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水曜日。おじいちゃんお見送り後のフリー卓でアルカちゃん、さきちゃんと諸々作戦会議

おじいちゃんを見送って、店の外に出た瞬間にふっと力が抜けた。

さっきまで焼肉の煙と、あの人の「線引き」の言葉が頭の中に残ってる。

ありがたい。ほんまに。そのまま店に戻って、フリーの卓に座って、氷の音を聞きながら

一回呼吸を整える。けど、落ち着いた瞬間に次の段取りが浮かんでくる。――止まらへん。

少しして、店の奥の“古い卓”に戻る。アルカちゃんとさきちゃんがいて、顔を見た瞬間に、

博子はちょっとだけ肩の力を抜いた。

「おつかれ。ちょっとだけええ?」

二人が「どうしたん?」って顔する。

博子は椅子に腰を落として、まず短く言った。

「今週末、東京の“イキリ社長”来るやろ。三人で。」

アルカちゃんがすぐ反応する。

「来る来る。早すぎんねん、あいつ。」

さきちゃんも頷く。

「なんか“最強見せろ”のやつやろ。あれ、きっついな。」

博子は笑ったけど、笑い切れん部分もある。

「せやねん。だから明日、打ち合わせしたい。ここでちょろっとでもええけど、

できれば夕方、軽くお茶して方向性決めたい。」

アルカちゃんが手を上げる。

「明日、私いけるで。さきちゃんは?」

さきちゃんも「入ってへん。大丈夫」と返す。

博子はそれだけでちょっと救われる。

「ありがとう。ほんでな、もう一個。メイン社長、今の感じやと……多分、次の週も来る。」

二人が顔を見合わせる。アルカちゃんが苦笑いする。

「うわ、来そう。あの人、刺さり方が異常やもんな。」

博子は頷いた。

「そう。で、その“熱”が続くのは嬉しい。けど、チーム戦のバランス崩れたら終わる。

だから、線引き作りたいと思ってる。」

サキちゃんが真剣になる。

「線引きって、具体的に?」

博子は指で二本立てた。

「まず、月に一回は“三人で来る”。これはちゃんと守る。

で、個別で来るのは……月一回まで。それ以上は、私が体持たんし、二人の顔もある。」

アルカちゃんが「なるほどな」と息を吐く。

「“三人で来る”を固定にして、個別は特別枠、って感じやな。」

「そう。建前としても綺麗やろ。“チームの座組が基本で、個別はオプション”って形。」

サキちゃんが言う。

「でもメイン社長、納得するかな?あの人、ほんまに“博子に会いたい”になってるやん。」

博子はそこで一瞬だけ迷って、でも正直に言った。

「納得させるっていうより、“仕組み”で落とす。

月一で三人、個別月一。それを先に決めてしまう。“店としての枠”って言い方にしてもええし。」

アルカちゃんが笑う。

「おじいちゃんの言うてた“味方を立てる”ってやつやな。」

博子も笑う。

「せや。で、もう一個考えてるんが――もしメイン社長以外の二人が

乗り気じゃなかった時の対策。」

さきちゃんが「それやねん」と頷く。

「たぶん、二人は“旅行の延長”ぐらいやろ。メインだけ刺さりすぎて、温度差出るパターン。」

博子は「そう」と言って、言葉を続けた。

「その場合、私が“なんでメインがこんな乗り気か”を説明する時間を作る。

でも、説明だけやと偉そうになるし、二人も面白くない。だから、前半二時間はアルカちゃんと

さきちゃんに任せる。ちゃんとそれぞれの良さで、普通に楽しく遊んでもらう。」

アルカちゃんが目を丸くする。

「前半を任せるって、ほんまに?」

「うん。“最初の二時間は二人が回す”って決めたら、二人も立つし、社長側も納得しやすい。

ほんで後半二時間で、私が合流して“座組の解説”をする。」

サキちゃんが「解説って、どんな?」と聞く。博子は少しだけ間を取って、慎重に言った。

「鉄板コースの話をする。で“観光地の外側”をどう使うかとか、

“東京のヒエラルキーの外にずらす”とか、そういう“考え方の型”を、事例ベースで話す。」

アルカちゃんがうなずく。

「それなら、メイン社長以外も“体験”として面白いな。ただの説教ちゃうし。」

博子はここで一歩踏み込んだ。

「で、それを“別料金”で建前作ろうかなと思ってる。銀座でワンセット十万払う人らやろ。

なら“後半の二時間は座組のセッション”って言い方にして、別で包んでもらう。」

さきちゃんが少し笑う。

「博子ちゃん、ほんま“商売”になってきたな。」

博子も苦笑いする。

「商売や。でも商売っていうより“バランス守る仕組み”。私が全部背負う形にすると、

二人がしんどいし、私も潰れる。“前半二時間は二人の時間”ってルールがあるだけで、

空気が変わるはずやねん。」

アルカちゃんが「たしかに」と言う。

「それに、二人の社長も“まず二人を楽しむ”って流れやったら、メインが抜けがけしても

変な嫉妬になりにくいかもな。」

博子は頷いた。

「そう。“メインだけ特別扱い”に見えたら、全員気持ち悪くなる。だから“みんなの満足度を

上げるための仕組み”として見せたい。」

さきちゃんが少し真面目に言う。

「明日、お茶でそれ詰めよ。あと、私らが前半回すなら、どんなトーンで行くかも決めたい。」

「それそれ。明日、夕方。お茶して、方向性決めて、言い方まで作ろ。」

アルカちゃんが笑って手を叩いた。

「よし。作戦会議やな。」

博子は小さく息を吐いた。

まだ怖さはある。でも、今は一人やない。

“チームで勝つ”って、こういうことかもしれん。

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