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東京イキリ社長3人組で襲来。今日は刺すでと気合充分の女性陣

土曜日。博子は、朝から妙に目が冴えていた。昨日の清掃会社社長の一件は、

正直まだ胸の奥に残っている。けれど、そこで縮こまるのは違う。今日は、

東京イキリ社長三人組を迎える日。こっちはこっちで、大勝負や。

鏡の前で髪を整えながら、博子は自分に言い聞かせる。

「整えろ。今日は刺しにいく日や。」

昼過ぎ、アルカちゃんとさきちゃんに電話をかける。今日は“チーム戦”やとみんな分かってる。

「今日はよろしくな。ちょっと、がっつりいこうね。」

博子がそう言うと、アルカちゃんがすぐに返す。

「うん。でも無理せんといてや。昨日の今日やし。」

さきちゃんも電話で気合が入っているのがわかる。

「最悪、取りこぼしてもええって言うてたやん。全部取らなあかんって思うと、逆に硬くなるし。」

博子は、小さく笑って、でも目は真剣なままやった。

「取りこぼしてもええ。けど、ぶつけられるだけのものは、ちゃんとぶつけよう。

今日は“無理して勝つ”じゃなくて“出せる最大値を出す”や。」

昨日みたいな嫌な流れがあっても、こうやって並んでくれる人がいる。それだけで、

夜の勝負は半分勝ってるようなもんや。

夕方。新大阪駅に向かう。

土曜の駅は、人の流れが絶えない。観光客、出張帰り、家族連れ。そんな中に、

妙に空気のでかい三人組は、遠くからでもすぐ分かった。

「来たで来たで。」

メインの東京イキリ社長が、もう顔に“今日は面白いもん見せてもらうぞ”って書いてある。

横には、似たように少しオラついた社長が二人。東京の真ん中で磨かれた“自信”と“値踏み”を、

そのまま着てるような男たちやった。

「どんなもん見せてくれんねん。」

一人が笑いながら言う。もう一人も、負けじと肩を揺らす。

「前回、こいつだけ抜け駆けして帰ってきたからな。今日はちゃんと見せてもらうで。」

博子は、その圧を真正面から受け止めながら、にこっと笑った。

「そんな同じように刺さるかどうかは、わかんないです。でも、私は私でちゃんと用意してきたんで。

とりあえず、ホテルで荷物置いて、行きましょうか。」

イキリ社長が「ええやん」と頷く。もうその時点で、完全に“乗って”きてる。

昨日までの嫌な流れなんか、全部上書きできそうなくらい、場の空気が前に出てる。

三人はまずホテルへ荷物を置きに向かう。そこからが、今日の本番や。

ロビーを出たところで、博子が改めて段取りを切る。

「ほな、ここから三者三様で行きます。私は天満です。大阪から一駅だけ乗ってもらって、

そこから私の“入り”が始まります。」

イキリ社長がニヤッと笑う。

「来たな、また。あの雑多な世界。」

「はい。今日は前回とはちょっと違う角度でいきます。」

その言い方だけで、イキリ社長の目がもう楽しそうや。

一方で、アルカちゃんが横からスッと入る。

「私は北浜です。落ち着いた方でいきたいんで、ビル街の空気ごと使わせてもらいます。

タクシーでそのままご飯屋さん行きましょう。」

彼女の声は、いつも通り少し柔らかい。でも、その柔らかさが逆に強い。東京の社長の一人が

「それもええな」と、すでに乗せられている。

さきちゃんも負けてない。胸を張って言う。

「私は新地です。言うたら、王道でいきます。ちゃんと店、コースで用意してますんで。」

その“王道”って言葉に、もう一人の社長が笑った。

「ほう。わかりやすくてええやん。」

博子は、そのやり取りを見ながら思う。

これや。同じ土俵で戦わへん。それぞれの味を、ちゃんと分ける。

そうしたら、比べられても“優劣”やなくて“好み”になる。

タクシーが三台、順に滑り込んでくる。

イキリ社長は、博子の方を見て言う。

「ほな、またな。今日、ちゃんと見せてくれよ。」

「もちろんです。」

北浜組も、新地組も、それぞれ相手を乗せてドアが閉まる。一瞬だけ、駅前の空気が静かになる。

そして次の瞬間には、三台のタクシーが、別々の方向に動き出した。

天満、北浜、新地。

三つの街。

三つの座組。

三つの勝負。

博子は窓の外を流れる大阪の夕方を見ながら、静かに気合いを入れ直した。

「……よし。今日は、ちゃんと刺す。」

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