清掃会社社長視点。週末に京都の花見を博子としたい。
日曜か。曜日の中でも、日曜いうのは特別や。
仕事の電話もほとんど鳴らん。現場も動いてへん。せやから頭が空く。
空くからこそ、余計なことも考える。火曜、木曜、日曜。
博子が言うてた日程を思い返す。その中でも、やっぱり日曜やなと思う。
京都。哲学の道。出町柳。正直に言えば、二十歳の女の子と歩いたら、
楽しいに決まってる。桜の下を歩くのもええし、川沿いでぼーっとするのもええ。
喋らん時間があっても、気まずくならん場所や。
ただな、とも思う。博子はキャバ嬢や。しかも、今ちょうど上り始めとる。
そんな時期に、丸一日空けさせるのは、店のことを考えたら、正直負担や。
日曜とはいえ、完全オフにするのは簡単やない。そう考えると、
それなりの“返し”は必要になる。シャンパン一本。最低でもそれくらいは下ろさな、
バランスが取れへん気もする。せやけど、「じゃあシャンパン開けて解決」
いうのも、なんか違う。博子は、煽らん。急かさん。金の匂いを前に出さん。
せやからこそ、金で縛るみたいなことはしたくない。じゃあどうするか。
夜を長くする。回数を細かく刻む。無理のない形で、ちゃんと店にも返す。
その選択肢もある。どっちがええか。それは——ヒロコに選ばせた方がええ。
そう思う。あの子は、自分の都合だけで動くタイプやない。
ちゃんと全体を見て、一番角が立たんとこを選ぶ。そこが、ええ。
大勢呼んで、にぎやかにやる。それも、たしかに楽しい。
けど、それは「わしの楽しみ」やない。それは、見せるための時間や。
京都で二人、まったり歩く時間。あれは、誰に見せるもんでもない。
頭の整理がつく。次の現場の段取りも、自然と考えられる。
仕事柄、常に人に気を使う。現場でも、客先でも、家でも。
せやから、気を使わん時間いうのが、何よりありがたい。
博子とおると、不思議とそれができる。べったり来ん。
でも、突き放しもせん。距離感が、ちょうどええ。
だからこそ、独占したくなる気持ちも、正直ある。
けど、それを前に出したら壊れる。せやから、「一日空けてくれ」とは言わん。
代わりに、「どうしたい?」と聞く。京都か。大阪か。短く刻むか。長く取るか。
選ばせる。それが一番や。この季節だけや。桜は待ってくれへん。
せやけど、焦らんでもええ。この関係は、急がん方が、長う続く。
そう思いながら、日曜の予定表を、そっと閉じた。




