちょっと積まなあかんなという気にはなった。

送ってから、社長は少しだけニヤついた。

“2億円ヒロコに渡すわけにはいかん”という一文が、自分でもちょっとおもろかった。

けど、半分本音や。それぐらいのインパクトがあったのも事実やった。

しばらくして、博子から返事が来る。

文面を開いた瞬間、社長は小さく吹いた。

――くすくす、という感じで笑ってしまいました。

それは東京三人組社長の時に、それだけの効果が出たから、なんとなくわかってました。

で、これでよければ、また私のところに遊びに来た時に、なんか色々調べ物とかもしときますんで、

私なりの気づきみたいなものを、別にペーパーに載せるのは別として、飲みの場で色々話したりとか

しながら、また仕事でフィードバックできそうなものがあればよろしくお願いします。

それで浮いたものに関しては、時々大阪で遊んでくれればいいですし、別でコンサルティング費を

いただけるんであれば、それはありがたく頂戴します。だけど無理せずに、定期的に大阪京都に来て、

いろんな気づきとか、銀座六本木で遊んで、そっちと私たちを比較してもらって、こっちで

楽しんでいただけたらいいですわ。

その返事を読んで、社長はスマホを持ったまま、しばらく笑っていた。

笑っていたけど、その笑いの中に、ちょっとした怖さも混じっていた。

「……こわ。」

思わず、独り言みたいに出る。

何が怖いかというと、博子が“くださいください”と言わへんところやった。

むしろ逆や。こっちが数字を出して、興奮して、ちょっと積まなあかんなと思ってるところに対して、

向こうは一歩引いたまま、“時々遊びに来てくれればいいですし”

“別でコンサル費いただけるならありがたく頂戴します”

ぐらいの、妙に冷静な線で返してくる。

そこが面白くもあり、余裕でもあり、ちょっと怖い。

――これ、多分ここまで刺さることも、わかっててやってるよな。

社長は、そう思った。もちろん、毎回絶対当たるなんてことはないやろう。

でも、今回の土日で自分がどこに刺さったか、どんな話が会社に持ち帰れるか、その構造は

多分かなりの部分まで見えていたはずや。じゃなかったら、奨学金だの就労不能だの、あんな球を、

酒飲みながらポンポン投げてこられへん。それが一回当たって、実際に数字が出た。

そしたら次は、「また遊びに来た時に、私なりの気づきを出します」と来る。

これ、だいぶ強い。

しかも、「うちに来てください」「もっとください」「今週来てください」

と詰めてこない。その感じがまた厄介やった。

余裕がある。

というか、余裕を見せている。

実際、東京から来てる社長が他にもいるって言ってたし、似たようなことを前にもやったんやろう。

“これ、多分当たる”という見込みがあるから、がっつかずに置いておける。

「なるほどなあ……」

社長は、ベッドに背中を預けながら、天井を見た。

向こうは、多分もう次のことも考えてる。しかも、飲みの場のノリだけでなく、

会社の数字と結びつける形で。その上で、こっちが勝手に深くハマっていくのを、

ちょっと引いたところから見てる感じがある。

それが、なんか面白い。

でも同時に、こいつ、どこまででかくなんねんという怖さもある。

今はまだ、キャバ嬢として、座組を組んで、接待っぽく遊んで、気づきを投げてる。

でも、こうやって数字が返ってきて、会社の制度まで動きそうになって、別でコンサル費の

話まで自然に出てくるようになったら、たぶん博子はこのへんのところを、もっと勉強し始めるやろう。

実際、お給料も入る。土日でまとまった金も入る。

そうなったら、多分この人は、遊びながら勉強する。

会社の制度も、採用も、就労不能も、口コミも、福利厚生も、

全部“座組の材料”として吸収していくタイプや。

「やばいな……」

でも、その“やばい”は嫌な意味ではない。

むしろ、次どうなるか見たい、という意味でのやばさや。

普通の女の子なら、楽しかった、また来てね、で終わるところを、

向こうは“また仕事にフィードバックできそうなものがあれば”と返してくる。

それが、もう普通の遊びの範囲じゃない。でも、だからこそ、今までにない。

社長は、スマホを見返した。

短い文面やのに、妙に余韻がある。

こっちを煽ってるわけでもない。媚びてもない。

でも、確実に次の球は置いてある。

その置き方が、やっぱりうまい。

「……そら、また行くわな。」

口に出して、自分で笑う。

しかも次は、たぶん前よりもちゃんと見に行く。

六本木銀座も一回確認して、その上で、また大阪京都に行く。

その時、博子がどこまでまた進んでるのか。

そこを見るのが、なんだか少し怖くて、でもかなり楽しみやった。

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