女性陣が着替えている間社長3人で体験を共有。高いじゃなく街を感じる。爪痕を残しに来ている。反省会が本番やなと感じる
店に入るまでの少しの待合時間。三人の社長たちは、それぞれ別の女の子と回ってきた
同伴の余韻をまだ引きずったまま、軽く飲みながら話し込んでいた。
最初に口火を切ったのは、博子担当のイキリ社長やった。
「いや、今日はまたやられたわ。」
その言い方が、もう半分ご機嫌や。置いてけぼりを食らった二人も、それを見てちょっと笑う。
「またかいな。」
「今度は何やねん。」
メイン社長は、待ってましたとばかりに喋り出す。
「まず、天満や。日本酒一合3円、マグロ3円、ハイボール50円。
もう意味わからん看板を、最初にバーンって当てられるねん。」
二人が同時に吹き出す。
「またその3円の話か。」
「でもお前、それめちゃ刺さってるやん。」
「刺さるやろ。だって、東京であんな相場観ないもん。しかも、そこをただ見せるだけやなくて、
“この街の文脈”として当ててくるんよ。」
メイン社長は、ちょっと真顔になる。
「で、その後に芋焼酎と鶏の店に入るやろ。そこで頼み方も上手いし、店の見せ方も上手い。
値段も安い。でも、それ以上に、博子の思想が見えるんや。」
「思想?」
「そう。“高いから価値がある”んやなくて、“安いのにちゃんと価値がある”っていう見せ方。
あいつ、全部それで組んでる。」
二人が少し黙る。
メイン社長がここまで言う時は、だいたい本気で刺さってる時や。
「東京と全然違うな、って思ったわ。」
その一言が、妙に重かった。
すると今度は、アルカちゃんについていった社長が乗ってくる。
「こっちは鯛飯や。」
「鯛飯?」
「そう。北浜の路地の店や。最初ちょっと“ほんまに大丈夫か”って思うやろ。
でも、行ったらもう仕切りが早い。ナス、だし巻き、唐揚げ、先に鉄板を頼んで、
鯛飯を炊かせとく。あの段取りの良さは、正直よかった。」
イキリ社長が笑う。
「あの子、そこ強そうやもんな。」
「強い。しかも、東京の女みたいに“寿司行きたい”“焼肉行きたい”って言ってこん。
逆や。“そんなの東京で散々やってるでしょ”って言って、違うもんを見せにくる。」
もう一人の社長が、少し眉を上げる。
「へえ。」
アルカ担当の社長は、そこで少し真面目になる。
「でな。“東京の女の子、社長を軽く扱ってません?”っていう話をされて。それが、
ちょっとドキッとした。」
「ドキッとした?」
「うん。俺らって、寿司か焼肉行って、ジャン負けで払って、店入って、ボトル入れて。
それを“こっちが接待してやってる”ぐらいの感覚やったやん。でも向こうからしたら、
“来てくれるだけありがたい”っていう発想もあるらしい。」
イキリ社長が「そうそう」と頷く。
「マクドでも同伴うれしいとか言うてたやろ?」
「それそれ。そこは結構効いた。俺は、寿司でも焼肉でも金額高い方が、
ちゃんとした同伴やと思ってたから。」
三人目――さきちゃんについていった社長も、ここでようやく口を開いた。
「俺のとこは、ふぐや。」
「おお、ふぐ。」
「それはええやん。」
「うまかった。しかも、大阪言うたらふぐかな、っていう出し方も良かった。寿司と焼肉に
せんのは偉いわって、俺も言うた。」
二人が笑う。
「お前も同じこと思ったんや。」
「結局そこに行くんやな。」
「そら行くやろ。で、さきちゃんが、“東京の人来る時はできるだけ街を感じてもらいたい”
って言うてて。その感覚も、なんか新鮮やった。」
ふぐ担当の社長は、少しだけ考え込む。
「俺らって、店に行く前の同伴って、前座ぐらいにしか思ってなかったとこあるやん。
でも向こうは、そこで“何を残すか”まで考えてる。」
イキリ社長が、そこで小さく笑う。
「だから刺さるんやろな。」
三人とも、一回そこで黙る。今日、それぞれ全然違う場所に連れていかれてる。
でも、持ち帰ってきた感想には共通点がある。
高いものを見せつけられたわけじゃない。むしろ、気を遣われた。
こちらが接待するんじゃなくて、向こうが“接待します”で動いていた。その違いが、じわじわ効いてる。
アルカ担当の社長が、グラスを傾けながら言う。
「俺、今日たぶん一番値段高かったと思うで。ふぐでもないし、博子のところみたいな安さでもない。
でも、それでも“こっちを気遣ってる”感じは、めっちゃあった。」
「そこやな。」
「うん。東京やと、結局俺らが店選んで、機嫌取って、金払って、って流れやん。
でも今日は、向こうが“どうしたらこっちが楽か”を考えてた。それでちょっと飲み方変わりそうやな、
って思った。」
イキリ社長が、その言葉に頷く。
「わかる。値段だけで言うたら、俺は博子のとこが一番安かった。でも、価値は高かった。
安いのに高い、って変な感覚や。」
「その感覚、今日全員持って帰ってるやん。」
三人で、また少し盛り上がる。
誰が一番よかったとか、どこが高かったとか、そういう単純な話ではなくなっていた。
それぞれが、それぞれの場所で“東京とは違う飲み方”を一個ずつ食らっている。
その共通体験が、ちょっと面白かった。
「……これ、次どうなるんやろな。」
誰かがそう言うと、メイン社長が少し笑った。
「たぶん、反省会が本番や。」
三人とも、その言葉に納得するように頷いた。別々で見てきたものを、ここで混ぜる。
それが、今日の“座組”の肝なんやろうと、みんなもう何となくわかり始めていた。




