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弁護士先生帰宅後フリーの卓でさきちゃんアルカちゃんと雑談&打ち合わせ。東京メイン社長と税理士先生の座組の話

フリーの卓に戻ると、ちょうどアルカちゃんとさきちゃんが顔を合わせていて、

博子を見るなり、二人ともふっと力の抜けた笑い方をした。

「もうほんま、日曜お疲れさまやわ。」

「お疲れ。大変やったよな。」

博子も、ようやくそこでちょっとだけ肩を落とした。

「大変やった。大変やったけど……もらえる額がエグいね。」

その一言で、三人とも笑ってしまう。もらえる額、というか、流れというか、

金土日で一気に持っていかれた感じ。しんどいけど、うまくハマった時の爆発力がでかすぎる。

アルカちゃんが、半分本気みたいな顔で言う。

「もう私ら、土日だけ働いたらええんちゃう?」

さきちゃんもすぐ乗る。

「わかる。平日だらだらして、土日にドカンで。」

博子は、すぐに首を振った。

「いや、あかんあかん。」

「なんでよ。」

「だって、あんたら、それ台風やもん。来る時は来るけど、引く時は引く。やっぱり、

普段を大事にせな。」

その言い方に、二人とも少しだけ真顔になる。

たしかにそうや。今回みたいな土日は、派手やし気持ちええし、お金も動く。

でも、それを“普通”やと思った瞬間に足元をすくわれる。普段の同伴、普段のフリー、

普段の関係性。その積み上げがあるから、あの台風みたいな三日間も成立する。

「……それはそうか。」

「うん。わかる。」

博子はそこで、少し声を落として本題に入った。

「で、今週の土日なんやけど。実は東京のメイン社長、来たいって言ってたんよ。」

「え、もう?」

「はや。」

「うん。でも、ごめんやけど一週間ずらしてって言った。」

アルカちゃんとさきちゃんが、顔を見合わせる。

驚きはあるけど、否定の顔ではない。むしろ、言われてみたらそらそうやな、という顔やった。

「さすがに、昨日の今日でまだ疲れ抜けてへんし。」

「抜けへんよな。」

「抜けへん。」

「私の判断やけど、あの流れを今週もう一回やらなあかんと思うと、

ちょっとしんどい。たぶん回せるけど、回したら回したで雑になる気がした。」

そこは二人とも素直に頷いた。

「それは正解やと思う。」

「うん。今週やったら、たぶんどっかでポカする。」

博子は、その言葉に少しだけ安心した。

自分一人のわがままやなくて、ちゃんとチームとしての判断になってるのが分かるからや。

「で、その代わりに考えてるのは、金曜日の座組みを入れようと思ってる。」

「お、税理士先生んとこ?」

「そう。そっちをちょっとやろうかなって。でも土日はもう少し休みにして、

土曜日は予約出勤があれば行こうかな、ぐらいでやろうと思ってる。」

さきちゃんが、すぐに言う。

「あ、いいやん、それ。」

アルカちゃんも頷く。

「ちょっと力抜いて、で、次の週の東京メイン社長に備えるってことやろ?」

「そう。」

博子はそこで、少しだけ前のめりになった。

「一応、次来る時、三人来るっぽいこと言ってるから。その時の座組み、

ちょっと変えようと思ってる。」

「どう変えるん?」

「前半二時間は別々で普通に回す。で、後ろ二時間は“講義”にする。」

「出た、講義。」

さきちゃんが笑う。アルカちゃんも苦笑いしながら、でももうその流れを理解してる顔や。

「そう。その講義で、なんでメイン社長があんなに私にハマったか、何が銀座六本木と違ったか、

鉄板コースって何が刺さってるか、そこを解説する。で、その分に関しては、

コンサルティング料もらう。」

二人とも、少し黙ってから、ゆっくり頷いた。

「ああ、もうそこは任せる。」

「うん。やっぱり熱量があんなに離れてたら、そのままやと絶対すぐ空気悪くなるし。」

「そうなんよ。」

博子もそこははっきりしていた。

「メイン社長はもう一回刺さってる。でも他の二人は“楽しかった”止まり。

その差があるままやると、結局また“なんであいつだけ”になる。だから、

熱量の差を埋めるっていうことを、意図的にやらなあかん。」

アルカちゃんが、その言い方に深く頷く。

「理解してもらえるかはわからんけど、絶対必要やと思う。」

「うん。」

「私もそう思う。なんか、おもろかった、で終わる人と、構造まで見えてる人って、

やっぱり温度ちゃうもんな。」

博子は、二人のその反応を見て、少しだけほっとした。

一人で考えてる時は、やりすぎかなとも思った。でも、二人が納得してくれてるなら、この方向でええ。

「だから、次の週はそこ勝負かなって。」

「ええやん。」

「むしろ、そこまで設計してくれた方が私らもやりやすい。」

博子は、そこで少し笑った。

「ありがとう。」

少しだけ沈黙が流れる。店の中は相変わらずざわざわしていて、フリーの卓も回っている。

結局、自分たちはここに戻ってくる。台風みたいな土日があっても、

結局はここで回して、ここで積んで、ここからまた次に行く。

さきちゃんが、少し肩を回して言う。

「なんか、でも不思議やな。めっちゃでかいことあった後でも、結局こうやってフリー

戻って散るんやもんな。」

アルカちゃんが笑う。

「それが普通やろ。」

博子も、卓の方を見ながら小さく笑った。

「うん。だから普段が大事やねん。」

その一言で、三人ともなんとなく腹が決まる。派手な土日があった。でも、今週は少し力を抜く。

その代わり、次の大きい波に備える。

そうやって、自分たちなりのリズムを作っていくしかない。

「ほな、また散りますか。」

「はいはい。」

「了解。」

三人はそこで、いつものようにふっと離れた。さっきまで一つの塊みたいに喋っていたのに、

戻る時はそれぞれの卓、それぞれの役割に散っていく。その感じが、なんやかんやで心地よかった。

博子はフリーの卓に戻りながら、今週はちょっとだけ休もう、と改めて思った。

でも、休むだけでは終わらへん。次の座組みも、もう頭の中では回り始めている。

そういう意味では、やっぱりまだ台風の余韻の中におるんやろうなと思いながら、

博子はまた店の灯りの中へ戻っていった。

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