イキリ社長が3人とも女性陣の明日のプランを聞きわくわくする。褒められ照れる女性陣
「……ほな、ちょっとだけ言ってみようか。」
三人の社長が期待した顔でこっちを見てる中、博子は一回だけアルカちゃんと
さきちゃんの顔を見た。二人とも、まあこの流れならええか、という感じで小さく頷く。
ここまで来たら、明日の“餌”をちょっとだけ撒くのも、むしろ演出や。
博子はグラスを置いて、少しだけ前のめりになった。
「さっき話した鉄板コース、あれのミソって、次回の伏見のお酒につなげるところなんですよ。」
社長の一人がすぐに反応する。
「お、伏見。」
「そう。そしたら次、伏見に行きましょうかって話になるじゃないですか。
だから、明日は伏見に行こうと思ってるんです。」
「ええやん。」
博子は、ちょっと得意げに続ける。
「伏見って、言うたら有名な銘柄を出してる酒蔵があるんですよ。
そこで軽く一杯引っ掛けて、で、その流れで伏見の美味しいお店に行く。
黄桜。そこ、ランチやってるんです。」
「へえ。」
「日本酒もちょっと飲むんですけど、実はそこ、地ビールも結構美味しくて。
やから日本酒だけじゃなくて、ちょっとビールも挟みながらやる。で、最後、
余裕があれば寺田屋行くし、しんどかったらそこは切る。“全部盛り”にはしない、
っていう感じですね。」
一人の社長が思わず笑う。
「なんやそれ。前から中身が続いてるみたいやんけ。」
もう一人も乗ってくる。
「いや、でもそれ楽しそうやな。めちゃめちゃ期待してんで、社長。」
イキリ社長も、もう完全に嬉しそうや。
「ほら見ろ。やっぱ聞いてよかったやろ。」
博子は肩をすくめる。
「だから言うたじゃないですか。明日は明日で、ちゃんと別の角度から刺しに行くんです。」
そう言ってから、今度はアルカちゃんの方を見る。
アルカちゃんは、少しだけ照れたように笑ってから、自分のカードを切った。
「私は、保津川狭に行く予定なんです。」
「保津川?」
「はい。嵐山の奥の方から、急流を一時間ぐらい下るやつ、あるじゃないですか。」
「え、船?」
「そうそう。それをまずやろうかなと思ってて。」
社長たちの目が、ちょっと大きくなる。嵐山、という単語までは想像がついても、
“急流を下る”で急に絵が変わる。
アルカちゃんは、その反応を見ながら続ける。
「で、その後、これはサキちゃんがこの前やってたんですけど。
嵐山ってどうしても観光地価格の店が多いんですよ。でも、そこをちょっとずらすと、
丁寧なご飯屋さんがあるんです。そこ行って、最後は美術館のテラス。」
「テラス?」
「うん。そこから渡月橋が見えるんですよ。だから、最後はそこでゆっくりお茶して、
景色で締める。」
社長たちが、そこでもまた「おお……」と反応する。派手さというより、“考えてる”感がすごい。
「それも面白いな。」
「やろ?」
アルカちゃんが笑うと、一人の社長が半分冗談みたいに言う。
「なんや、他のやつをパクるっていうのもありなんやけ。」
するとアルカちゃんも、そこは即答した。
「ありますよ。むしろシェアしてます。カードを一人で抱えててもしゃあないんで。」
博子も横から頷く。
「そうそう。結局、一人だけ強くなっても、チーム崩れたら意味ないんで。」
その言い方に、社長たちがまた少し感心したような顔になる。
“夜の店の女の子”の会話というより、もう完全にプロジェクトの話や。
そこで、最後にサキちゃんが、自分の分を出す。
「私は……たぶん一番パンチ弱いかもしれないですけど。」
「いやいや、そんなことないやろ。」
「いや、二人に比べたらちょっと王道寄りなんで。」
そう前置きしてから、サキちゃんは続けた。
「祇園の中に、隠れたお店があるんです。夜は結構するけど昼リーズナブルにランチやってて、
でもあんまりガチャガチャしてない。
そこをまず選んで。で、そのあと、ど真ん中にあるのに結構空いてるカフェがあるんで、
そこでゆっくりする。そんな感じです。」
一人の社長が笑う。
「それもそれで悪くないな。サキちゃん、結構王道系やな。」
「そうなんです。私、王道をちゃんと綺麗に回す方かなって。」
「でも、逆にそれが一番むずいんちゃうか。」
「そうかもしれないです。」
サキちゃんは、そこを否定せずに受ける。その受け方がまた、妙に自然やった。
三人の社長たちは、それぞれのプランを聞きながら、もう完全に“明日が楽しみ”の顔になっていた。
伏見の酒。
嵐山の川下りとテラス。
祇園の隠れランチと空いたカフェ。方向も、温度も、締め方も全部違う。
でも、どれも“寿司・焼肉・映えるだけ”ではない。
イキリ社長が、しみじみ言う。
「なんやろな。お前ら、ほんまにカード多いな。」
博子が笑う。
「いや、カードが多いんじゃなくて、使い分けてるだけです。」
「それがすごいんやろ。」
アルカちゃんもさきちゃんも、その言葉にちょっと照れながら笑う。
店の中の空気は、もうかなり出来上がっていた。
ボトルも入ってる。気づきもある。しかも明日の予告まで見せられた。
社長の一人が、最後にぽつりと呟く。
「……これ、明日絶対おもろいやん。」
その言葉に、三人の女の子たちは、今度はきれいに同じ顔で笑った。
“そう思わせた時点で、こっちの勝ち”
そんな空気が、テーブルの上にふわっと広がっていた。




