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博子オフの土曜日。同伴のきっかけをまく。プライベートを淡々と重ねる。

土曜日の朝は、少しだけ肩の力が抜けていた。

昨夜の金曜日がうまく回った反動か、変に気持ちが高ぶることもなく、

ただ「今日はやることをやろう」と思えている。そういう朝は久しぶりだった。

起きてすぐ、清掃会社の社長に一通だけメッセージを送る。

――梅田駅の真ん中に、昼なら2,000円くらいで行ける半個室の焼肉があるんです。

今日じゃなくても、今日か明日の昼、もし空いてたらどうですか。無理せずで大丈夫です。

余計な言葉は足さない。同伴でもないし、夜の話でもない。ただ「選択肢」を置くだけ。

送信してから、スマホを伏せる。返事が来なくてもいいし、来たらそれはそれでいい。

最近、こういう距離感で連絡できるようになった自分に、少し驚く。

前なら「来てもらわな」「次につなげな」と、無意識に力が入っていたはずだ。

昼前から、証券外務員二種の勉強に入る。

テキストを広げ、過去問を解き、間違えたところに付箋を貼る。内容は、正直言えば、

ほとんど一度やったことのある話だ。生前の記憶が、ところどころで顔を出す。

「ああ、ここは引っかかりやすい」「この選択肢、言い回しがいやらしいな」

そんなことを考えながら、淡々とページをめくる。昼過ぎ、少し眠くなって、布団に倒れ込む。

15分だけ、と思っていた昼寝が、気づけば40分ほどになっていた。

それでも嫌な感じはしない。体がちゃんと休みを欲しがっているのがわかる。

最近、稼働日数が増えた分、こういう「何もしない時間」がないとバランスが崩れる気がしていた。

夕方、目を覚ましてからYouTubeを回す。特別なことはしていない。スマホを立てて、

ニュースを一つ選び、思ったことをそのまま話す。編集もしない。サムネも作らない。

20歳の雑談と、少しだけ社会の話。それだけだ。アップロードして、

チャンネルを開いた瞬間、登録者数が「100」を超えているのに気づく。一瞬、指が止まる。

「…あ、超えたんや」嬉しいかと聞かれたら、正直よくわからない。

方向性も、正解も、まだ見えていない。ただ、不思議と「間違ってない気がする」

という感覚だけはある。踊らない。煽らない。尖らない。それでも、少しずつ人が残っている。

その事実が、静かに効いてくる。夜になって、スマホが震える。清掃会社の社長からだ。

――明日、日曜の昼なら空いてるわ。画面を見て、ふっと笑ってしまう。

同伴じゃない。仕事の話でもない。だからこそ、連絡が軽い。重くない。

すぐに返信する。――ありがとうございます。じゃあ、明日お昼、軽く行きましょう。

無理ない感じで。送信して、深く息を吐く。出勤が増えれば、売上は上がるかもしれない。

でも、その分、どこかが崩れる不安も確実にある。体力なのか、気持ちなのか、

人との距離なのか。だからこそ、今は丁寧に動きたい。焦らない。煽らない。

積み上げる。土曜日の夜は静かに更けていく。

派手さはない。でも、確実に、何かが前に進んでいる。

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