表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/92

日曜日。清掃会社社長との昼焼き肉店外。最近の仕事疲れとキャバクラ疲れについて話す

日曜日。昼の梅田は、夜の北新地とはまるで別の街や。

人の歩く速度が違う。スーツも少なく、家族連れやカップルが多くて、空気が軽い。

私は少しラフな服を選んだ。焼肉の匂いがついてもいい格好。

夜のドレスとは真逆やけど、今日はそれでええ。

待ち合わせ場所に来た清掃会社の社長は、

私を見るなり「その感じ、ええな」と笑った。

店の雰囲気と違うのが、逆に新鮮らしい。

半個室の焼肉屋。梅田の真ん中にあるのに、昼は落ち着いている。

二千円台のセット。安いけど雑じゃない。私がこういう店を選ぶ理由は、

「気を張らなくていい」それだけや。焼き網に肉を乗せると、

脂と煙の匂いが一気に広がる。この匂いでテンションが上がる人は多い。

「昼焼肉、久しぶりやわ」そう言われて、少し安心する。

仕事の話が自然に出てくる。人手不足の話、現場の愚痴、クレーム対応。

私は聞き役に回るけど、ただ相槌を打つだけにはならんようにする。

「それ、現場の人きついですね」

「でも社長が直接聞いてるって、結構救いになってると思います」

そう言うと、社長は「そう言われると救われるわ」と少し照れた。

食べながら、社長がぽつっと言う。「博子ちゃんの店選び、ほんま落ち着くわ」

その言葉の奥に、最近のキャバクラへの疲れ があるのは、もう何となくわかる。

「最近、シャンパン煽る子多いやろ?」私は頷く。否定も肯定もせえへん。

「別に使うんが嫌なわけちゃうねん」

「でもな、毎回それやとしんどい」私は黙って聞く。

ここで共感しすぎると軽くなるし、否定すると嘘になる。

「それに、そういう子ほど人気ありすぎて卓につかれへん」

「指名しても、ヘルプばっかり」「外でも会えへん」

そこまで聞いて、私はようやく言葉を選んで口を開く。

「私、それがちょっと苦手なんです」「え?」

「人気すぎて卓つけないのに、店外もしないっていうの」

社長は驚いた顔をしたあと、「そこ、わかるんや」と言った。

私は続ける。「煽るのも得意じゃないですし」

「でも、来てくれた時間はちゃんと大事にしたいです」

「店外も、雑に埋めたくないんです」

それは、自分のやり方を説明するというより、

線引きを共有する感じ や。「最近の子にしては珍しいな」

そう言われて、少しだけ胸の奥が軽くなる。

焼肉は腹八分で終わる。ちょうどいい量。ちょうどいい時間。

「仲良くなったら、花見でも行きたいな」

そう言われて、私は少し考えてから答える。「京都、いいですね」

「ただ、出勤の関係で大阪天満宮とか桜宮になるかもしれません」

「それでも大丈夫ですか?」

社長はすぐに頷いた。「全然ええ。むしろ気ぃ使わんで済む」

その反応でわかる。この人は、派手さより

“一緒に過ごしやすい時間”を求めてる。別れ際、「最近の楽しみやわ」

そう言われた。私は深くお辞儀もしない。

「ありがとうございます。無理ないペースでお願いします」

帰り道、思う。煽らなくても、逃げなくても、ちゃんと続く関係は作れる。

人気すぎて卓につけない子でもなく、店外だけで埋める子でもなく。

店と外を、ちゃんと線でつなぐ。このやり方、時間はかかるけど、

きっと長く続く。——そう確信できた、昼焼肉やった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ