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アルカちゃん、嵐山から京都へ戻る。気遣いが見えて社長、遊び方変わりそうとつぶやく

嵐山の店を出たあと、アルカちゃんは時計を見て、すぐに頭の中で帰りの導線を組み直していた。

本当やったら、このままタクシーでゆっくり京都駅まで戻ってもよかった。

社長もその方が楽やろうし、話も続けやすい。けど、嵐山のこの時間帯の道は、

読めへん。変に渋滞にはまると、それこそ全部の足並みが崩れる。

「……社長、ほんまやったらタクシーで京都駅まで行きたいんですけど。」

「けど?」

「多分ね、電車乗った方が早いですわ。」

社長は、ちょっとだけ残念そうな顔をしながらも、すぐに笑った。

「もうそこまで読んでんのか。」

「いや、今日はさすがに一回ミスってるんで。ここでまた欲張るとあれやなって。」

アルカちゃんは、そう言いながら近くでタクシーを拾って、JR嵯峨嵐山の方まで出る。

観光地のど真ん中から、少しだけ動線をずらして、帰りやすい方へ持っていく。

その切り替えも、今日一日でだいぶ板についてきていた。

タクシーの中で社長が窓の外を見ながら言う。

「いやでも、今日は思った以上にちゃんと回ってたで。

混んでたのはしゃあないけど、その後の見切り方が早かったし。」

アルカちゃんは、ちょっとだけ苦笑いした。

「ありがとうございます。でも、やっぱりまだチューニング必要です。

今日も福田美術館からの渡月橋テラスまできれいに入れたかったんですけど、

そこは完全に読めてなかったので。」

「いや、その辺をちゃんと“切ります”って言えるのが偉いんちゃうか。」

「そう言ってもらえると助かります。」

JRの駅に着いて、そこから京都駅まで向かう。

電車の中は思ったより混んでいた。観光帰りの人、地元の人、スーツの人、

いろんな温度が混ざってる。アルカちゃんは社長と並んで立ちながら、

スマホでそっと博子に連絡を入れた。

《今から帰るけど、そっちどんな感じ?》

ほどなく返事が来る。

《京都のセンチュリーホテル。京都駅から5分ぐらいのところで、お茶しながら反省会してる。》

アルカちゃんは、その返事を見て小さく笑った。

やっぱり、そう来たか、と思う。先に着いたら、どこでどう待つかまでちゃんと作ってる。

しかも、ただ駅で突っ立って待つんやなくて、センチュリーホテルでお茶。

そこにもう“余白”がある。

「ヒロコちゃんたち、もう先に着いてるみたいですね。」

「お、早いな。どこおるって?」

「近くのホテルで、お茶してますって。」

社長はそこで、ちょっと感心したように息を漏らした。

「……なんかもう、そこまで読みが的確なのすごいな。」

アルカちゃんも、思わず頷く。

「ほんまそうなんですよ。チューニング必要って言いながら、なんやかんや結構形になってるんで。」

「いや、あれだけ色々考えてたら、そらそうなるわな。」

それでもアルカちゃんは、そこで調子に乗りすぎへんように、少しだけ自分を引く。

「いやいやいや、でもやっぱり、改善できるところは改善しながらです。

今日も私は、ちょっと足引っ張ったかなっていうのがあるんで。」

「まだ言うか。」

社長が半分笑いながら言う。でもアルカちゃんの中では、そこは本気やった。

博子のコースは綺麗に酒と街で刺してる。サキちゃんは王道を丁寧に回してる。

自分は急流下りと嵐山で“体験”を出したけど、待ち時間の想定ミスはあった。

そこで勝手に反省が回る。

「最後の評価、多分帰りの新幹線でされると思うんですよ。」

「まあ、するやろな。」

「その時に、私の方が足引っ張ってたら嫌やなっていうのがあるんです。」

社長は、それを聞いてちょっと真面目な顔になった。

「でも、俺は別に足引っ張ったとは思ってへんで。むしろ、混んだ時に

どう切り替えるかまで見せてもらった感じや。」

その言葉に、アルカちゃんは少しだけ救われる。

完璧やなくてもいい。今日の中で見せるべきものは見せられた。そう思ってもいいのかもしれん。

電車は京都駅に近づいていく。

混んでる車内で、二人とも自然と声を少し落とす。

「めっちゃ混みますけど、ちょっとごめんなさいね。」

「いや、こういうのも含めて今日の一部やろ。」

「そう言ってもらえたらありがたいです。」

窓の外に京都駅の構内が見えてきて、アルカちゃんはもう一度スマホを確認する。

博子から《京都駅で集合でいいで。着きそうやったら連絡して》と来ている。その段取りの

滑らかさが、また少しだけおかしい。ここまで全部、女の子側が設計して、社長側は

乗っかってるだけやのに、その方がむしろ楽しい。東京やったら逆やったはずやのに。

「ほんま、飲み方変わりそうやな……。」

社長がぽつりと言う。

アルカちゃんはその言葉を聞いて、少しだけ笑った。

「それやったら、今日は勝ちですね。」

そう言いながら、二人は嵐山から京都へ戻っていった。

帰りの動線まで含めて、今日の“座組”はまだ続いていた。

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