木曜日、女性陣とお茶会兼チーム戦のミーティング。ルール運用と無理しないで戦う
木曜日。朝昼はゴロゴロして、博子はようやく身体の重さが抜けてきた頃に起き上がった。
「今日は“喋る日”やな。」
頭の中にある案件が、もう渋滞してる。
東京の“イキリ社長”の扱い。
東京三人組の次の波。
それと、税理士先生の座組――保険会社の人+顧問の弁護士先生の件。
スタバでやる話ちゃう。軽い雑談ならええけど、今日は線引きと段取りがいる。
博子はグランビアのラウンジを選んだ。背もたれがあって、声も落ち着く。二時間制。ちょうどいい。
昼過ぎ、グランビアのロビーでさきちゃん、アルカちゃんと合流する。
二人とも私服で、ちょっとだけ“店の顔”が抜けてる。そこがありがたい。
席について、コーヒーが来る前に博子は言った。
「ほな、肝心なとこから行くで。まず“イキリ社長”、あれどうする?」
さきちゃんが苦笑いする。
「もう名前だけで圧あるな。」
アルカちゃんも頷く。
「あの系統、熱量が急に跳ねるからな。」
博子は、指でテーブルを軽く叩きながら整理する。
「私は“個別で来る”のはゼロにしたくない。でも、際限なくなるとチームが崩れる。
だから、月の枠は決めたい。
“3対3で月1”は死守。個別は“月1まで”。これを私の基本ルールにする。」
さきちゃんが「それ言える?」って顔をする。
博子は「言い方や」と返す。
「“忙しいから調整したい”で通す。相手の機嫌を損ねる言い方はしない。
ただ、約束の形にして、私も守れる形にする。守れない約束が一番危ないから。」
アルカちゃんが、少しホッとしたように息を吐く。
「それ、めっちゃ助かる。曖昧やと、こっちも構え続けるから。」
次に博子は、東京三人組の話に移す。
「で、次。“東京三人組”。あれはメイン社長と他の二人の温度差がすごい。
だから、店の中で前半は別々、最後に合流してなんでメイン社長が私に
はまったのかの解説で2セット、コンサル枠で使いたい。」
サキちゃんが首を傾げる。
「コンサル枠?」
「うん。前半はそれぞれで走って、後半で合流して“気づき”を共有する。
ここは“別料金でもらう”って建て付けも作れる。
女の子二人が“置いてけぼり”にならんように、こっちで温度を整える。」
アルカちゃんが「なるほど」と頷く。
「3人組の中で“メイン社長だけが熱を上げてる博子ちゃんだけの神回時間”を共有するってことやな。」
「そう。神回は必要やけど、神回だけ続くと壊れる。」
そこで話題を切り替える。
「で、三つ目。税理士先生の座組。」
さきちゃんが少し前のめりになる。
「結局、私も入れてもらえるようにしてくれて、ありがとうな。」
博子は軽く手を振る。
「そこは当たり前。“キャバキャバ好き”って聞いたら、
さきちゃん相性あるやろって思っただけ。」
アルカちゃんも横で頷く。
「さきちゃんは“入口”作るの上手いしな。」
博子は、今日の段取りを口に出して確認する。
「来週以降の金曜で、伏見の酒蔵コース。昼から動く。
サンダーバードで京都入って、伏見へ。酒蔵は“蒼空の蔵”が刺さるならそこ。
もう少し観光寄せるなら寺田屋を軽く挟む。
時間が残るなら“黄桜”の方も選択肢。無理に詰めない。あくまで入門編。」
さきちゃんが「昼から動くってことは…」と言いかける。
博子はそこで、先に釘を刺す。
「同伴とは別に、ちゃんと“お手当”もらう形にする。ツアーコンダクターやから。
金額はまだ詰めてないけど、“無料奉仕”にはしない。ここは線引き。」
さきちゃんが深く頷く。
「それ、ほんま大事。ありがとう。」
そして博子は、もう一つ大事なポイントを出す。
「あと、弁護士先生が初対面で“喋るのしんどい”ってなる可能性あるやろ。
その場合、最初のサンダーバードで“4人席”作るのもアリやと思う。」
さきちゃんが即答する。「それ、めちゃ助かる。
最初の30分で打ち解けたら、伏見入ってからの空気が全然違う。」
「やろ。税理士先生と弁護士先生、保険会社の人、サキちゃん。
まず“同じ車両で同じ空気”を共有させる。
それだけで、酒蔵での時間が“接待”じゃなくて“遠足”になる。」
アルカちゃんが笑う。「遠足って言葉、ほんま便利やな。」
博子も笑う。
「便利やで。みんな肩の力抜けるから。」
コーヒーが空になりかけた頃、二時間の終わりが見えてきた。
博子は最後に、二人へ釘を刺すようで、でも柔らかく言う。
「私ら、今たまたま“当たり”引いてる。でも当たりは、雑に扱ったらすぐ外れる。
せやから、来週以降の金曜、伏見は“練習試合”にしよ。軽く、丁寧に。で、次に繋げる。」
さきちゃんが「了解」と言って、アルカちゃんも「やろう」と頷いた。
グランビアのラウンジを出る時、博子は少しだけ肩が軽くなっているのを感じた。
土日の本番がまた来る。
でも、こうやって“二人と同じ方向を向ける時間”があるだけで、踏ん張りが効く。
「ほな、よろしくな。」
三人は、駅の人波に溶ける前に、軽く手を振って別れた。




