東京三人社長の飲み会終盤。日曜日に博子の予定聞くわ。あと博子ありきにならんように調整しよう!
金曜の夜の飲みの終盤、三人の社長の空気は、最初の「なんで一人で行ってん」みたいな
軽い詰めから、すっかり「じゃあ次どうする」へ移っていた。メイン社長があれだけ
熱量高く話すと、もう二人とも半分は腹が決まってる。
「……で、来週、行くか。」
一人がそう言って、グラスを置く。もう一人も、少し考えるふりをしてから頷く。
「まあ、一回は見とかな、って感じやな。お前だけそんな刺さってて、
俺ら何も知らんままってのも気持ち悪いし。」
メイン社長は、その言葉を聞きながらも、さっきまでの勢いだけでは返さなかった。
一回大阪に抜けがけして行ったからこそ、今の博子の状況が見えている。
面白い。刺さる。価値がある。でも、それと同時に“向こうが多忙になってる”のも本当や。
「来週行くのは、俺もええと思う。でも、博子は今、かなりパンパンになってる。」
「そこまでか。」
「そこまでや。土日、ほぼ埋まり始めてるし、こっち以外のメンバーの座組もあるやろうしな。」
一人が「メンバーの座組って、もう完全にプロジェクトやな」と笑う。
でも笑いながらも、その言葉に現実味があるのがちょっと怖い。
ただの夜遊びの話やったはずが、いつの間にか“どう回すか”まで考えなあかん段階に来てる。
メイン社長は頷きながら言う。
「だから、俺も無理やり押し込むつもりはない。日曜に聞いとくわ。
向こうが土日パンパンやろうから、日曜の終わりぐらいに“来週いける?”って一回確認する。」
「日曜って、お前また連絡取る気満々やな。」
「そら取るやろ。でも、ここで“来週絶対行く”って勝手に決めるのは違う。向こうの段取りがある。」
その言い方に、二人は少しだけ意外そうな顔をした。
前やったら、メイン社長がそのまま「押さえとくわ」で話を進めても不思議やなかった。
でも今は違う。それだけ“博子の価値”を理解したってことでもある。
一人がぼそっと言う。
「問題はさ。結局、全員博子ありきになってることやな。」
場が、少しだけ静かになる。それは三人とも、薄々分かってたことや。
最初は、三人で大阪行って、三人の女の子と当たって、誰がどう刺さるかを楽しむぐらいの感覚やった。
でも、メイン社長が一人だけドハマりしたことで、重心がズレた。
博子が中心になってしまった。しかも、それが“本人の人気”だけやなく、
“座組そのもの”に関わってるからややこしい。
もう一人が、その点をはっきり言葉にする。
「それ、博子にとっては、悩みの種やろうな。他の子とのバランス、絶対考えるやろ。
あいつ、そこで雑に“私だけでええやん”って行くタイプちゃうやろ。」
メイン社長は、少しだけ笑って頷く。
「行かへんな。むしろ、そこをめっちゃ気にしてる。今回だって、女の子二人にも
鉄板コースの考え方をシェアしてたし“チームでやる”方向に必死に戻してた。」
「そこが、また刺さるんやろな。」
「そう。自分だけ儲かればいい、じゃない。周りも立てながら、自分の価値も落とさずに
回そうとしてる。そこはたぶん、向こうのしんどいところでもあり、面白いところでもある。」
一人が腕を組む。
「ってことは、来週行くにしても“ヒロコだけ寄こせ”みたいな空気で行ったら終わるな。」
「終わる。」
メイン社長は即答した。
「そこは大人の対応や。他の子の顔も立てて、最初は三対三で入る。で、店の中で反省会なり、
まとめの座組なりをやる。そこにヒロコの価値を置く方が、結局うまく回る。」
もう一人が「なるほどな」と、グラスの残りを飲み切る。
「ほな、来週行く方向で。ただ、日曜にお前が聞く。博子の都合優先。で、全員ヒロコありきに
なりすぎんように、そこも相談しながら。」
「そうやな。」
メイン社長も、そこでようやく少しだけ肩の力を抜いた。
「正直、俺はまた一人で行きたいぐらいやけどな。」
二人が笑う。
「それはあかん。」
「また置いてかれるのは勘弁や。」
三人で笑って、その日の話は締まっていった。
結局、答えはまだ出てへん。
来週行けるかどうかも、日曜に聞いてみな分からん。
ただ、一つだけは全員の中で共有された。
博子は、もうただの“店の女の子”ではない。向こうの都合で好きに引っ張れる相手でもない。
だからこそ、こっちも雑には扱えない。
「……ほな、日曜に聞いといてくれ。」
「わかった。」
メイン社長がそう返して、三人は席を立つ。
金曜の東京の夜は、次の大阪行きの“仮予約”だけを残して、静かに終わった。




