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京都センチュリーホテルで博子とイキリ社長の反省会。コンサルと交際費の話。

センチュリーホテルのラウンジに入ると、やっぱり空気がふっと変わる。

京都駅前やのに、グランビアの方みたいなせわしなさがない。ちょっと奥まってて、

ちゃんと座れて、ちょっとだけ秘密基地っぽい。博子はそこが好きやった。

「ここ、落ち着くでしょう。」

社長はソファに深く腰を下ろして、周りを見渡す。

「落ち着くな。ほんま、ようこんなん見つけるわ。」

「見つけるのが仕事ですから。」

そう言いながら、博子は紅茶を頼む。

ポットで出てくるやつ。1,400円。安くはないけど、場所代も込みで考えたら“ちょうどいい贅沢”や。

紅茶が運ばれてきて、二人とも一息つく。伏見の酒、木桜の御膳、最後の百円酒。

そこまででだいぶ満足してるから、ここではもう何かを足すんやなくて、余韻を整理する時間やった。

社長が、ポットから紅茶を注がれながら、しみじみ言う。

「ほんま、この二回通じて思ったけど、ヒロコの懐の広さというか、奥行きの深さがようわかったわ。

これはやっぱ、銀座六本木で出えへん。」

博子は、ちょっとだけ照れくさそうに笑う。

「ありがとうございます。でも、東京は東京で、あっちはあっちの強さありますよ。」

「ある。でも、それとは別もんや。向こうは向こうで、金使わせる流れとか、

女の子にこっちが気遣う流れとか、完成してる。でも博子は逆や。

こっちがキャバ嬢に媚び売って、いろいろせなあかん感じが薄い。

座組組んでくれて、店に戻してくれて、今日なんか一日付き合ってくれてるわけやろ。

しかも、わしらがデートコース組んでやるんやなくて、ちゃんと観光も混ぜて、流れを作ってくれる。

これはこれで、めっちゃええ経験や。」

博子は、紅茶をひと口飲んでから頷いた。

「帰りの新幹線でも、たぶんこの話盛り上がるでしょ。」

「盛り上がる。絶対盛り上がる。だから、こういうの定期的にやれたらなと思うわ。」

そこまで言ってから、社長は少し顔を上げた。

「で、これからどうするか、って話になるんやけどな。」

博子は、そこで少しだけ空気を締める。

ここからは、ただ楽しかったで終わらせるんやなくて、“次”につながる話や。

社長が言う。

「前の時、ほんまは50払うつもりで、20でした分あったやろ。あれは悪かった。

で、よその社長が40積んでるって聞いた時点で、俺は50出さなあかんなって空気になったから、

それは今回出す。別で。」

博子は、そこで素直に頭を下げる。

「ありがとうございます。」

「でもな、今回の話は、帰りの新幹線でまた整理するわ。満足度がめっちゃ高いのは事実や。

昨日も言うたけど、なんでキャバ嬢にこび売って、こっちがいろいろせなあかんねん、

っていうのはちょっと思った。それやのに、博子らは、座組組んでくれて、反省会で店戻して、

こうやって一日回してくれる。それがええ。」

博子は、少しだけ笑う。

「そう思ってもらえるなら、十分です。」

社長は、そこでふと思いついたように続けた。

「そういう意味でな。これ、異業種交流会みたいな形で経費で切れへんのかな、と思ってる。」

博子は、そこで目を細めた。

「それ、めっちゃありやと思いますよ。」

「やろ?」

「だって、実際、気づきあるじゃないですか。例えばこの前、東京の社長さんが一人で

来てたんですけど。あの人、55払うって言ってくれたのを、私、5万引いて50もらったんです。」

「うん。」

「で、その引いた5万で、申し訳なさげ程度に質問投げたんですよ。

最近増えてる奨学金返済の肩代わりとか、就労不能とか、仮眠室とか。

私のおじさんがそういう福利厚生系の仕事詳しいんで、なんとなく聞いたんです。」

社長が笑い出す。

「なんとなく、でそれ投げるか。」

「投げます。そしたら、その人ほんまに調べてくれて。結果、損失回避できるって話になって、

めっちゃ喜んで電話してきてくれたんですよ。」

「うわ、やば。」

「で、その分浮きそうやったら、こっち使ってくださいね、みたいなことを冗談っぽく言ったんです。

ただ、抜け駆けで来てたから、“その分で他の二人の社長連れてまた来てください”って

詰めたんですけど。」

社長は、紅茶を吹きそうになりながら笑う。

「お前どんだけ考えてんねん。」

「妄想はしてます。」

ヒロコは、平然と返した。

「だから、異業種交流会は異業種交流会で交際費。もしそこから気づきが出て、

会社で新しく考えてくれることがあったら、それはコンサルティング費として切る。

そういう建て付け、全然ありやと思います。」

社長は、そこで急に真面目になる。

「……実はな。奨学金返済の肩代わりのやつって、最近めちゃくちゃ増えてんねん。

俺もそれ、ちょっと調べてみようと思ってる。」

「でしょ。」

「で、もし制度として加えたら、どれぐらい効果出るか。採用のしやすさとか、

空気の良さとか、離職率の低下とか。ある程度数字出たら、それを“こういう気づきから始まった”

って会社に伝えて、この分ぐらいやったら交際費とかコンサルティング費で払えるな、

って形にできるかもしれん。」

博子は、そこですぐに乗る。

「それ、めちゃくちゃいいです。だいたいの“くるみ方”わかったら、こっちも座組組みやすいですし。」

「そこは三人で話し合うわ。交際費の方はみんなで平等にやる。でも、気づきの分に関しては、

博子に払ったる。今日みたいなん、明らかにそこあるし。」

博子は、そこで少しだけ首を振った。

「ありがとうございます。でも、お願いがあるんです。」

「何や。」

「そのコンサルティング費、初回はちょっと下げてもらってもいいです。」

社長が、意外そうに眉を上げる。

「なんでや。」

博子は、少しだけ悪い顔で笑った。

「銀座とか六本木、もう一回ちゃんと飲み直してきてくださいよ。

で、それで私たちとの差を、もう一回見てほしいんです。」

社長が吹き出す。

「お前、そこまで言うか。」

「言います。別に大阪に傾かんでもいいんですよ。東京の外、名古屋とか博多とか北海道とか、

“ちょっと軸ずらしてもええな”って気づきが出たら、それはそれでいい。

でも、六本木銀座のキラキラ女子たちが、シャンパンで殴って、社長たちが媚び売って当たり前に

売り上げてるの見てると、ちょっとムカつくんで。」

社長は、そこで声出して笑った。

「お前、そこは女子やな。」

「女子ですよ。だって、あっちはあぐらかいてるのに、こっちはちゃんと考えてるんですもん。」

「わかるわ。でも、そういう妬み方まで含めて、なんか信用できる。」

「ひどい褒め方ですね。」

二人で笑う。

紅茶はまだ残ってる。

でも、この時間でもう十分やった。

ただの“アフターの茶”やない。ちゃんと、次の話まで作れた。

それが、ヒロコには何より大きかった。

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