東京メイン社長。他の二人の社長に博子のすごさと会社の数字が変わり始めたことを力説する。今度また三人で行こう
金曜の夜、三人組の社長たちの飲みは、だんだんと“ただの近況報告”では済まない空気になっていた。
メイン社長が大阪で何を見て、何に刺さったか。そこがもう、二人の興味のど真ん中や。
グラスを置いて、メイン社長が少し苦笑いしながら言う。
「まあ、さすがにちゃんと言うけど。アルカちゃんとかさきちゃんとも話したんよ。お前ら、
ちょっと探ってたみたいやん。」
二人が「あー」と笑う。
「そら探るやろ。」
「お前、月曜から明らかに浮かれとったし。」
メイン社長は肩をすくめる。
「せやねん。だから、あの二人がちょっとバツ悪そうにしてて。俺もなんか申し訳ないなと思って、
博子ちゃんに迷惑かけたと思ってちょっと大目に包んどいた。」
「いやいや、それ気にしすぎやろ。」
「そうそう。どう見てもお前だけうかれてたから、そら周りも察するわ。」
そう言われて、メイン社長も笑う。
「まあな。でも、その後が良かったんよ。あの二人も俺の“鉄板コース”を一回味わったらしくて。
四人で反省会みたいな空気になって、めっちゃ良かった。なんか“チームでやろう”って感じにしてて、
あれは賢いなと思った。」
一人が首を傾げる。
「へえ。揉めるんやなくて、チーム戦に持ってったんか。」
「そう。で、良かったらまた来てほしい、って感じやったし。たぶん、俺の刺さり方を見て、
向こうも色々考えてる。次はもうちょい面白くなると思うで。」
二人はすっかり前のめりや。もう「なんで一人で行ったんや」の温度は抜けて、
「その次、俺らも見たい」に変わっている。
「で、結局お前、何本包んだん?」
メイン社長はあっさり言う。
「前が40。今回が50。」
二人が同時に「は?」と言う。その反応に、メイン社長が少しだけ得意げになる。
「ほんまは55包むって言ったんや。でも、50でいいですって言われて。
しかも“その分、次の交通費で来てください”みたいな言い方してきたんよ。」
一人が机を叩いて笑う。
「うわ、やるなあ。」
「それ、もう“話題を切らさない技術”やん。」
「そうやねん。しかも、あの質問の投げ方。奨学金返済とか、就労不能とか。
“ついで”みたいな顔して、ちゃんと次の糸垂らしてんねん。」
もう一人が、半分呆れた顔で言う。
「なんなん、それ。お前、恋してんの?」
メイン社長は、そこで少し真顔になる。けど、すぐに首を振った。
「恋とかじゃない。ルックスは、まあまあや。悪くない。でも、やっぱ違うのは“引き出しの多さ”や。
六本木とか銀座には、あれはない。」
「そんな違うか。」
「違う。銀座は、もうない。六本木は一回だけ確認で行くかもしれんけど、たぶんない。
あの“なんか得した”“考え方が変わった”みたいなのは、向こうでは出えへん。」
一人がグラスを傾けながら言う。
「でも、お前がこの前40包んだことで、女の子二人へこんだんやろ?」
「たぶん、ちょっとはな。で、それを埋めるために、ヒロコが色々手回して、
“チームでやろう”みたいな方向に持っていってる感じや。
俺らが三人で行くって分かってるから、そこを整えようとしてる。」
「うわ、それもまた頭ええな。」
「そうやねん。俺一人だけ抜け駆けしてドハマりして終わり、じゃなくて、次の回を
“全体で面白くする”方に動いてる。」
二人とも、そこで少し黙った。ただのキャバ嬢の話をしてる温度じゃない。もはや“設計”の話や。
その沈黙を破るみたいに、一人が言う。
「……そんなん、俺らも一回いかなあかんな。」
もう一人も続く。
「っていうか、お前がドハマりしたところ、ちゃんと解説してほしい。“何がどう刺さったか”を。」
「あと奨学金返済のやつ。あれ、俺らも普通に興味ある。離職率なんて、うちも3年3割ぐらい
変わらんし。その辺のヒント、ちょっとでももらえるなら持って帰りたい。」
メイン社長は笑って、でも少しだけ釘を刺す。
「いや、それ、ただでもらって帰るのはありえへんで。」
「は?」
「多少は包んでやれよ。俺、正直、50でも安かったと思ってる。だって会社の数字まで
変わり始めてるんやで。」
二人が顔を見合わせる。冗談みたいに聞こえるのに、メイン社長が本気やから笑えない。
「そんなにか……。」
「そんなにや。」
金曜の東京の夜は、結局、ヒロコという女の話と、その周りで起きた“気づき”の
値段の話で終わっていった。
三人とも酔ってはいる。でも、ただ酔っ払ってるだけじゃない。次に何を見に行くか、
いくら積むか、どこまで本気で乗るか。そんな相談が、自然に始まりかけていた。
店を出る頃には、二人の置いてけぼり社長も、もう単なる嫉妬ではなくなっていた。
“次は自分たちも、その空気を見たい”そういう顔に変わっていた。




