社長陣の接待が終わりサンダーバードで土日を振り返り帰宅。泥のように眠る
帰りのサンダーバードに乗り込んで、ようやく三人とも、ふーっと大きく息を吐いた。
朝から京都で別々に動いて、また京都駅で合流して、最後見送って。
気持ちは張ってたし、頭も回してたし、さすがに体は正直やった。
窓側に座った博子が、外の景色を見ながらぽつりと言う。
「……このサンダーバード乗るのも、慣れてきたな。」
さきちゃんが笑う。
「わかる。最初は“なんで京都行くのにわざわざ”って感じやったけど、
今はなんか、これ乗ったら仕事始まるみたいな感じある。」
アルカちゃんも頷く。
「しかも、あれやな。これでまた繋がりできたってことは、さすがに来週はないやろうけど、
また一回は来てくれそうやな。」
「来ると思う。」
博子が即答する。
その返しに、二人とも「やんな」と笑う。
「今日の感じやったら、もう一回は絶対ある。
しかも、向こうの中で“東京と比べた時の大阪京都”っていう軸が、だいぶできた。」
さきちゃんが、それに乗るように言う。
「その間に、六本木か銀座に一回ちゃんと行ってほしいよな。あの、一時間十万で札束で
殴り飛ばすやつ。」
アルカちゃんが吹き出す。
「言い方よ。」
「でもほんまやん。」
博子が笑いながらも真顔で頷いた。
「うん。あれを一回もう一回ちゃんとやってもらって、キャバ嬢たちがあぐらかいてるの
見てもらった方が、たぶん私たちの価値、相対的にめっちゃ上がると思う。」
「間違いなくそうやと思う。」
「ほんまそう。」
三人とも、そこは即一致やった。だいぶ汗かいてる。だいぶ考えてる。
店の中だけじゃなくて、外も回して、動線組んで、待ち時間も喋って、余白も作って。
それを“普通”やと思われたらたまらん。
一回、向こうの“普通”をもう一回味わってもらった方が、こっちの異常さ――いや、良さがわかる。
さきちゃんが、少しだけ真面目な顔になる。
「でもまあ、それって言うたら、大阪京都まで新幹線で来てもらって、宿泊費出して、
っていうところかな。あと、来てもらう面倒くささとかを乗り越えてくれるかっていうのは、
ちょっとハードル高いところはあるけど。」
アルカちゃんも、その言い方に頷く。
「そうやな。“向こうで一時間十万”と、“こっち来る手間”を天秤にかけた時に、
手間の方で負ける可能性はある。」
博子は少しだけ考えてから言う。
「ある。でも、今日の感じやと、それ乗り越えてくるよね。少なくとも“また一回は
行こうか”にはなってる。」
「なってた。」
「うん、なってた。」
三人で確認し合うみたいに頷く。こういうのって、空気でわかる。
あの人らは、今日の京都で完全に“もう一回味わいたい”に入ってた。
しかも一人だけじゃなく、三人ともや。
車内販売ももう終わりかけで、周りの空気も静かになってくる。
窓の外は少しずつ暗くなっていって、新快速ではない独特の揺れが、逆に気持ちを緩める。
アルカちゃんが、シートにもたれながら言う。
「でも、反省会はしような。」
「する。」
「絶対する。」
博子も、そこはすぐ返した。
「今日、私は伏見きれいにはまったけど、センチュリーでの話がちょっと別取り感あったし。
アルカちゃんは嵐山の混み方、読み外してたし。サキちゃんはポワロ入られへんかったし。」
さきちゃんが苦笑いする。
「うん、あれはほんまにやってもた。でも、向かいの喫茶店が意外と刺さったから、
結果オーライ寄りかな。」
「アルカちゃんも、川下り自体は良かったんよな。でも待ち時間の読みは、次絶対直せる。」
「うん。今日のは“気づき”として持っとく。」
博子は、そこで少しだけ声を落とした。
「結局、三人で回してるから、誰か一人が完璧じゃなくてもええねん。
でも、次もう一段上げるなら、今日のポカをちゃんと拾っとかんとあかん。」
その言い方に、二人とも黙って頷く。疲れてるけど、気持ちは悪くない。
むしろ、ちょっと高いところで疲れてる感じやった。勝負した後の、ええ疲れや。
さきちゃんが、少し笑って言う。
「でも、博子ちゃんの“六本木銀座であぐらかいてる女見てこい”は、ほんまその通りやと思う。」
アルカちゃんも笑う。
「私ら、だいぶ働いてるよな。」
「働いてる。しかも、たぶん向こうの子らが悪いとかじゃなくて、構造が違うんやろうけど。
それでも、こっちがこれだけ考えて動いてるっていうのは、ちゃんと比較してもらった方がええ。」
博子はそう言ってから、座席の背にもたれた。急に全身の力が抜ける。
土日、濃すぎた。頭も口も足も使った。
昨日の嫌な流れもあったし、そこから今日を持ち直して、さらに勝ち筋まで作った。
「……あかん。眠い。」
二人が笑う。
「そらそうや。」
「今日はもう寝ていい。」
大阪が近づく頃には、三人ともだいぶ静かになっていた。
喋ることはまだある。反省会もある。次の手もある。
でも、それは今日じゃなくてええ。
新大阪について、そこからそれぞれ帰る。
「またちゃんと話そうね」
「反省会しよ」
「今日はもう寝て」
そんな短いやり取りだけして別れた。
博子は家に帰った瞬間、もうほとんど何も考えられなかった。
化粧を落として、服を脱いで、スマホだけ充電につないで。
ベッドに入ったところで、今日の伏見の酒も、センチュリーの紅茶も、京都駅で笑ったことも、
全部が一気に遠くなる。
土日、疲れた。でも、ええ疲れやった。
次に繋がる疲れやった。そう思ったところまでは覚えてる。
その先はもう、泥のように眠った。




