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社長3人組の京都から東京までの新幹線でハイボール呑みながら反省会とお手当協議。ある程度包んだらな

京都から東京に向かう新幹線の中。三人の社長は、ヒロコに言われた通り、

ホームの自販機で炭酸を二本買ってから乗り込んでいた。で、席について荷物を置いて、

落ち着いたところで、イキリ社長がカバンから白州のミニボトルを出す。

「ほんまにやるんか、これ。」

「やるやろ。ここまで言われたらやるやん。」

「最後まで座組やな。」

そんなことを言いながら、紙コップにそれぞれ少しずつ注いで、炭酸で割る。

車内販売がどうとか、マナーがどうとか、そういう細かいことを気にする感じでもなく、

でも変に騒がしくもしない。もう今日という一日が濃すぎて、その続きみたいな

テンションで反省会が始まる。

「お疲れ。」

「お疲れ。」

「いやー……昨日今日で濃かったな。」

三人とも、まずはそこからやった。濃い。情報量も、移動量も、会話量も。

けど、不思議と嫌な疲れ方じゃない。むしろ、“まだ喋り足りん”ぐらいには余韻が残ってる。

一人が、白州のハイボールをひと口飲んでから言う。

「しかも、金そんなかかってないぞ、これ。」

「ほんまやな。」

「そこ、でかいわ。」

三人ともすぐに頷く。新幹線代。宿泊費。店でのボトル。店外のご飯。

もちろんゼロではない。でも、東京でやってる“高級高級”の遊び方に比べたら、

感覚としては全然違う。しかも、値段が安いから満足したんじゃない。

金のかけどころが、根本から違った。イキリ社長が、少し真面目な顔で言う。

「要するにやな。高級高級で押してこずに、俺らが普段どんなふうに遊び歩いてるか、

そこを多分わかった上で、違う視点で刺してきてるのがエグいねん。」

「それ。」

「わかる。」

昨日の天満の三円。今日の伏見の蔵。

嵐山の川下り。祇園のランチ。

どれも、“一番高いもの”を見せられたわけじゃない。

でも、それぞれちゃんと残ってる。

「これで、一日の一番高いところポンポン連れてかれても、たぶんそんなに

刺さらんかったと思うねん。」

「うん。」

「上を刺してこずに、下を刺してきたのが、効いてるんやろな。」

その“下を刺す”っていう言い方に、三人とも妙に納得する。

安いものを見せるんやなくて、相場の下から“価値”を立ち上げる。

それが、東京の飲み方とは真逆やった。

「下を刺してくるって、ええ表現やな。」

「やろ。高い酒とか高い店で殴るんやなくて、“なんでこれがこの値段で、

しかもこんな気持ちええんや”で殴ってくる。」

「それに、こっちが女の子の機嫌取らんでええのもでかい。」

アルカちゃんのところでも、さきちゃんのところでも、結局出てきた話や。

寿司、焼肉、女の子のご機嫌伺い。そういう“東京の当たり前”が、向こうでは

ちょっとズレて見えてる。そのズレを突かれると、自分らの遊び方自体が少し恥ずかしくなってくる。

しばらく三人でダラダラ喋る。どこが良かったか。どこに刺さったか。

誰が一番どうやったか。でも、喋っていくうちに、結局同じところへ戻ってくる。

「総括すると、まあ、最終的に博子がすごいっていうのはある。」

「ある。」

「それはもうしゃあない。」

そこで一回、三人とも笑う。でも、話はそれだけじゃ終わらない。

「けどな。」

メイン社長が続ける。

「それについていってる二人も、すごいねん。アルカちゃんもさきちゃんも、

“チームでやってる”感じがちゃんとあったやろ。」

「うん。博子一強やなくて、ちゃんと座組として回してる。」

「そこに対しては、ある程度積んだらなあかんなと思ってる。」

「そらそうやな。」

もちろん、一日遊んでくれたアフターの手間賃もある。時間。体力。移動。気遣い。

それを“店外のコース代”として見てもいいぐらいの動きやった。

ただの昼デートみたいなもんじゃない。ちゃんと考えて、ちゃんと調整して、

ちゃんと刺しにきてた。

「だから、どこをどう評価するか、ある程度可視化した方がええかなって思うねん。」

一人が、紙コップを回しながら言う。

「可視化?」

「うん。昨日の同伴、店内。今日の店外。気づき。反省会で持ち帰ったもん。

そのへん、ざっくりでもええから、分けて考えた方が払いやすいやろ。」

「たしかにな。」

「全部を“なんとなく楽しかった”で払うと、逆に雑になるしな。」

そこから三人で、どこにどれぐらい価値を見たか、軽く言い合い始める。

昨日の夜の店内の空気づくり。三人のチーム感。今日の昼のそれぞれのプラン。

その中での気づき。そして博子の別撮りの“コンサル”っぽい話。

一人が笑う。

「いやでもさ。俺ら、一日百使うとかでイキってたやん。」

「イキってたな。」

「言うてたな。」

「だったら、それに恥ずかしくないぐらいの額は積もうぜ。」

その言い方に、二人とも少し黙ってから頷く。見栄やプライドの話ではない。

自分らが“東京でこれぐらい使うのは当たり前”って言ってきたなら、

今回みたいに“明らかに価値のあるもん”に対して、それに見合う額はちゃんと出すべきやろ、

という話や。

「しかも今回は、向こうが高いもんで殴ってきてないからな。」

「そう。こっちが“積まな”って思う形にしてきてる。」

「それがうまいし、ムカつくし、すごい。」

また笑いが起きる。悔しいけど、認めるしかない。そういう種類の悔しさやった。

窓の外は、もう夕方から夜に変わりかけている。白州の炭酸割りも、紙コップの底が見え始めていた。

「……まあ、また来るわな。」

「来るやろな。」

「これは、来る。」

三人とも、そこはもう疑ってない。問題は、いつ、どういう建て付けで、どこまで払うか。

でも“また行きたい”が先に立ってる時点で、勝負はだいぶ決まってる。

新幹線は、そのまま東京へ向かって走っていく。

三人の社長たちは、紙コップを持ったまま、まだダラダラと反省会を続けていた。

昨日今日の大阪と京都が、少しずつ“次の予算”と“次の口実”に変わっていく。

その変化自体が、もうだいぶ面白かった。

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