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三セット目がきれいに響いたところで女性陣帰宅。社長陣ポカーン。ただ強烈に印象に残った夜やった。

三セット目がきれいに締まったところで、博子がグラスを置いて、三人で顔を見合わせた。

アルカちゃんもサキちゃんも、もう同じことを考えてる顔やった。ここでダラダラ残るより、

切った方がいい。余韻が一番きれいに残るところで終わる。そういう判断や。

博子が、社長たちの方ににこっと笑って言う。

「じゃあ今日は、明日に備えて、私たちも上がらせてもらいます。」

社長たちが一斉に「え?」って顔になる。その反応が、ちょっと面白いぐらい素直やった。

「でも、おらんのかい。」

「そうそう。ここからもう一セットちゃうんか。」

さきちゃんが笑いながら返す。

「いやいや、明日の方が大事でしょ。」

アルカちゃんも続ける。

「だいたい三セットぐらいで終わって、皆さんにちゃんとお帰りいただいて、

ちゃんと寝てもらうんです。」

社長の一人が吹き出す。

「なんやその設計。どんなあれやねん。」

博子は肩をすくめる。

「店に儲けさせる気ないんかって言われそうですけど。」

「いや、ほんまにそれや。店に儲けさせる気ないんか。」

「でも、ボトル三本下ろしてもらったら、二十ぐらいにはなってると思うんですよね。

大阪基準で言ったら、全然“頑張った感”ありますよ。」

社長たちは「二十かあ」と、妙に納得したような、でも不服そうなような顔をする。

東京の感覚で言えば、まだまだいける。でも、今日の流れでそれを無理に伸ばす気にもなってへん。

そこがまた悔しい。

博子は、最後に少しだけ真面目な顔になった。

「私たち的には、明日のお手当て、ちゃんとやってほしいんです。そっちの方が嬉しいですし。」

社長たちが顔を上げる。そこへ、アルカちゃんがさらっと追い打ちをかける。

「それで、東京の六本木とか銀座、もう一回行ってもらって。女の子たちがどんだけ

あぐらかいてるか、一回確認してもらったら、私たちの良さ、もっと際立つと思いますから。」

「言うなあ。」

「でもほんまのことです。」

さきちゃんが笑いながら締める。

「じゃあ、とりあえず今日はお疲れ様です。」

そうして三人とも、きれいに会釈してタクを去った。

残された社長たちは、一瞬ぽかんとする。

「……なんじゃあれは。」

「ほんまやな。」

「こっちが“もうちょいおれや”って思うところで引くんか。」

けれど、その違和感の中に、ちゃんと余韻が残ってる。

さっき聞かされた昼プラン。

伏見の酒蔵。

嵐山の川下り。

祇園の隠れランチ。

その全部が、きっちり頭に残ってる。

イキリ社長がぽつりと言う。

「でも、あれやな。昼プランの話、結構印象に残ってもうたな。」

「わかる。」

「確かに、あれは味わってみたい。」

もう一人が頷く。

「その分、ちょっと積んだるか。」

そういう空気になっていく。

東京で一人三百万使う、みたいな見栄の張り方をしてきた男らからしたら、

こっちではまだ全然使ってない。もちろん、今日のボトルやら店やら、金は動いてる。

でも、それでもまだ“向こうにやられた感”の方が強い。

「なんかな。」

「うん。」

「こっちはこっちで、まだ全然出してへんのに、向こうに全部やられた感あるの、しゃくやな。」

「それな。」

「ほな、明日はこっちも武器出したるか。」

その言い方に、三人とも少し笑う。

今日の夜だけで、完全に心持っていかれたわけやない。けど、確実に“次も見たい”

にさせられてる。そこが悔しくて、でも面白い。

「今日はこれぐらいにしとこか。」

「せやな。寝た方がええわ。」

「明日、昼からやしな。」

そう言って席を立つ。

そのタイミングで黒服が、すっと近づいてきた。顔には営業の笑みやけど、

目は本気で感謝してる。

「本日はめちゃめちゃありがとうございます。今日、どうでしたか?」

三人の社長たちは、そこで少し顔を見合わせる。で、イキリ社長が代表するみたいに言った。

「めちゃめちゃやな。あの女の子ら三人、エグいぞ。」

「ありがとうございます。」

「東京で遊んでるけど、あんな子ら初めてや。いや、普通にまた来たいなと思えた。」

黒服が、その言葉にぱっと顔を明るくする。

「ぜひぜひ来てください。ボトルまで下ろしていただいて、本当にありがとうございます。」

「いや、こっちも面白かったわ。」

「また次も楽しみにしてます。」

そうして、社長たちは気持ちよく店を出ていった。

夜風は少しぬるい。けど、頭の中には明日の酒蔵や川やランチの絵が、

もうかなりはっきり浮かんでいた。

一方、裏に戻った三人の女の子は、少しだけ小声で笑い合っていた。

「多分、これガチで帰った方が、明日余韻残るよな。」

「うん。絶対そう。」

「ちょっと二時間分の時給はもったいないけど。」

博子がそう言うと、アルカちゃんが肩をすくめる。

「でも今日はそれで正解や。」

さきちゃんも頷く。

「余裕見せた、みたいな感じで。あれでええ。」

三人とも、もう分かっていた。今日は勝った。

しかも“飲ませて勝った”んじゃなくて、“帰らせて勝った”夜やった。

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