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税理士先生と話が盛り上がる。入口は山崎のウイスキー工場見学か伏見の酒蔵見学を全員でいくところから

「先生。」博子は、グラスの氷を指でくるっと回してから、少しだけ声のトーンを落とした。

今の席は、勢いで広げると危ない。だから“入門編”を噛ませる。

「二人以外に呼ぶなら、いきなり鉄板ぶち込むより、入口は分かりやすい方がええと思うんです。」

税理士先生が目を細める。

「ほう。入口な。どれや。」

博子は指を二本立てた。

「山崎のウイスキー工場見学。もう一個が、伏見の酒蔵ツアー。」

保険会社の男が「え、工場見学?」って反応する。税理士先生は笑って、すぐ乗る。

「ええやん。めっちゃ分かりやすい。で、誰で行くねん?」

「昼過ぎか夕方。私とアルカちゃん、あと仲良しのさきちゃんも加えて、

まずは“感触を見る会”にする。」

さきちゃんの名前を出した瞬間、博子はわざと肩の力を抜いた。

チーム戦や、っていう建前を先に置く。これが後で効く。

「いきなり同伴別々で戦うより、まずは一回、三人の空気をお客さんに見せて、

向こうの反応を見たいんです。で、感触よければ次から――同伴は別々。

店で合流して反省会。ここまでセット。」

税理士先生が「なるほどなあ」と、やけに気持ちよさそうに頷く。

「座組の入口を工場見学と酒蔵にする。そこから同伴別々にして、店で反省会。

めっちゃ筋が通ってるやん。」

博子は笑いながらも、そこで一拍置いた。大事なところは、軽く言わずに、さらっと刺す。

「ただ、昼過ぎから動くんで――同伴以外にも、お手当は欲しいです。」

保険会社の男が「出た」と笑う。税理士先生は逆に、嬉しそうにニヤッとした。

「いや、それは当たり前や。時間も体力も使うやろ。移動もあるし。」

博子は少しだけ安心して続ける。

「山崎やったら“工場の体験”が分かりやすい。伏見なら“酒のストーリー”が分かりやすい。

どっちも、東京の人が好きな“知識の入口”があるんです。でも、そこで終わらせない。

最後は、店に戻って反省会で“気づき”に落とす。」

税理士先生が笑う。

「お前、ほんまに設計屋やな。」

博子も笑って返す。

「最悪、私がツアーコンダクターになります。」

その言い方が、冗談みたいで冗談じゃない。税理士先生はもう完全に乗ってる。

「ええやん。それ、保険会社のこいつも絶対好きや。工場見学とか酒蔵って、

“ちゃんと遊んだ感”があるからな。インスタ映えより、話のネタになる。」

保険会社の男も頷く。

「確かに。俺、そういうの行ったことないっすわ。」

博子はそこを逃さない。

「だから入門編なんです。いきなり“外側の京都”とか“余白”とか言うても、

ピンとこない人もいる。でも、工場見学と酒蔵は、誰でも楽しめる。

その上で、反省会で“差”が出る。そこで、次どうするか決めたらいい。」

税理士先生が、もう決裁出すみたいな顔で言う。

「ほな、まずは伏見にしよか。酒好きやろ?こいつ。」

保険会社の男が「好きです」と即答する。博子は笑って、最後に釘を刺す。

「じゃあ、日程は私が調整します。ただ、ひとつだけ。

“ツアーだから安い”って話にはしないでくださいね。安いんじゃなくて、設計してるんです。

そこ、間違えたら次が続かないんで。」

税理士先生が、グラスを上げた。

「よし。博子、ツアーコンダクター就任や。…ほな、乾杯やな。」

博子もグラスを上げる。

「乾杯です。入口は軽く。中身は重く。でも、楽しく。」

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