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店内1セット目。社長陣が女性陣の意図を汲み取る。とりあえず森伊蔵1本。

三人の社長がそろうと、さすがに場の空気が一段上がった。

別々で同伴してきた熱を、それぞれまだ少し引きずってる。こっちも三人とも、

それをちゃんと感じていた。

「お待たせしました。」

博子が先に声をかけると、アルカちゃんとさきちゃんも並ぶ。

社長たちもどこかご機嫌や。さっきまでの待ち時間で、それぞれ軽く答え合わせみたいなものを

してきたんやろう。“今日はなんか違うな”その感覚を三人とも持って戻ってきている顔やった。

「ほな、改めて仕切り直しましょうか。」

博子がそう言うと、イキリ社長が笑う。

「そうやな。ここからが本番やろ。」

席について、まずは何本かボトルを開けて、そこから様子を見る流れになる。

東京の社長たちからしたら、こういう時に何を入れるかも一つの“格”やけど、

今日はちょっと空気が違う。

「じゃあ……さすがにカッコつかへんから、森なんちゃらぐらいは入れよか。」

「森伊蔵一本、ですね。」

「そうそう。それ。」

場が軽く笑う。

高すぎるもので殴るんやなくて、でもちゃんと“今日は来たで”の意思は見せる。

そのバランスを取った感じやった。

ボトルが入ると、三人とも素直に喜ぶ。

「めっちゃありがとうございます。これ一本置いてくれるだけで、

“また来てくれるかも”って期待感高まるんで、普通に嬉しいですよ。」

アルカちゃんがそう言うと、社長の一人が苦笑いする。

「いや、ほんまやったらもっと高いやつか、そういうの入れなあかんのかなって思ったんやけど。」

「でも?」

博子が聞き返すと、その社長はグラスを持ちながら言う。

「なんか三人で喋ってたら、そういうんよりも、こういうのの方が響くんかなって思って。」

「何の話ですか?」

アルカちゃんが笑いながら聞くと、別の社長が横から入る。

「いや、お前ら三人、それぞれ店も飯も色々やってくれたけど、結局テーマは一緒やったなと思って。

“東京のもんより、私らの方がちゃんと考えてるでしょう”ってことなんやろなって。」

三人が一瞬顔を見合わせて、ちょっと笑う。

「やっぱりバレます?」

さきちゃんが先に言う。

社長たちが「バレるわ」と笑う。

博子がそこで、少し真面目な顔になる。

「だって、寿司と焼肉ばっかり行く女の子って、ちょっと何も考えてないんかなって思うんですよ。」

「うわ、言うなあ。」

「いや、でも東京と大阪は立地も違うし、相場も違うし、女の子の層も違うじゃないですか。

六本木とか銀座の方が、全国からかわいい子集まってるやろうし。そこはそれで事実やと思うんです。」

社長たちが、そこには素直に頷く。その上で博子は続ける。

「でも、それをひっくり返そうと思ったら、こっちは“面白さ”とか“気遣い”とか、

そういうところで頑張らんとあかん。枕がどうとか、そういうので勝負したいわけじゃないし。

それやったら、ほんまに大阪ならエースグループとか、かわいい子を売りにしてる店

行ったらいいじゃないですか。」

「なるほどな。」

「だから、私らはちょっと違うかなって。チームでやらせてもらってるのも、そういう理由です。」

アルカちゃんも頷く。

「私も、単純に“せっかく来てくれるのに、なんでこっちが何も考えへんねん”って思うんですよね。」

さきちゃんもすぐに続く。

「そうそう。往復の新幹線代と、宿泊費と、来る手間。そこまでかけて来てもらうなら、

“来てよかった”って思うものを出さなあかん。私ら、その辺は普通に考えます。」

社長たちは、それを聞きながらちょっと静かになる。

押しつけがましくなく、でも芯のある話やった。

今日それぞれ別々に受けた接待の意味が、ここで一本の線になって繋がっていく。

メイン社長がぽつりと言う。

「……ちょっと価値観、変わりそうやわ。」

「ほんまですか?」

「うん。東京で遊ぶ時って、どっちかいうたら“金で殴る”か、“機嫌取る”か、

みたいな感じやったから。でも今日、お前ら見てたら、“考えてもてなす”っていうのが

あんねんなって。」

アルカちゃんが笑う。

「それが大阪のええとこかもしれないですね。」

「いや、ほんまにな。今日、三人で別々に回ってきたのに、帰ってきたら全部同じ話に

なるんやもん。それ、ようできてるわ。」

博子は、そこで少しだけ肩の力を抜いた。今日の狙いが、ちゃんと届いてる。

別々で投げた球が、店の中で一つの価値観としてまとまり始めてる。

それが見えただけで、かなり大きい。

「じゃあ、その価値観、もうちょい店で深めていきましょうか。」

そう言ってグラスを合わせる。笑い声が重なって、空気が一段なめらかになる。

ボトルを一本入れたから盛り上がってるんやない。

“考え方”が届いたから、気分よく飲めてる。そんな一セット目やった。

そうして、いい温度のまま、一セット目は気持ちよく終わっていった。

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