日曜日の夜。東京メイン社長から来週3人で遊びに行きたいと連絡が来る。座組の関係で1週間延ばしてほしいと博子。構成を伝える
日曜日の遅い時間。
東京メイン社長は、さすがに今日は向こうも動いてるやろうなと思いながら、
それでも一本だけメールを入れておこうとスマホを手に取った。
今すぐ返事が欲しいわけではない。
むしろ、気づいた時に返してくれたらええぐらいの温度感や。
ただ、自分の中で次の動きを止めたくなかった。
文面は、らしく、でも少し抑えめやった。
――今日、多分東京の別の社長たちが行ってると思うから、落ち着いた時でええねんけど。
俺ら三人で一回飲んで、博子ちゃんの話したら、ぜひ会いたいって言ってくれてる。
それで、行きたいと思ってんねん。
ちなみに今週の土日、もし空いてるなら、セッティングしてほしいけどどうかな。
送ってから、社長はスマホを伏せた。
どうせ今すぐは返ってこーへん。
大阪から京都まで引きずり回して、今日一日やってたんや。
そらそうやろと思いながらも、どこかで期待してる自分がおる。
その夜、深夜になって。博子は、泥のように寝ていたところで一回だけ目を覚ました。
喉が渇いて、スマホを見たら、社長からメールが来てる。
寝ぼけ眼のまま文面を読んで、ふっと笑った。
「はやいねん。」
でも、嫌ではない。
むしろ、向こうもちゃんと次を考えてるのが分かるから、そこはちょっと嬉しい。
ただ、今週は無理や。それは、博子の中ではもうはっきりしていた。
すぐに返すほどでもないかなと思ったけど、逆にここで一回球を投げておいた方がええ。
そう思って、博子はベッドの上で体を起こしながら返信を打ち始めた。
――これ、明日返そうかなと思ったんですけど、一回だけ返しますね。
今日、東京の社長たちを見送ってきたところです。
先週の今週じゃないですか。
なので、ちょっと一週間ずらしてもらえたらありがたいです。
ここまでは、まず地ならしや。
断ってるわけやない。
でも、今週はさすがに無理やということを、やんわり、でもはっきり伝える。
博子はそこで、少しだけ指を止めた。
ここから先は、ただの延期のお願いやない。
次に向けて、自分の中で考えてる“座組”を、ちゃんと見せるパートや。
――多分まだね、余韻を消化しきれてないんです。私ら三人も。
で、あと問題なのが、社長と、他の社長二人の温度感がやっぱり違うのが気になってるんです。
そこ、ちょっと座組を考えようと思ってます。
ここで、社長の頭に浮かぶやろうことはわかる。
“温度感の違い”。それは、まさに前回も今回も、ずっと漂ってた空気や。
自分だけ刺さり方が違う。
それが、おもろくもあり、めんどくさくもある。だったら、そこを逆に設計に組み込む。
それが博子の発想やった。
博子は、そのまま書く。
――もちろん、建て付けとしては同伴と反省会、という形でやるつもりです。
ただ、反省会の中身をちょっと変えようと思ってて。
前半2セットは、それぞれで普通に回す。後ろの2セットを、私の“講義”にしようと思ってます。
ここで、少しだけ自分でも笑う。“講義”て。でも、今の流れを言葉にすると、それが一番近い。
――何をするかというと、社長がなんでこんなに私にはまったか。
そこを、鉄板コースの解説とかをしながら、コンサルティングみたいな形で話そうと思ってます。
銀座・六本木と何が違って、社長がどうして私を気に入ってくれてるのか。
そこ、言葉にして腹落ちさせないと、二人の社長も納得しきれないと思うんです。
博子は、そこまで打って、ふっと息をついた。
自分で書いてても、だいぶ変なことを言ってる。でも、多分これが一番きれいや。
ただ遊んで終わるんやなくて、なんで価値が生まれてるかを、本人たちに説明する。
しかも、それを女の子二人にも共有する。そうやって初めて、“チームで戦う”になる。
――その分に関しては、二人からはコンサルフィーを取りたいと思ってます。
一時間十万円のところで遊んではるんやったら、二十万ぐらい、各々包んでいただいて。
社長は別にいらないですよ。
ここは、ちょっと悪い顔で打った。メイン社長は、もう一回刺さってる。
ここで無理に同じ土俵に乗せんでええ。
むしろ、二人に“腹落ち”してもらうための代金として、ちゃんと金額を置く。それが筋や。
――で、そのうえで、その話はさきちゃんとアルカちゃんにもしてるし、鉄板コースも見せてます。
それを踏まえた上で、もう一回アフターで遊んでもらう。
最終的に、その時点で私たち三人の価値を決めてもらう。
そういう流れにしたいなと思ってます。
だんだん、メールというより企画書みたいになってくる。
でも、たぶんこの社長にはこれぐらいの方が伝わる。
ふわっとした“また来てください”より、どういう設計で何を見せるかが分かった方が、
むしろ乗ってくるタイプや。
最後に、博子はちゃんとお願いの形で締めた。
――なので、そういう座組を組みたいから、一週間ちょっと後ろにずらすってこと、
できませんかね。このまま今週やるより、たぶんその方がお互い面白いし、意味が出ると思ってます。
無理やったらまた考えますけど、一回そういう感じで相談させてください。
打ち終わって、博子は文面を読み返した。だいぶ踏み込んでる。
でも、ただ先延ばしするんやなくて、“一週間ずらす意味”はちゃんと出せてる。
これなら、向こうも笑うやろうし、考えるやろうし、また次の会話になる。
送信。
メールが飛んでいったあと、博子はスマホを胸の上に置いて、また少しだけ笑った。
「……ほんま、どこまで仕事にすんねんやろな。」
でも、これが今の自分のやり方や。
遊びと接待とコンサルと反省会の間ぐらい。
その曖昧なところで、ちゃんと価値を作る。
深夜の部屋は静かやった。
でも、次の座組は、もうその時点で動き始めていた。




