店内ニセット目、空気も交じり百年の孤独と響がはいり女性陣感謝。博子の設計の刺さり具合に興味津々
二セット目に入る頃には、三人の社長たちもだいぶエンジンがかかってきていた。
一セット目で、店外の話と店内の話がうまいこと一本につながったせいか、
空気がもう“ただ飲むだけ”ではなくなっている。それぞれが、それぞれの同伴で食らったものを、
ここで少しずつ混ぜたくなってる。そういう顔やった。
その中で、一人の社長が急に言う。
「まあ、ありやな。」
グラスを置いて、少し考えた顔をしてから続ける。
「お前ら、別に高いボトルを求めてる感じちゃうやろ。
せやけど、ここまで色々やってくれてるんやったら……森伊蔵以外にも、
響と百年の孤独、入れとこか。」
一瞬、三人とも目を丸くする。
「え、ほんまにいいんですか?」
アルカちゃんが先に反応し、サキちゃんも「ありがとうございます」とすぐに続く。
博子もさすがに少し驚いた顔になった。
社長は笑う。
「三人が一本ずつもらうような形になるんかな、こういうのって。」
「そうですね。全然ありがたいです。」
「別に抜きもんもしてもいいんですよ。」
さきちゃんが少し冗談っぽく言うと、社長が笑って首を振る。
「いや、そこまで露骨なことはせんよ。でも、なんやったら個別で聞いたわ。
東京で刺さってる三人のうちの一人が、勝手に先週来たやん。」
その一言に、博子が「ちょ、アルカちゃん、なんでそんな話するんよ」と、
思わず半分ツッコミみたいに言う。アルカちゃんは肩をすくめて笑う。
「いや、だって流れとしては大事やん。」
社長たちは、そのやり取りがまた面白いらしい。完全に興味がそっちへ向いている。
「実際、どうやったん?」
聞かれて、アルカちゃんが少し前のめりになる。
「まあ、実際そうなんです。東京から3人組で来店されて、一人だけ抜け駆けで一人
きはったんです。あの人、前回博子ちゃんだけ刺さりすぎて、ちょっと関係悪くなりかけたんです。」
「悪くなりかけた?」
「はい。三人組やのに、一人だけ勝手に抜け駆けして来て、こっちも他の二人から探られるし、
向こうでも“なんでそんな刺さってるんや”ってなるし。で、そのままやと空気微妙やったから、
最後のセットだけ私ら三人も入らせてもらって、ちょっとテンション整えたんです。」
サキちゃんが横で頷く。
「そうそう。チーム戦って建て付けやったのに、博子ちゃんだけ飛び抜けたら、
それはさすがにこっちもやりにくいし、向こうも変な温度になるんで。」
社長たちは、それを聞きながら「なるほどな」と納得したように頷く。
東京の男同士のバランスもあるし、店の中の女の子同士の空気もある。
その辺を“整える”ところまで含めて座組なんやと、今やっと見え始めてる感じやった。
アルカちゃんは続ける。
「で、二日でワンセットみたいな感じなんですよ。一日目が、同伴からお店で飲むところまで。
で、明日またアフターで、私ら別々で遊ぶじゃないですか。そこまでやって、
最後に“今日どうやったか”と、お手当ての話をしてもらう。そういう流れなんです。」
「へえ。」
「で、その時に……博子ちゃんだけ、いくらか知らんけど差がですぎたんですよ。」
場がちょっとざわつく。その言い方だけで、だいたいの空気はわかる。
「なんでそんなことになるんや。」
博子が、そこで少し困ったような顔になる。
アルカちゃんは、あえてそこを代わりに説明した。
「うちらって、だいたい“気づき”とか“ずらし”とか、そういうのを味にしてるんです。
でも、博子ちゃんは、その辺の線の引き方がちょっと強いんですよね。
相手の頭をちょっとひっくり返すのがうまい。」
サキちゃんもすぐに乗る。
「たぶん、今日来ていただいてる中でも、博子ちゃん担当の社長さん、
もう一回刺さってると思うんですよ。」
イキリ社長が苦笑いする。
「まあな。」
すると、別の社長が身を乗り出す。
「その辺のこと、ちょっと聞いたんちゃいますか、って聞くまでもないわ。
めっちゃ聞いたで。こいつ、自慢してくるねん。“お前らも見とけ”みたいな感じで。」
メイン社長が「いや、自慢というか共有や」と言い返すと、みんな笑う。
でも、その笑いの中で、一人が改めて博子を見る。
「……それ、ちょっと教えてや。」
博子は、そこでさすがに少し困った顔をした。
普段みたいにスッと返せる話でもない。何せ、自分の“刺さり方”を、
自分の口から説明せえと言われてるんやから。
「いや、えっと……。」
「なんや、その困り方。」
「だって、そういうのって、こっちが“こうやって刺しました”って言うの、
ちょっと違うじゃないですか。」
アルカちゃんとさきちゃんが、そこでちょっと笑う。
二人とも、博子がこういう時に妙に困るのを知ってる。
「でも、聞きたいねん。」
「何がどう違うんか。」
社長たちは、もう半分本気で乗り出してる。ボトルも入った。気づきもあった。
ここまで来たら、次は“構造”を知りたい。そういうモードに入っていた。
博子はグラスを持って、一回だけ口をつけてから、視線を落とした。
「……うーん。たぶん、“高いもん見せる”んじゃなくて、“ズラして残す”ってことやと思います。」
その言葉だけでも、社長たちはちょっと静かになる。
二セット目の空気が、少しだけ深い方へ沈んだ。
いよいよ、本当に“反省会”が始まりかけていた。




