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アルカちゃんグループ。嵐山方面に行くも混みすぎて予定が狂う。リカバリーしながら楽しく会話を続ける

アルカちゃんの方はというと、正直、嵐山までの段階でちょっと読みを外していた。

土曜日の京都、しかもこの時期。人はおるやろうなとは思ってたけど、

思った以上に混んでいた。電車も、駅も、観光客でわちゃわちゃしてる。

「……めっちゃすいません。」

アルカちゃんが、素直にそう言う。

社長は笑っていたけど、さすがに並びの長さを見て、ちょっとだけ目を細めていた。

「意外と混んでたな。」

「そうなんです。ここまでとは、ちょっと読めてなかったですわ。」

トロッコ嵯峨の方まで来て、保津川下りに向かう。

その段取り自体は綺麗やったけど、待ち時間が想定より長い。

アルカちゃんはそこで、ぱっと計算を切り替えた。

「これ、ちょっと他の二人に比べて、時間パツパツになるかもしれません。

最悪、福田美術館と、そこからの渡月橋テラスは切ります。

保津川を下って、ご飯行って、今日はそれで締めて京都戻る形にしましょう。」

社長は、その切り替えの早さに少し感心した顔になった。

「えらい早いな。こういう時、普通もうちょい迷うやろ。」

アルカちゃんは、苦笑いしながら首を振る。

「いや、ここで欲張ると全部中途半端になるんで。それに、足引っ張りたくないんですよ。」

「足引っ張る?」

「うん。見てたら分かると思うんですけど、博子ちゃんが色々考えて、私らにもアドバイス

くれてるんです。だから、こっちもこっちで、ちゃんと回したい。でも、まだ連携不足みたいな

とこはあるんで、今回こうやって待ち時間が長かったのは、私の中では“気づき”です。

次、また来てもらった時は、そこチューニングします。」

社長は「なるほどな」と笑う。

「昨日の感じやったら、また同伴でも何でも行ってくれそうですもん、社長。」

「行くと思うで、マジで。昨日、めちゃくちゃ楽しかったしな。」

そこから、昨日の夜の話になる。三人の女の子が三セットでスッと引いたこと。あれが妙に効いた。

「でも、昨日三時間で帰るって、あれ何やねん。示し合わせたんか?」

アルカちゃんは、ちょっと得意そうに笑った。

「いや、一旦引き返して、様子見ようかなって。熱上がったところでサッと引く。

合コンのスタイルですよね。二次会までやらないっていう。」

社長が吹き出す。

「どこで女子出してきてんねん。」

「いや、あるじゃないですか。二次会やってダレるより、一軒目二時間ぐらいで切った方が

次につながるって。」

「それをキャバでやるんか。」

「やります。」

そんな話をしてるうちに、待ち時間もそこまで苦じゃなくなってくる。

アルカちゃんは、その流れの中でぽろっと言った。

「でも、こうやって待ち時間を喋ってくれるのも嬉しいですよ。こっちがめっちゃ

気ぃ使って喋らなあかん時もありますから。」

社長が「それ、わかるわ」と頷く。

「ディズニーとか行ったら、男の方が気ぃ使って、女の子不機嫌とかあるやん。」

「ありますあります。あれ、意味わからんくないですか?」

「わけわからんな。」

「だって対等な関係やのに。しかも今の感じやったら、社長にいろいろお金出してもらってるのに、

こっちがムスッとしてるのっておかしいじゃないですか。私らは“ありがとう”で来てるんで。

次も来てもらいたいのもあるし、そこで機嫌悪くする意味がほんまにわからん。」

社長は、その言い方にまた少し驚く。

「そこらへん、東京と全然違うよな。」

「違うと思います。たぶん、若い女子としての感覚が違うというか、仕事にしてるか

どうかやと思います。」

「しっかり仕事やな。」

「仕事です。」

そうこうしてるうちに、ようやく保津川下り。船に乗ると、待った分だけ逆に気分が上がる。

七月の川は冷たすぎず、風が気持ちいい。船頭さんが色々話してくれるのも、

いい具合に“観光地っぽすぎない”。

社長は川の流れを見ながら言う。

「京都まで来て、寺社仏閣だけやなくて、こういう体験もありやな。」

「でしょう。陶芸とか抹茶とかもありますけど、こういう体験の方が“刺さる人”には刺さるんですよ。」

「気づきやな。」

「そうです。なんかこういう気づきみたいなものを、社長に提供できたらなって、

うちら三人は結構思いがちです。」

社長が笑う。

「他のキャバ嬢、みんなできるわけちゃうやろ。」

「それはちょっとわからないです。私ら、だいぶ尖ってるんで。東京の社長たちに対しては、

特に尖がりを出してるし。これを他の新地の子がやるかって言われたら、微妙ですね。

だいぶ金積まな、遊びにも行ってくれへん子、山ほどいますから。」

「あー、それは確かにね。」

社長もそこで納得する。この子たちは、やっぱり“普通の遊び方”じゃない。その変わり種を、

今日はちゃんと楽しめてる。

一時間ほど下って、嵐山へ。渡月橋を船の上から見る、というのもまた不思議な体験やった。

「ここ、有名なとこやな。」

「有名です。でも、上からじゃなくて下から見るって、あんまりないでしょう。」

社長が素直に頷く。

「ないな。これはこれでええわ。」

そこから、アルカちゃんはすぐに段取りを戻した。

「じゃあ、店押さえてるんで行きましょう。」

「もう押さえてるんか。」

「昨日の段階で一応。今日の朝、混み方見て微調整したぐらいです。」

「段取り力、ええやないか。」

少し奥に入った店。観光客の流れからほんの少し外れるだけで、空気が変わる。

出てきたのは天ぷら。派手ではないけど、ちゃんと丁寧なやつ。

社長が食って、すぐに言う。

「うまいな。」

「でしょう。」

「でも、嵐山ってラーメンでも二千円ぐらいするんちゃうんか?」

「する店あります。でも、ここも値段そんな変わらないんですよ。」

社長が、店の奥を見回しながら笑う。

「ほんまやな。でも、知ってるやつしか来んような場所やな。」

「そうです。ちょっと客選んでる感じ、ありますよね。」

「じゃあ俺、選ばれし者か。」

「そういうことにしときましょう。」

アルカちゃんが笑う。社長も笑う。

嵐山の混雑は想定外やったけど、その分、うまく見切って、うまく切って、ちゃんと着地させた。

それはそれで、今日のコースの味になっていた。

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